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メンバー自己紹介
HN:
teamBDR
性別:
男性
職業:
高校生
自己紹介:
このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
メンバーの紹介なんDA
[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!
[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。
[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。
[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!
[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。
[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
メンバーの紹介なんDA
[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!
[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。
[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。
[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!
[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。
[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
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第10話「失われたD/師の帽子」
これまでの学園都市の日常・科学サイドは、
サティスファクション地区にてワームの強襲を受けた翔太郎たち。承太郎の活躍によって難は逃れたが、ワームは逃走し、翔太郎の記憶も完全には戻っていなかった。
果たして翔太郎の記憶と、ついでにドレイクゼクターは取り戻せるのか・・・?
サティスファクション地区から鳴海探偵事務所へと戻ったフィリップたちは、テーブルに並べられた大量の料理を前にしていた。
「・・・美味い。本格的なイタリア料理だ」
矢車が絶賛している。彼も本物の翔太郎を監視するために部下と離れてここに来ていた。
「翔太郎さんって料理上手かったんですね」
佐天は見るからに美味そうなソースがかかったチキンを頬張りながらフィリップに言う。
「翔太郎はサティスファクション時代に料理係をやっていたそうだからね。サティスファクションで食べていた料理はすべて彼が作っていたらしい」
チームサティスファクションのメンバーは一癖も二癖もある人間ばかりだ。翔太郎が料理で手を抜くことは許されなかっただろう。だからこんなに美味い料理が作れるのだ。
「よっしゃ! スパゲッティーネーロができたぜ」
翔太郎はイカ墨のスパゲッティーを人数分皿に乗せ運んできた。
ここ数時間の様子を見るに、翔太郎の記憶はサティスファクション時代までは元に戻ったらしい。だがそれ以降の記憶は依然として喪失したままなのだ。
鬼柳は自分にできることはもうないと言ってサティスファクション地区に残った。それからどうすればいいかわからず、こうして事務所で料理を食いながら何時間も途方に暮れているのだ。
「そういえば、翔太郎さんはサティスファクションを解散してからは何をしていたんですか?」
「サティスファクション以降の翔太郎・・・そうか!」
初春が何気なしに言ったその素朴な疑問でフィリップはハッとした。
「ある・・・翔太郎の記憶の手がかりが・・・!」
それは翔太郎とフィリップの出会い、翔太郎と師の別れ、ダブル誕生にまつわる記憶。ビギンズナイト・・・
