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teamBDR
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男性
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高校生
自己紹介:
このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
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[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!

[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。

[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。 

[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!

[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。

[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
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第8話『スタンドも、魔法も、あるんだよ』


作者 luke

 
 ボゴォォォォン‼
 得体の知れない音に、上条当麻は耳を疑った。
 ブチャラティとミスタ。二人に置いてけぼりにされた彼だったが、もうすぐ目的の学生寮の自室に着くところだ。距離はさほどだが、体感的にはとても長く感じた道のりだった。
 しかしその『もうすぐ』というところで、上条は足を止めた。
(なんだ……、今の音は……?)
 詳しい事はわからないが、イメージでは何かが爆発したような感覚。それも自分の学生寮のあたりからだ。
 とりあえず、良い気はしない。付け加えると、マズイ気がする。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
 全力ダッシュ。今彼に出来る事は一刻も早く目的地に着くことだった。
 
 
 
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
 上条当麻の部屋の前では、そんな効果音が似合う空気に包まれていた。
 睨み合い、動かない二人。おかっぱ頭と赤髪の両者は已然固まったままである。
「「………………」」
 二人は攻撃を仕掛けるタイミングをはかっているのだ。さっきのこともあるせいか、互いに慎重である。だが。
 その重たい空気も赤毛の男の言葉によって打ち破られる。
「そろそろ疲れてこないかい?」
「なに?」
「いやね、こうやって長いこと見合っても疲れてくるだけじゃあないか。だからいい加減この状態を保つのをやめよう、って提案さ」
「降参してくれるのか?」
「それは無いね。僕は一切引き下がるつもりはない」
「じゃあどうすると?」
 そこで、赤毛の男は右手を突き出した。彼は手で、招くようにクイっと動かせて、
「こい」
 クイックイッ、とさらに動かせて、
「さっさっと攻めてくるんだな。これ以上の沈黙はもうごめんだ」
 彼の声にはうんざりしたものが感じられた。おそらく、これは彼の切実な気持ちなのだろう。
 おかっぱの男は無言で、それも相手の言葉を噛みしめるかのような表情で聞いていた。
 だがしかし。
「断る」
 おかっぱの男は真剣味のある声で、
「俺は基本的にスポーツではディフェンス時、チェスでは後攻のほうが好きだ」
 彼はトーンを変えず、
「あと、セックスでは『受け』のほうが好きだな」
 彼にふざけているような様子は見られない。
 そして。
はっきりした口調で、言う。
「だから俺からは攻撃しない。俺は『受け』だ。お前からこい」
 困惑。
 赤毛の男はもちろんのことだが、おかっぱの仲間である帽子の男や二人とは無関係な白い修道服の女の子も気まずそうな表情を浮かべている。何だコイツ? とみんながそう思った。
 たしかに、彼はふざけていたわけでは無さそうだ。彼は真顔である。だが内容とかタイミングとかいうものがあるだろう。これならふざけて言ってくれたほうがましだった。
 緊張感が包むピリピリした空気も、いつのまにかばつの悪い、やや滑稽な空気になってしまっていた。
「…………」
 赤毛の男も当然、引きつった顔だ。どこか無性に痒(かゆ)そうである。
 が。
その表情もすぐに元に戻る。
「わかった。オーケーだよ。僕は『攻め』だね?」
 彼は右腕をちょうど真横に突き出して、
 
 
「良い声で鳴かせてやるッ‼」
 
 

