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~teamBDRの酒場~
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HN:
teamBDR
性別:
男性
職業:
高校生
自己紹介:
このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
メンバーの紹介なんDA
[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!

[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。

[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。 

[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!

[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。

[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
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第11話「振り切るA/薄幸の塩スープ」
 
作者 Joker

佐天と初春はいつものように鳴海探偵事務所に遊びに来ていた。
「翔太郎さん・・・何しているんですか」
初春は怪訝な目で翔太郎とフィリップを見る。2人はガスコンロで鍋を沸かしているようだが、鍋の中には水以外何も入っていない。
「何って・・・作ってるんだよ・・・」
何を? と佐天が聞けば、翔太郎は塩スープだと答えた。
「お湯の中に塩を入れただけのもはや料理とも言えねえもんだ・・・すごいぜ、温かい海水の味がするんだぜ」
何がすごいのかまったくわからない。フィリップは溜息交じりに、
「こないだ翔太郎がすごくおいしい料理をたくさん作って皆に振舞っただろう。あの時僕たちのただでさえ少なかった財産が底を尽きてしまったんだ」
翔太郎はすまないと言って下を向く。フィリップはいいんだと言って翔太郎を慰めた。2人ともすっかりやつれ果てていた。
「さて・・・できたぜ。2人も食うか?」
翔太郎は佐天と初春に椀を差し出す。
「まあ・・・食べないだろうね」
2人の苦笑いを見たフィリップは自分も苦笑いしながら言った。
「はあ・・・不幸だ。神は何故こうも残酷なんだ・・・・・・せめて、せめて依頼があれば・・・・・・」
翔太郎の願いが天に通じたのか、その時、
コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
翔太郎は脱兎のごとくドアに飛びついて思い切りドアを開け放った。
「どうぞいらっしゃいィィィッ!!」
 
「あ・・・あの・・・・・・」
現れたのは小学校低学年くらいの少女だった。ものすごい勢いで扉が開けられたせいか、おどおどしながらこちらを見つめている。
「あ・・・ああ、ごめん。何か用か?」
翔太郎はしゃがんで少女の目線に合わせた。
「私、御幸 珀(ごこう はく)。ここ探偵事務所でしょ? 依頼に来たの」
「依頼?」
翔太郎は思わず聞き返した。こんな小さい子が依頼に来たのは初めてのことだっだ。
「落し物をしたの。お母さんの写真が入った大事な財布」
「へ~、そりゃあ大変だ。でも君みたいな子供の依頼はちょっと受けにくいな。お父さんかお母さんはいないのか?」
すると珀は少し表情を曇らして、
「お父さんは私が赤ちゃんだった頃にどこかに行っちゃったんだって。お母さんは病気で死んじゃったんだ。私が7歳の時に・・・」
「え・・・! そ・・・そうだったのか。ごめんな。悪いこと聞いて・・・」
翔太郎は珀を哀れみの目で見た。すると珀は首を振って、
「でも私不幸じゃないんだよ! お母さんが言ってた。神様は一番大変な人から順番に助けてくれているんだって。だからその順番がなかなか回って来ないからって、自分のことを不幸だなんて言ってたら神様はいつまでたっても助けてくれないんだって」
その時、翔太郎は体を稲妻が走り抜けたような気がした。自分はさっきまで塩スープを飲むしかない自分の境遇を不幸だと嘆いていた。だがしかし、この少女はおそらく塩スープ以上の不幸を体験してきたのにもかかわらず、自分のことを不幸ではないと言ったのだ。
「しょ・・・翔太郎さんが泣いている!!」
佐天の指摘で翔太郎は気づいた。自分はいつの間にか涙を流していた。
「くそっ・・・! 俺は・・・俺は愚かだ・・・!! たかが塩スープで自分のことを不幸だなんて・・・・・・くそっ! 涙が塩スープ以上にしょっぺえっ・・・!!」
「翔太郎さん」
初春は翔太郎に耳打ちする。
「いいんですか? 彼女の依頼を受けてもたいした報酬はありませんよ。余計にお腹が減って終わりです」
「初春・・・俺は自分のためにこの仕事をやっているんじゃあない。俺はこの町の人々の手助けをするためにこの仕事をやっているんだ。俺はこの町のためなら命を投げ捨てる覚悟もある。腹が減るだけの財布探しなら安いもんだぜ」
こうして翔太郎は無益な財布探しの依頼を受けることにした。フィリップは溜息をついて、
「翔太郎、食べないなら塩スープは僕が全部貰うよ」
 