フィリップたちは承太郎の運転する車に乗り、風都港へと向かった。フィリップによると、そこから船に乗りある島へ向かうのだという。
同じ頃、鳴海探偵事務所の斜向かいにある黒岩相談所。そこにミュージアムの幹部の1人、園崎冴子が入っていった。階段を上り、その数メートル先にある重そうな木の扉をノックする。
「どうぞ」
中から男の声が聞こえた。冴子は中に入る。中にいたのは男が1人。
彼の名は黒岩 省吾(くろいわ しょうご)。30代前半くらいの見た目に、ゆったりとした黒いスーツ姿。整髪料できっちりと固めた髪型と全身から漂う余裕。彼もまた冴子と同じくミュージアム最高幹部集団、ミュージアム四天王の1人。
「こないだ借りたワーム2体、どうもありがとう」
「そんなことを言いにきたんじゃあないだろう」
黒岩はコーヒーをすすりながら窓の外から見える風都最大の風車、風都タワーを見る。無表情でありがとうなどという人間は裏で絶対何か別のことを考えている。
「今動いてるワーム・・・ライダーシステムを奪ったようだけど、あなたの指示なの?」
ミュージアムに所属するワームはすべて黒岩が指揮している。黒岩はある日突然、大量のワームと共にミュージアムの前に現れた。そしてその場にいたワーム全員をミュージアムに献上することで、一躍ミュージアム四天王の1人となったのだ。
「いや。俺が部下に指示を出すことはない」
黒岩はどうでもいいことのように返した。
「じゃあ、あのライダーシステムに何かする気は?」
「ない。あいつが勝手にやったことだろう。俺は自由を尊重するんでね」
黒岩はコーヒーを飲み終わると今度はタバコを取り出し、吸い始めた。
「ところで、あんたの夫の・・・誰だったか?」
今度は黒岩が冴子に質問した。
「さあ・・・誰だったか」
冴子はどうでもよさそうに返す。ちなみに正しい答えは霧彦だ。
「おいおい、まだ結婚して3ヶ月も経っていないだろう」
黒岩は失笑している。冴子は溜息をつきながら、
「あんな男、もうどうでもいいのよ。尽くしてはくれるけど真面目すぎて疲れるし。あんなに惹かれた強さもあの人の前じゃ塵にも満たないし・・・」
「あの人というのは・・・井坂か」
ええ、と冴子はうなずく。井坂 深紅郎(いさか しんくろう)、彼もまたミュージアム四天王の1人。彼の強さは黒岩もよく知っている。
「あんたの夫が手に入れたスタンドの矢は、今はどこに?」
「井坂先生にあげたわ。実験に使えるって喜んでたわよ」
実験ねえ、と黒岩は呟いて苦笑いする。井坂は普段医者をやっている。だがそれは表の顔で、裏の顔は血にまみれたマッドサイエンティストだ。彼はミュージアムの力で実験体を集め、超能力やガイアメモリの実験を行っている。自分を最強の存在にするためらしい。その研究成果で彼は四天王の1人となった。
彼は人間の最悪な部分を集めたような人間だ。だから黒岩は彼のことがあまり好きになれない。
だが冴子は逆だった。どこまでも強さを求める彼の姿勢に彼女は強く惹かれたようだ。
「それよりあんた、せっかく俺に会いに来てくれたんだ。これからどこかレストランにでも?」
ここで黒岩は初めて冴子の方を見た。だが冴子は扉の方へ歩いてゆき、
「残念ね。あなたの強さじゃ井坂先生には及ばないわ」
そう言って出ていってしまった。
「フッ・・・つれない女だ」
黒岩はタバコをコーヒーカップの中に投げ入れた。
風都港からレンタルした小型の漁船で移動すること1時間。フィリップたちはある島へとたどり着いた。その島はほとんど岩場ばかりの小さな島だが、中央に廃墟と化したビルがそびえ建っていた。ビルは4階から上が焼け落ちており、何かすさまじい爆発でもあったのかと思わせるような凄惨さだった。
フィリップたちはビルの中へと入っていく。
「翔太郎、ここが僕たちの始まりの場所だ」
「始まりの・・・場所?」
翔太郎は以前にもここに来たことがあるような、そんな既視感がした。直後に頭を貫くような、電撃のような感覚が翔太郎を襲った。
「うッ・・・俺は!?」
頭を抱えてしゃがみこむ翔太郎に、フィリップは黙ってあるものを差し出した。それは事務所の帽子掛けにいつも大事そうにかかっていた白い帽子だった。
「この帽子は・・・」
翔太郎の脳裏に1人の男の後姿が浮かぶ。一瞬だけ現れたそのイメージの男はフィリップが持っているものと同じ帽子をかぶっていた。