 瞬間、彼の手の中に剣の形を模した炎が現れる。
 ゴウッ、とそれは一度大きく膨らみ、また程良い大きさになる。
「いくぞ……!」
 言葉と同時。赤毛の男は力強く踏み込んだ。
「!」
決して速い速度では無いが、この近距離ではほとんど関係ない。勝負はすぐに決まってしまう。
 おかっぱの男もすぐに身構える。彼の表情はいたって冷静だ。赤毛の接近に合わせて、少しばかり後ろに跳んだ。
 炎剣が風にまかれ、火の粉が舞う。完全に形が固定されず、わずかに変化する剣身はまるで生きているかのようだった。
「ハアァッ!」
 勢いよく炎剣が横に薙がれる。荒々しい音とともに、赤い光が空(くう)を裂かれていく。
 赤毛の動きはさほど速くは無い。が、問題なのは彼の得物だ。まず通常の個体では無い。さらに見た目通り『火力』もありそうだ。めらめらと燃え盛る刀身が妙に威圧的である。
 ガードは不可能。おかっぱの男はそう判断した。
 ごおぉッ! と。赤く輝く剣が眼前に迫る。
(――ッ! こいつが剣を振り切る動きを捉え、回避するッ!)
 この場合避ける方法は『下がる』より『伏せる』が正解だ、とおかっぱの男は考える。なんせ相手の攻撃手段は魔術などという常識から外れたものであるし、武器である剣も炎を使って作られたものだ。
 おかっぱの男はすでに見ている。炎剣の形状。風になびいて微妙に形を変えている。それもそのはず、炎は決まった形をもたない。ということは、
(自由に形を変えられる。つまり、リーチも自由自在――か?)
 あくまで推測。だが用心に越したことは無い。また推測が違っていたとしても後方に下がれば相手はそこからラッシュを繰り出してくるだろう。なんせガードの利かない高威力の炎剣。そんなものに攻め込まれれば確実に不利になってしまう。
 思い切り、赤毛の男は右腕を振り切る。
同時に、そこでおかっぱの男はしゃがんだ。
ぎらぎらと輝く炎の剣が彼の頭上を行き、空振った勢いで風に乗った熱が彼の頬を撫でた。さすがに、これには威力は無い。
 赤毛の男が完全に腕を振り切った。と、そこで彼は無防備となった。勢いをつけた攻撃ほど、威力がある代わりにそれを外したときのリスクが大きい。そこには確実にスキが生じる。
 おかっぱの男は、その瞬間を逃さない。
「ベネ(良し)」
 しゃがんだ状態で地面に両手をつき、陸上競技のクラウチングスタートのような姿勢から一気に飛び出す。狙うのはガラ空きになった相手の胴だ。
(ボディブローでもタックルでもなんでも良い。とりあえず、一撃喰らわせるッ!)
 赤毛の男は迫るカウンターを防御することも回避することもできない。
 決まった、と。彼らの戦いを見ている帽子の男と修道服の少女も、そう確信した。
 だが。
 赤毛の男に接近したおかっぱの男だけが、見た。
 口の端をわずかに上げる、赤毛の顔を。
 直後、彼の右手にある炎剣が大きく膨らんで、まばゆい光を発した。――瞬間、
 
 
ボォンッ! と。
 その場の二人を包むほどの、爆発が起きた。
 
 
「お、おい……」
 マジかよ、と帽子の男は口の中で呟く。二人を包むほど、といっても決して生ぬるいものではない。炎は赤々とキメ細かく燃え、爆発時の衝撃を伝える風もかなりのものだった。
 彼は戦慄する。
(もしかしたら……、ちっとまずいかもな……)
 おかっぱの男は確かに赤毛の男の懐付近にまで潜り込んでいた。無理だ。避けられない。一点集中型の攻撃ならかわす事ができただろうが、爆撃という範囲攻撃では回避は不可能だ。ガードはできる。しかし、あのゼロ距離では効果はほぼ無い。
「思惑通りだよ」
 煙の中から声がする。赤毛のものだ。
「最初――タバコから火を吹かせたとき、彼は瞬時に足元の消火器を蹴り飛ばす並はずれた運動能力を見せた。それでもう彼が接近戦タイプだというのがわかったよ。生憎、僕は近接戦があまり得意ではないんでね。」
 パチンと乾いた指の鳴らす音。
「だから誘ったんだ。彼のカウンターを」
 風が吹き、煙が晴れていく。
 そこにいるのは身長二メートルほどの長身の男、赤毛。それとおかっぱの男――
 ――はいない。
「なッ……⁉」
 赤毛の男、驚愕。焦燥。衝撃。
 いない。おかっぱの男。どこにもいない。
(馬鹿な……。この程度の炎で塵になどなることはない……)
 赤毛が放った炎剣の爆発。派手なため一見威力の高そうな技に見えるが、そうではない。どちらかというと、爆発時の音を相手の耳に叩き込むことでショックを起こさせる、気絶を狙った技なのだ。
 だが、そんな技にもかかわらず、おかっぱの男の姿は無い。赤毛の思考の通り、相手を黒焦げにして散り散りする威力は無い。
(となると……――!)
 そのとき、赤毛は不意に風を感じた。肌に柔らかく当たる、気持ちの良い風だ。まるで考える彼の思考を邪魔するかのような心地よい風。戦闘中だということを忘れさせるような、清々しい風。
 しかし妙だ。おかしい。おかしすぎる。――何故なら。
 その風は、彼の頭上から吹いているからだ。
「危ないっ! 避けて!」
 突然の白い少女の声。状況を確認している暇などない。すかさず赤毛の男は身をよじり、振り向く。と。
 グォォン! と。一つの拳が勢いよく彼の眼前を横切り、空を突いた。その腕の軌道は、さっきまでの自分の位置を確実に捉えている。
「くっ!」
 赤毛は急いで天井――おそらく、腕が出ているであろう場所を見た。
 そして、その光景に彼は眉を顰めた。
(なん……だと)
 赤毛が見たのはまぎれもなく、この階層の天井だ。だが、あろうことかそれは得体の知れないジッパーで切開され、上の階層の床との間に空間をつくり出している。よって本来人間が入り込める余裕なんて無いはずの階層の間に新たなスペースが生まれ、そこに人がいる。
 ただし、一人では無い。
 そこには二人。姿が確認できた。
「ちっ……!」
 一人が忌々しげな声を上げた。
 おかっぱの男だ。どのタイミングで、どのような能力を使ったのかは不明だが、たしかにこの『ジッパーの空間』にいる。
 だがもう一人の者は、赤毛は見ていない。
 そう。こんなヤツ、さっきまでいなかった。
 もう一人の人間は――いや、まだ人間とは言い切れない。たしかに、顔があり四肢がありと人間の形をしているが、あまりにも奇妙だ。青と白をベースとした色の体に体中のいたる所にジッパーがついている。こういうスーツでも着ているのだろうか? まるでアメコミのヒーローである。
 赤毛の男は口の中で呟く。
(……、速いな)
陽の光の加減で、この者の手の甲についたジッパーがキラリと光った。赤毛への攻撃が飛んできた際、彼は迫って来たその手の甲にジッパーがついているのを確かに見た。すなわち、赤毛に向かって飛んできた拳はこの者の拳だ。
「『勘』のイイヤツだ……」おかっぱの男は少々驚いた様子で、「ジッパーから吹きこんで来る風の動きに感づいたか……」