「おやっさん・・・?」
翔太郎の口から無意識にその言葉は発せられた。
「そうだ。この帽子は、君の師匠のものだ・・・」
フィリップの言葉に後押しされるように、サティスファクション以降の翔太郎の記憶が翔太郎の脳内で再生されていく。
鬼柳が逮捕され解散したチームサティスファクション。それから風都に戻ってきた翔太郎を待っていたのは不満足な日々であった。
道を歩けば皆が自分をチームサティスファクションだと言って恐れ、少しレベルの高い超能力者は翔太郎にけんかを吹っかけてくる。そして翔太郎はそれらを完膚なきまでに叩きのめす。
翔太郎の心にあったのはサティスファクション結成以前にもあった虚しさだった。
いつしか翔太郎は自分には追い風しか吹かないと言って風都を憎むようになった。
それからの翔太郎は荒んだ。毎日毎日、近所のスーパーの試食品を1人で全部食べ歩く日々。1日平均で5軒以上ものスーパーの試食品売り場を壊滅させていた。風が吹くように突然現れては試食品を食い荒らしていく彼を、人は『かまいたち』と呼んだ。
そんなある日のこと。
「何だ、アンタは?」
試食品にありつこうとした翔太郎の前に白いスーツ姿の1人の男が立ち塞がる。
「この店の者に依頼された・・・探偵だ」
彼の名は鳴海 荘吉(なるみ そうきち)。40代半ばくらいの渋い中年の男だった。
「俺の試食を邪魔する気か?」
そうだ、と荘吉は答え、試食用の爪楊枝を1本取り出し翔太郎に向かって投げつけた。爪楊枝は翔太郎の頬をかすめ、後ろの壁に突き刺さった。
「なッ・・・!!」
翔太郎の頬を一直線に赤い線が走り、そこから血が下に向かって流れ落ちる。
「やめときな。また怪我するぜ」
「この野郎・・・ふざけんなッ!!」
翔太郎は荘吉に殴りかかる。だが荘吉は軽々とそれをよけ、翔太郎の背中を取り足元を払った。翔太郎は前のめりに転倒する。
「うおォッ!!」
すかさず荘吉は翔太郎にのしかかり、柔道の寝技の要領で両腕の自由を奪って頭を押さえつけた。
「言え。もう二度と試食を独り占めするような真似はやめろ」
「・・・嫌だと言ったらどうする気だ?」
「悪党に掛ける容赦はねえ」
帽子の奥に見える荘吉の目はまるで研ぎ澄まされたナイフのように鋭かった。だが翔太郎はそのナイフのような瞳の奥に冷徹さとは別の何かがあることを感じた。伊達にサティスファクションはやっていなかったのである。
翔太郎は荘吉の瞳の奥にあるものに興味を持ち、その後土下座をして荘吉に弟子入りをした。頭を下げるのはしゃくに障ったが、何故かそうしなければならないような気がした。要は一時の気の迷いである。それ以上に意味はない。
荘吉も翔太郎の淹れたコーヒーを気に入り、すんなりと弟子入りを承諾してくれた。
それから翔太郎の探偵ライフは始まった。荘吉の元に舞い込んで来るのは犬探しや猫探し、落し物探しなどのしょぼいものばかりであった。
だが荘吉はそれで満足していた。何故なら荘吉は風都をこの上なく愛していたからだ。難解な殺人事件も怪盗の暗躍も、風都の平和を望む荘吉にとってはまったく必要のないことだった。
荘吉は犬猫探しの途中でいつも翔太郎に風都の色々なことを教えてくれた。ここにはこんな愉快な人が住んでいるだとか、ここのラーメンはまずくて食えたもんじゃないだとか、風都タワーと夕日の組み合わせは世界一美しい光景だ・・・というふうに。
翔太郎にとって風都は自分に向かい風しか吹かない最悪な町だった。だが荘吉に風都のさまざまなことを教えられている内に、翔太郎は風都も悪くはないなと思うようになった。向かい風も向きを変えれば追い風になるのだ。
いつしか翔太郎は荘吉のことをおやっさんと慕うようになっていた。
ある時のこと。翔太郎は給料が少ないことを不満に思い、荘吉の帽子掛けに掛けてあるたくさんの帽子の内から1つ勝手に借りていこうと考えた。月に来る依頼は多くて5件、酷い時は1件もない。給料が少ないのは仕方がないが、それでも不満が残る。荘吉のおしゃれ帽子コレクションから1つくらい借りていっても文句は言われないだろう。
翔太郎が一番上の黒い帽子に手を伸ばそうとした時、タイミング悪く荘吉が外出先から帰ってきてしまった。
「お・・・おやっさん」
翔太郎の全身が固まる。帽子に伸ばした手もそのままだ。
「フッ・・・帽子か」
荘吉は目を閉じて笑い、
「やめとけ、今のお前にそれは似合わねえ。どうしても欲しいってんなら、お前が一人前になった時にやる」
それ以上、荘吉は何も言わなかった。翔太郎はしばらくその場から動くことができなかった。荘吉の言った一人前とは何なのか考えたが、どれだけ考えても翔太郎にはわからなかった。
荘吉と出会ってから4年が過ぎた。翔太郎は自分なりに一人前を目指したがいつも空回りばかりで、いつしか荘吉から半人前(ハーフボイルド)と呼ばれるようになっていた。
そんなある日のこと。荘吉はいつものように翔太郎の知らない内に依頼を受けてきた。聞くところによると荘吉の小学校時代からの知り合いの依頼らしい。だが荘吉はそれ以上何も教えてくれなかった。依頼の内容さえも。荘吉の表情は帽子に隠れて見えなかった。
翔太郎は荘吉と共に真夜中の風都港から漁船を借りて海に出た。いつもの犬猫探しとはわけが違うということを翔太郎は確信した。1時間ほどして2人はとある無人島へとたどり着いた。島の中央には10階建てくらいのビルが建っていて、窓から出る赤い光が不気味な雰囲気を醸し出していた。
「翔太郎、これからここに侵入するが・・・」
荘吉は先程から大事そうに抱えていたアタッシュケースを翔太郎に渡すと、
「これから先必要になる。お前が持っておけ」
「え・・・でも何で俺が?」
翔太郎はアタッシュケースの中身を知らない。それほど重くはなく、現金の類ではないようだが。
「後でわかる。行くぞ」
荘吉の後を翔太郎は何も言わずについていく。ビルの中には誰もおらず、警備も仕事をしていないようだった。2人はエレベーターに乗る。あっさりと最上階にたどり着いた。
最上階は何もないただだだっ広いだけの大広間だった。だが天井だけはガラス張りのドーム上になっており、空に浮かぶ満月がよく見えた。
真っ暗で何も見えないと思っていたその時、突然下から青白い光が広がってきた。どうやら床全体が光っているらしい。
「誰だい? こんなところに足を踏み入れるのは」
広間の奥の方から声がした。見ると鳥かごのような鉄檻があり、その中で高校生くらいの少年がいすに座ってこちらを見ている。少年の頭にはなにやら怪しげな器具が取り付けられており、何本ものケーブルが外に向かって延びている。
「こういうもんだ」
荘吉は翔太郎が持っているアタッシュケースを親指で指す。
「それは・・・ダブルドライバー!!」
少年はアタッシュケースの表面に描かれた『W』の文字で気がついた。
「それは僕がここで開発を進めていたものだ。だがある日何者かによって盗まれ、消息がわからなくなっていた・・・あなたが盗んだのか?」
少年は語調を荒げて聞いた。だが荘吉は1人納得した様子で、
「なるほど・・・そういうことだったか」
と呟いた。翔太郎には状況がまったく理解できない。
「教えてくれ! あなたは一体・・・!?」
誰なんだ、という少年の言葉をさえぎって荘吉は、
「俺からも1つ聞かせてくれ。お前は記憶喪失らしいな」
少年は一瞬ぎくりとして、その後ああと言ってうなずいた。
「それで自分は何をするべきかもわからず、ただ流されるままにガイアメモリの開発に携わっている・・・そうなのか?」
少年は今度は何も言えずに硬直してしまった。図星を言われたのだろうか。翔太郎にとっては直前のガイアメモリという言葉が気になって仕方がない。一体2人の間をどのような思考が行き交っているのだろうか?
「俺はお前を助けてやってくれと依頼されてここに来た。だが俺はあくまでお前の意思を尊重するつもりだ。ここから出るか、ここに残るか。道は自分で選べ」
「道は・・・僕が選んでもいいんですか?」
「ああ、当然だ」
それを聞いた少年はうなずいて、頭の器具を黙ってはずした。荘吉は檻の方に近寄っていく。翔太郎も黙って後ろについていく。
荘吉は檻に鍵穴を見つけると、上着のポケットから針金を取り出してピッキングを始めた。
「そういえばお前、名前は?」
「わからない・・・自分に関する記憶はまったくないんだ」
少年はうつむく。荘吉は鍵穴をガチャガチャといじりながら、
「じゃあフィリップってのはどうだ?」