 彼は同時に感心した様子でもあった。さっきまでと声のトーンが微妙に違う。
 だがッ!
 おかっぱがそう言うと同時。彼の隣の奇抜な者が、もう一方の別の腕で赤毛に殴りかかった。
(まずいッ!)
 赤毛はとっさに、この瞬間足にかけられる力を振り絞って後ろに跳んだ。この奇抜な者のスピードを知った上での判断である。コイツは速いッ!
 ビュンッ! と拳が空を切る音と共に赤毛は地面に着地した。直撃は免れた。しかし若干遅かった。相手の拳が己の肘をわずかにかすめ、弱くもはっきりとした痛みが残った。
(……、今僕の肘にはもしや、ジッパーが……?)
 彼には気になる事だったが、見ている余裕は無い。来るべき追撃に備えるべく、全身の意識をおかっぱの方にへと向かわせる。
「思惑通りだな」
 おかっぱの男は隣の奇抜な者と同時に、天井の空間から降りた。
「最初――俺とお前が話していたとき、お前はタバコを使って攻撃を仕掛けてきた。それでもうお前が接近戦タイプでは無いというのがわかったよ。接近戦が自慢なら、この距離だったらすぐさま飛び込んでくるはずだからな」
 パチンと乾いた指の鳴らす音。
「だから狙ったんだ。お前がカウンターを潰そうとする瞬間を」
 直後、天井のジッパーが音も無く消えた。
「第一、お前のような中~遠距離型のヤツがいきなり真正面から向かってくるはずがないだろう。普通はさっきのタバコのような牽制をしてから、決め手の一撃を浴びせるのが定石ってもんだぜ」
 彼は続けて言う。
「俺がそんな知識も無いと思っていたか? もっとも、お前自身が知らなかったのなら話は別だが」
「……、なら良いだろう」
瞬間。
二人は同時に身構えた。赤毛の両手には親指以外の指の間にタバコが挟まっていて――つまり計六本が装填されている。対するおかっぱは腰を低くし、どんな動きにも対応しうる姿勢をつくっている。
「そんなに知りたいのなら教えてやろうッ! この僕がどれほど戦闘を経験し、そしていかに君が無力かということをッ‼」
「悪いがお前には負ける気はしないな。お前がどれほど力を持っているかは知らんが、なんだか簡単に倒せそうな気がするよ」
「試してみるといい」
「そのつもりだ」
 まさに、一瞬即発。彼らのやりとりを見聞きしている二人にも緊張が走る。
 そして。
 不安。白い修道服の少女は。
 おそらく、これから二人は先程以上の激しい戦闘をするだろう。となると、どちらかがタダでは済まなくなる可能性がある。
 彼らは已然、睨み合ったまま動かない。彼女はさっきにも似たような光景を見たが、明らかに感じが違う。
「ひっ……」
 ゾクリ、と。少女は向けられてもいないはずの殺気を感じた。これ以上この空気に触れていると息が詰まりそうだ。
「止めるなら今がチャンスかも。これ以上はもう……!」
 少女はめいっぱい息を吸う。
そして、腹に力を入れた瞬間、
 コツン、と一つ。靴が床を鳴らす音がした。
(……?)
 音に反応して、彼女はそこに目を向けた。直後。
「お前ら何やってんだッ‼」
 怒号。それは階層のエレベーターの方からだった。
「「!」」
 声に、見合った二人は緊張を解き、声のした方を向いた。彼らよりも少し遅れて、帽子の男が二人の視線を追った。
 それは突然やって来た。まるで、張り詰めた今のタイミングに合わせるかのように。まるで、身の毛のよだつようなこの空気を終わらせるかのように。
 現れたのは一人の少年だった。
 あまり大した特徴の無い一人の少年。ツンツンの黒い髪にごく普通の詰襟の制服。変わった持ち物や装飾品などは一切無い。どこにでもいる学生だ。
 しかし。
その彼の声には人の心に何か確かな気持ちを作り出す、力があった。
少年の名前。それは。
「上条当麻……か」
 赤毛の男が、小さく笑った。と、同時にふわりと柔らかい風が吹いた。
 風は告げていた。空気は変わった、と。
 
 
「えっと。改めてこの娘がインデックスです」
「おっほん。私がインデックスだよ」
 上条当麻に紹介されて、白い修道服の少女は腕を組んだ。表情はいかにも、ドヤッ、といったものである。
初めて本物の『禁書目録』を見て、おかっぱと帽子の男の二人は『ほぉー』と関心を示していた。二人は彼女の全身をまじまじと見て、
「……ロリだな」
「あぁ、そしてこいつはロリコンだな」
「おいそこ、うるさいぞ」
「……貧乳だな」
「あぁ、そしてこいつはそこに魅かれてる」
「おいそこ、うるさいぞ」
「ほんとほんと。私だってちゃんとAカップあるもん」
「いや、インデックスさん。それは世間では貧乳と……ってぎやぁぁぁぁぁ」
 がぶり、とインデックスは上条の頭に噛みついた。甘噛み程度のものではない。もっと本気の、出血するレベルの喰らいつきようだ。そんな少女の目は獰猛にギラリと光っている。
「……うん」
 とりあえず、おかっぱの男は横で悲鳴を上げる少年を放置して今回の事件と禁書目録、二つの関連性を自分なりにまとめることにした。レストランに襲撃してきたのはスタンド使いなのか? 狙いは本当に禁書目録なのか? そして赤毛の男との対峙中に現れた大阪弁の男は誰だ?
 と、そんな事を考えていると、
「ちょっといいかい?」赤毛の男が声をかけてきた。
「なにかな?」
「さっき来た、あの大阪弁の男は誰だい?」
「知らんな。おい」
 言って、おかっぱの男は隣の相方を肘で小突いた。
「ん? いや俺も知らんが」
「そうか。何者なんだ彼は……?」
 たしかに、とおかっぱも思う。単純な疑問としてもそうだが、わざわざ現れたということは、もしかすれば今回の事件に深く関わっているのかもしれない。レストランを襲撃したスタンド使いという可能性もありうる。
(調べてみる価値は……あるかもしれないな。良い情報が得られれば望ましいんだが)
 一応彼の中で、その男の調査も彼のやるべき事の一つに加わった。
 と、そんな時。インデックスの攻撃から復帰した上条が赤毛とおかっぱの二人に近づいた。
 上条は言う。
「そういえば、お前らなんで戦ってたんだ? それも俺ん家の前で」
 彼の声には怒りの色が含まれている。が、それほど怒っている様子もない。どちらかと言うと、呆れている感じだ。
 彼は続けて、
「つーか、お前ら。まず一体なんでそんなことした? どっちかがケンカふっかけてきたのか?」
「「……コイツが」」
 赤毛とおかっぱは互いに指をさす。同時だった。
「…………あぁ」
 少年の力無い声。そして、もうなんか呆れ切ったような声。無理もない。彼には大体の予想がついた。
「つーかよぉ」と、そこで帽子の男が、「だいたい、お前来るのが遅せぇんだよ。もっと早く来りゃあ戦闘なんて無く収集がついたのに。このうんこマンが」
「う、うんこマン⁉」
「そうだ。のうのうと野糞なんかしやがって」
「ちょ、ちょっと待て!」上条はうろたえながらもはっきりした声で、「野糞なんかしてねーよ! たしかにうんこはしたけど。でも、ちゃんとトイレに行ったの見ただろうがッ!」
 彼は必至だ。と、そこに赤毛が、
「『野糞』って何だい? 悪いがその単語は知らなくてね」
「ああ、簡単に英語で言うと――」
 おかっぱの男は宙に『defecation outside』と書いていく。
「ぶっ……。まじかよ……」
「いや、だから本当にしてねぇから!」
 上条の弁解は空しく、赤毛の男は腹を抱えて笑っている。俺ってそんなに信用無かったのか、と少年はがっくり肩を落とした。
「……そういやよぉ」
不意に、帽子の男がつぶやいた。さきほどまでの陽気なトーンとは違う、少し真剣な声だった。
「おい、赤毛。名前は? 俺の名前はグイード・ミスタ。歳は一八だ」
「自己紹介どうも。ステイルだよ。ステイル・マグヌス。歳は一四だから君より年下だね。おたくは?」
 彼はおかっぱの男に目を向ける。
「ブローノ・ブチャラティ。二〇歳だ。おそらくこの中じゃあ一番年上だな」
 よろしく、と三人は握手を酌み交わした。続けてミスタは言う。
「グラッツェ、ステイル。ところで、あの娘(インデックス)以外にもお前の連れはいるのか?」
「いや、いないよ。彼女のみだ」
「そうか」
 彼はそう言って、ステイルへと一歩近づき、
 