「フィリップ?」
何だそれはという気持ちで少年は荘吉を見る。
「俺が憧れている探偵の名だ。今日からはその名を胸に刻んで生きろ」
ガチャリという音がして鍵が開く。フィリップは荘吉に手を引かれ檻の外に出た。
「こいつを救うのが依頼だったのか?」
翔太郎は荘吉に問いかけた。荘吉はああと返す。結局、このアタッシュケースの意味は何だったのか。それを考えようとした時、翔太郎は空気が揺れたのを感じた。サティスファクション時代に何度も経験したことがある。この感覚は敵が強襲を掛けてくるときのものだ。
直後、
―マスカレイド!―
という音声が鳴り響いて、部屋の隅から大量の黒いスーツ姿の怪人が現れた。翔太郎はデュエルモンスターズの立体映像(ソリッドビジョン)かと目を疑ったが、足音がする辺りどうやら本物の怪物らしい。あっという間に翔太郎たちは数十体の怪人に取り囲まれてしまった。
「おやっさん! ここは俺に任せて先に」
翔太郎は怪人に殴りかかる。サティスファクション時代はデュエルと同じくらいリアルファイトの機会もあった。戦闘慣れはしている。翔太郎は怪人を次々と殴り倒していく。
荘吉は翔太郎が開けた道をフィリップと共に走り、エレベーターへと向かった。
「翔太郎! お前も早く来い!」
翔太郎はあと何体か怪人を倒し、怪人たちが追ってくるのを振り切ってエレベーターに乗った。エレベーターは1階に向かって動き出す。
「僕があそこを出たことで非常スイッチが入ったんだ・・・あと数分でこのビルは爆破される」
フィリップの言葉は本当らしく、エレベーターの中で赤いランプが点灯してサイレンが鳴り始めた。
しばらくしてエレベーターは1階にたどり着いた。
「爆破なんて冗談じゃねえ。とにかく早く逃げようぜ」
扉が開き翔太郎が出ようとした瞬間だった。
パァーーーンッという銃声が聞こえて、翔太郎は誰かに突き飛ばされた。荘吉だ。荘吉が翔太郎を突き飛ばしたのだ。そして荘吉の白いスーツは赤く染まった。
「おやっさん!!」
翔太郎は銃声のした方に向かってアタッシュケースを投げつけた。鈍い音がした後にドサッと倒れる音がした。エレベーターの外を頭を出さないようにして見ると、最上階にいたのと同じ怪人が銃を持って倒れていた。それを確認すると翔太郎は荘吉の首を腕で支えて、おやっさんと何度も呼びかけた。
「翔太郎・・・フィリップと・・・・・・風都をよろしく頼む」
「なに最期みたいなこと言ってんだ! そんな・・・そんなことは・・・・・・!!」
翔太郎の頬を自然と涙が伝っていた。荘吉の腹からとめどなく血が溢れてくる。フィリップはこの傷では助かる可能性はゼロだと考えた。翔太郎もそれをわかっている。だがそれを絶対に認めたくはない。
「翔太郎・・・ハーフボイルドにも・・・意味は・・・・・・ある・・・・・・俺の・・・ぼう・・・し・・・・・・大切に・・・・・・してくれ・・・・・・」
荘吉は最期の力を振り絞って、震える腕で翔太郎の頭に自分がかぶっていた帽子をかぶせた。そしてドサリと腕は力を失って落ちた。
「う・・・うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
翔太郎はわけもわからず叫んでいた。力を失った師が自分の腕に重くのしかかっている。ただそれが悲しかった。
フィリップも荘吉とは会ってまだ数分しか経っていなかったが、フィリップは心に熱いうえに冷たいような、意味不明のものを感じていた。そしてフィリップはそれが自分が生まれて初めて感じた悲しみの感情だと理解した。
翔太郎は叫ぶのをやめると数秒間黙り込んで、そのあと立ち上がって先ほど怪人に投げつけたアタッシュケースを拾いにいった。
「おやっさん・・・俺はあんたの遺志を継ぐ。あんたの愛したあの街を守ってみせる」
荘吉の亡骸を運ぶのは労力的にも時間的にも無理だった。翔太郎はそのことを一言わびて、フィリップと共にビルの外に向かって走った。そして船に戻ると、全速力で船を走らせた。
島からある程度離れた後、派手な爆発音が聞こえて振り向くとさっきまでいたビルから火の手が上がっていた。翔太郎とフィリップはビルに遺してきた荘吉を想って黙祷をささげた。