 
「ならお前にはもう用無しだな」
 
 
 スチャッ、と。懐からリボルバー式の銃を取り出し、それをステイルの方へと向けた。
「な……」
 目の前の光景に唖然とする赤毛の神父。が、彼はわけがわからなくなって硬直しそうな己の頭を回転させて、
「ちょっと待ってくれッ! じゃあ今の自己紹介には何の意味があったんだ⁉」
「自己紹介は自己紹介だよ。自分の事を相手にわかってもらうための挨拶だ」
 ぎっ、とステイルは奥歯を噛んだ。前方の上条達もこの事態に気付いているのだが、ブチャラティに制止されている。
「卑怯だとは思わないのか? 相手を安心させておいて、いきなり攻撃を仕掛けるなんて」
「安心した安心しないは本人の気持ち次第だろ? 第一、相手は敵なんだから卑怯もクソもありゃあしないと思うがね」
「ちぃ……」
 この状況、自分には反撃する術は無いとステイルは自分自身で理解していた。それなりの魔術を使うのなら、ある程度の準備が必要だし、タバコのような即席かつ簡素な攻撃でも今の状態なら相手のほうが速い。そして最終手段の上条も封じられている。
 為す術無し。まさに絶体絶命。
「さ、そろそろ頃合いだな。準備は良いか?」
「あぁ……」
「ちょっとやかましいから気ィつけろよ」
 ステイルは目を閉じ、深く息を吸う。こんな状況にもかかわらず、彼の心はとても穏便だった。自分でも気味が悪いくらいの落ち着きぶりである。
(無念……だな)
 彼がそう心に思った……瞬間、
 
 
ガアァァンッ! と独特の乾いた炸裂音が辺りに響いた。
 
 
続いて二発三発と同じ音が鳴る。ミスタの忠告通り耳が痛いが、今はそんなところではない。
 冷たい感覚。まるでなにも無かったかのように静まった気。だがそれも後に、噂に聞く、焼けるような痛みに変わり、苦しみ、悶えることになるのだろう。もしくは、この妙に落ち着いた感覚のまま死を迎えるのであろう。
 スーッ、と。血の気の引いた肉体に、熱が戻ってくる。そして、撃たれた個所が徐々に疼きだして――
 ――疼きは無い。
「!」
 そして、痛みも無い。