それから風都に戻った翔太郎はフィリップからガイアメモリやダブルドライバーについて色々な事を聞かされた。そして翔太郎はフィリップと共にダブルドライバーで仮面ライダーダブルへと変身する戦士となった。探偵業の方は翔太郎が所長となって受け継ぐことにした。
その後のこと。佐天と初春とは依頼を通じて出会った。たしか都市伝説の人面犬を一緒に探して欲しいという依頼内容だったと覚えている。
そう、確かに覚えている・・・・・・
「思い出したぜ・・・フィリップ」
翔太郎は立ち上がる。
「この帽子は俺とお前がおやっさんに立てた誓いの証だ。忘れられるわけねーよ」
フィリップはフフッと笑い、
「翔太郎、それはさっきまで記憶を失っていた君が言うセリフじゃない」
と言った。翔太郎はこの野郎と笑いながらフィリップの肩を叩いた。
「よかったですね、翔太郎さん」
初春が翔太郎を笑顔で祝福する。
「これでめでたしめでたし、かな」
「いや、まだだ」
佐天の発言に矢車が食いついた。
「まだドレイクゼクターを取り戻していない。翔太郎に擬態したワームを倒し、ドレイクゼクターを取り戻すことが真の解決だ」
「ちょっと待て」
今度は承太郎が矢車に食いつく。
「それはお前の仕事だろう。一般人の俺たちには関係のないことだ」
「だ・・・だが、事務所で話した時にあなたは自分はスタンド使い、翔太郎とフィリップは仮面ライダーだと言っていた。少しくらい手伝ってくれても・・・」
矢車は懇願するが、
「確かにそうだが、こっちには佐天と初春もいる。ワームのクロックアップにはダブルでは対抗できないし、スタープラチナの時を止める能力にも限界がある。彼女たちを守りきることは難しい。第一、ワームを倒すのがおまえの仕事だろう? ZECT(ゼクト)の給料は税金から出ていると聞いた。責任を持って自分で戦え」
承太郎は厳しく突き放した。そして翔太郎たちに行くぞと言って船の方へ帰っていった。
ビルの廃墟にただ1人取り残された矢車。やがて外から船のエンジン音が聞こえ、島から遠ざかっていった。
そういえば、船は1艘しかないのに矢車はどうやって帰ればいいのだろうか? だがその時の矢車にそんなことを考えている余裕はなかった。矢車の心にあったもの、それは虚無だった。
矢車は小学校の頃、給食で嫌いなこんにゃくの料理が出てそれを食い終わるまで昼休みをもらえなかったことを思い出していた。その時、
ゴシャアアアアアンッという音がしてビルの壁の一部が消し飛んだ。サティスファクション地区の時と同じ、衝撃波による攻撃だ。
「見つけたぞ! 仮面ライダーザビー!!」
そう言って現れたのはやはりリベルラワームだった。
「翔太郎たちは帰ったのか・・・まあいい、奴らも後で始末する」
「貴様・・・ドレイクゼクターを返してもらうッ!!」
「嫌だねッ!!」
リベルラワームはふんぞり返りながら左手の人差し指を上に向かって指す。するとどこからともなくトンボ型のゼクター、ドレイクゼクターが現れリベルラワームの人差し指に留まった。
「おお・・・かわいい奴よ」
リベルラワームは恍惚としている。
「貴様、何故ドレイクゼクターを奪った!?」
矢車はずっと気になっていた疑問をつきつける。するとリベルラワームは少し落ち着いて、
「最初はミュージアムの一員としてお前たちの困ることをやろうと思った・・・そこで俺は仮面ライダーである左翔太郎の姿に擬態し、ZECTのライダーシステムを奪ったという無実の罪を着せる作戦を思いついた。そしてZECTの研究所に忍び込み、大切そうに保管されていたこのドレイクゼクターを見つけたのだ・・・・・・だがそこで俺は・・・俺は・・・」
リベルラワームはわなわなと震えだす。
「俺は! このドレイクゼクターにッ! 恋をしてしまったのだァーーーーーッ!!」
リベルラワームは今まで誰にも打ち明けることのなかった想いを、火山が噴火するがごとく打ち明けた。
「なん・・・だと・・・!?」
あまりの超展開に矢車も驚きを隠せない。まったく想定外の事態だ。
「この愛らしい姿・・・一目惚れだった。機械だとか道具だとか、そんなことはどうでもいい! 俺はドレイクゼクターを愛しているッ!! もはやドレイクゼクターはドレイクゼクターではない・・・『どれいくぜくたん』だッ!!」
矢車の背筋に寒気が走る。何故だろう、もう5月も下旬だというのに・・・
「俺とどれいくぜくたんの愛を邪魔するお前は許さないッ!! いでよ、サナギワームたち!」
緑の昆虫のサナギのような姿をしたサナギワームが、物陰からぞろぞろと大量に姿を現した。
「やってしまえ!」
リベルラワームの号令でサナギワームたちは一斉に矢車に襲い掛かる。
「俺は・・・たとえ1人になったとしても戦う・・・・・・1人だけでも戦い続けてみせる!! 変身!!」
―Henshin(ヘンシン) Cast Off(キャストオフ)―
矢車はサナギワームの軍団に向かって走りながら仮面ライダーザビー・ライダーフォームへの変身を遂げた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
果てしなく続く矢車の戦いはまだ、始まったばかりである・・・・・・
「矢車さん、無事ワームを倒せるといいですね」
船の上で初春は呑気そうに言った。彼女たちは島で矢車が現在進行形で激闘を繰り広げていることを微塵も知らない。
「そうね、たった1人でも戦い続けるヒーロー。これぞまさに孤軍奮闘ね」
そう言って佐天は矢車の話題を締めた。
「フィリップ、今回はありがとうな」
翔太郎は甲板の上で波風を浴びながらフィリップに言った。
「改めて思い出したぜ。俺はおやっさんの街を愛する意思を継いで戦っているってことを。おやっさんが俺に遺した一人前とハーフボイルドの意味を見つけるってことを」
「うん、僕もあの人に救ってもらった。僕もあの人の意思を継いでいきたい。これからも一緒に戦っていこう」
翔太郎は左の、フィリップは右の拳を突き出して軽くぶつけ合った。2人の顔には笑みが浮かんでいる。
「それにしても・・・」
フィリップは考える。鳴海荘吉に自分の救出を依頼したのは誰だったのか? 以前、あの夜のことについて調べようとしたことがあったが、ミュージアムの地球(ほし)の本棚のサーバーによってブロックされてしまった。地球(ほし)の本棚のサーバーのブロック能力にも限界がある。禁止ワードに指定できる数には上限があるのだ。その限界がある中で自分たちがビギンズナイトと呼ぶあの夜を禁止ワードにする理由。どうやらあの夜には何か秘密があるらしい。
一体それは何なのだろうか?
夕刻。風都タワーに向かって落ちていく夕日をシュラウドはビルとビルの間の路地裏から眺めていた。彼女が何を考えているのか、それは彼女以外誰も知らない。
ふとシュラウドの前を屋台のラーメン屋が横切っていった。
「あそこのラーメン屋は・・・まずいのよね・・・・・・荘吉」
そう呟いてシュラウドは路地裏の闇の中へと消えていった。
次回予告
天道「せっかく手に入れたカブトエクステンダーだが、ワームが現れた場所が遠かったり海の向こうだったりでまったく活躍できなかった。次回こそは活用してみせる。かくして、新たなる仮面ライダーの訪れ。
次回、学園都市の日常・科学サイド『振り切るA/薄幸の塩スープ』
これで決まりだ」
フィリップ「今日の最強ヒーローは『仮面ライダーザビー』
ハチ型のザビーゼクターで変身するZECT製のライダーだ。防御力の高いマスクドフォームからキャストオフすることで、クロックアップが使えるライダーフォームへと変化する。必殺技はライダーフォームの状態で放つライダースティング。矢車さん、がんばってください」 PR
使用BGM
※BGM1『今回の依頼は』(仮面ライダーWより)
※BGM2『闇の家族』(仮面ライダーWより)
※BGM3『緊張』(遊戯王5D'sより)
※BGM4『おやっさん』(仮面ライダーWより)
※BGM5『ビギンズナイト』(仮面ライダーWより)
※BGM6『ハードボイルド』(遊戯王5D'sより)
※BGM7『パニックワールド』(仮面ライダーWより)
※BGM8『探偵とは』(仮面ライダーWより)
※BGM2『闇の家族』(仮面ライダーWより)
※BGM3『緊張』(遊戯王5D'sより)
※BGM4『おやっさん』(仮面ライダーWより)
※BGM5『ビギンズナイト』(仮面ライダーWより)
※BGM6『ハードボイルド』(遊戯王5D'sより)
※BGM7『パニックワールド』(仮面ライダーWより)
※BGM8『探偵とは』(仮面ライダーWより)