(なん……だと)
 ステイルは目を見開いた。そして、己の体を見る。
(撃たれて……ない)
 そう。彼の体は何も問題は無い。出血はおろか、衣服にも傷一つ見当たらない。
 一体これはどういうことだ? 何があった?
「よし、着弾したな」
 満足気にミスタは言った。しかし、ステイルには彼が何に対して言ったことなのか、また彼が何をしたのかもわからない。
 赤毛の神父は問う。
「君、一体何をしたんだ?」
「え? 何って、発砲したんだが」
「発砲?」ステイルは訝しげに眉を寄せて「何を撃ったっていうんだ? ここには僕ら以外誰もいないはずだ」
「いや、それがいたんだよ」
「なんだって? 一体どこに?」
「あそこに」
 言ってミスタはステイルの立つ位置の奥――つまり、階層の端を指さした。ステイル、そしてブチャラティもそこを注視する。
 しかしながら。
「……景色しか見えないが」
「いいや、たしかに敵はいたぜ。なんせ、手応えがあったからな」
 ……手応え?
赤毛の男はその言葉にひっかかった。と、ブチャラティも自信気に、
「まぁ、ミスタがこう言うんだから問題ないだろう」
「……、ちょっと待ってくれないか」
「どうしたんだよ?」
 ミスタの返事に、ステイルは一つ息を呑んで、「今、君は『手応えがあった』と言ったね?」
「ああ、確かに」
「君は敵に弾丸が着弾する瞬間を見たのかい?」
「いや、見てないが」
「じゃあ、どうして『手応えがあった』なんてことが言えるんだい? 自分の手足を当てたのならともかく、君は銃弾を――」
「わかるさ」
 はっきりと、ミスタは言いきった。
 まるで、その弾は自分の手足だ、と言わんばかりに。
「とりあえず、今は逃げた敵を追うのが先だな。そういや、お前も来るのか?」
「いいや、僕には少し事情があってインデックスとある場所まで行かなくちゃあならない。あと、そこに寝転がってるソイツとも」
 ステイルは、さっきブチャラティにあて身をくらって倒れた上条と、それを不安そうに見つめるインデックスへ目線を向ける。
「なるほどな」ブチャラティは納得した様子。「だが、それは危険だ。なんせ今の敵はそのインデックスを狙ってやって来たんだからな」
「それは本当かい?」
「ああ、おそらく。奇襲でも喰らったらたまったもんじゃあないからな。なるべく慎重に事を起こした方が良い」
「そうか……」
 この学生寮に来た敵。それはブチャラティとミスタ、両者の敵なのだという。
 そして敵はインデックスを狙っている。場合によってはもしかすれば、彼女に危険が及ぶかもしれない。
(そんなことは……させるか!)
 ステイルには遠い昔から誓った、確固たる意志がある。
 インデックスを、彼女を守る。
「……行こう」
「んぁ?」
 聞き返したミスタに、ステイルは強い口調で、
「僕も君達と共に行こう。君たちの力になりたい」


TO BE CONTINUED


次回予告
美琴「レストランから逃げた奴、一体何者なのかしら?」
幽助「それがわかんねぇから追っかけてるんだろうが」
翔太郎「待てェ! ドーパントォッ!」
謎の美少年「頼みたいことがあるんだ、ちょっと」
幽助「誰なんだ? この人たち」
次回の学園都市の日常・魔術サイドは第9話。お楽しみに!

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7・8話 あとがき
by luke 2012/01/23(Mon)19:47:42 Edit
ご無沙汰しておりました。lukeです。約一年ぶりに魔術サイドを投稿することができました。遅くなってもうしわけありません。

さてさて今回の話ですが、もともとは7・8話は一つの話で、二つまとめて7話にする予定でした。しかしながら、記事投稿の容量の都合で、こうして分割して投稿することになったのです。んふぅ…。これなら、7話のところまで書けた時点で投稿すれば良かった…。

かなり不定期な投稿になるとは思いますが、これからもどうぞごひいきにお願いします。気合を入れてこれからも書いていきますので!


出典(7話)
※BGM1 『アバン』(アニメ ボボボーボ・ボーボボより)
※BGM2 『出動』(アニメ 機動戦士Zガンダムより)
※OPおよび挿入歌『flying』(GARNET CROW)
※BGM3 『推理』(アニメ 名探偵コナンより)
※EDおよび挿入歌 『Tactics』(THE YELLOW MONKEY)
※BGM4 『名探偵コナン メインテーマ(次回予告ver.)』(アニメ 名探偵コナンより)

出典(8話)
※BGM1 『アバン』(アニメ ボボボーボ・ボーボボより)
※OPおよび挿入歌『flying』(GARNET CROW)
※BGM2 『ブチャラティのテーマ』(ゲーム ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風より)
※EDおよび挿入歌 『Tactics』(THE YELLOW MONKEY)
※BGM3 『名探偵コナン メインテーマ(次回予告ver.)』(アニメ 名探偵コナンより)

ボーボボとZガンダムのBGMの曲名が詳しくわかりませんので、間違っていたら指摘してくださるとありがたいです。
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