「お菓子パーティーだと?」
天道はいつものようにひよりが働く翠屋(みどりや)にケーキのただ食いに来ていた。
「ああ。うちの店長は用があって行けないから、代わりに兄さんに手伝って欲しいんだ」
お菓子パーティーとは学園都市に住む富豪たちが合同で定期的に開いているイベントだ。参加者は学園都市内でも地位の高い者ばかりで、舌の肥えた人々を満足させるために一流のパティシエが腕を振るったお菓子が提供される。つまりこのイベントに参加することは大変名誉なことなのだ。
「このイベントで成果をあげることができれば店の評判はさらに上がるんだ。兄さんはいつもただ食いしていくんだから、せめて店の売り上げに貢献してくれ」
「面白い。他のパティシエたちに格の違いというものを教えてやる」
天道は不適に笑みを浮かべてそう言った。
 
「見つかったぜ! 珀ちゃん」
翔太郎は道端の脇に落ちていた珀の財布を高く掲げてみせた。
「わ~! ありがとう、探偵さん!」
珀は満面の笑みを浮かべて翔太郎が差し出した財布を受け取った。
「さすがフィリップさん。地球(ほし)の本棚の情報は絶対ですね」
佐天はフィリップを賞賛する。
「まあね。珀ちゃんが今日通ったという道と財布の中にあるというお母さんの写真で検索を掛けたら一発だったよ」
「本当にありがとうございました。依頼料は払えませんけど・・・そうだ! うちに来てください。お茶とお菓子をご馳走します」
「お・・・お茶と!」
「お菓子だって!?」
珀のその発言に翔太郎とフィリップは心が揺れた。この1週間、塩スープ以外のものは一切口にしていない。コーヒーをすすりながら甘いお菓子を食べる・・・これ以上の贅沢は想像できなかった。
だが彼女の生活は自分たち以上に苦しいはずだ。本当にご馳走になっていいものなのか・・・
「お母さんが言ってたの。誰かのお世話になった時はちゃんと御礼をしなさいって。だから遠慮しないで私の家に来て」
翔太郎とフィリップはこの子が天使に見えてきた。
「じゃ・・・じゃあ遠慮なく・・・・・・」
翔太郎たちは珀の家に行くことにした。
 
30分後、
「は・・・珀ちゃん? ここが君の家かい?」
いつも冷静なフィリップが驚き震えている。翔太郎に至っては声も出せずに鳥肌がたっている。
なんと珀の家は今までに見たこともないような巨大な洋館だったのだ。
「うん。ここでお母さんのお兄さんと一緒に暮らしてるんだ。とってもお金持ちなんだよ」
「へ・・・へ~・・・・・・でも本当にいいのか? 君のおじさんは俺たちが上がっても怒らないのか?」
翔太郎は完全に恐縮している。
「うん。おじさんは優しい人だから」
珀は満面の笑みでそう言った。この子が優しいと言うからには本当に優しいのだろう。翔太郎たちは珀の後ろについて恐る恐る敷地内に足を踏み入れた。
 
「こんにちは、御幸さん。相変わらずお元気そうで」
「おお、君はたしか園崎家の・・・」
「はい、霧彦です」
御幸家は本日、お菓子パーティーの会場となっていた。霧彦は園崎家の代表としてこのパーティーに出席していたのだった。
霧彦が話し掛けたのは学園都市有数の大富豪の1人、御幸 剛(ごこう つよし)。42歳。彼はミュージアムの元でガイアメモリの流通を請け負っている会社の社長だ。
「君が売ってくれるおかげでガイアメモリの販売業績は伸びる一方だよ」
「はあ・・・そうですかね・・・・・・」
霧彦は何故か自信なさ気だ。
「どうしたんだね? やけに元気がないじゃないか」
「はあ・・・あなたに言うのもなんなんですけど・・・・・・最近うちの嫁が私に冷たいんですよ」
「ほう、ガイアメモリの販売業席をどんどん延ばしている君が・・・何故?」
「さあ・・・わかりませんが、もしかしたら仕事ばかりであまりかまってやれなかったのを怒っているのかも・・・・・・」
霧彦はうなだれる。
「まあそう気を落とさずに。誰だって機嫌の悪い時はあるよ」
剛がそうやって霧彦を慰めていると、
「おじさーん!」
「おお、珀か。どうしたんだい?」
「この人たちが私が落とした財布を見つけてくれたの。この人たちにもお菓子を食べさせてあげてもいい?」
剛は翔太郎たちのほうを見る。
「ほお・・・君たちが。それはどうもありがとう。どうぞ満足いくまで召し上がってください」
さっきまでの翔太郎たちならここで踊り狂って喜ぶはずだった。だが、
「霧彦・・・どうしてお前がここに・・・!?」
翔太郎は剛の隣の霧彦を見て怪訝な顔をする。
「探偵君、それは僕のセリフだ。まさか地縛神の攻撃に耐えていたとはね」
「あのときの借り、いつか返すぜ」
「なんなら今ここで・・・」
霧彦は挑発したが、
「絶対に嫌だ! 何故なら俺たちは今、忙しい!!」
そう言って翔太郎たちはたくさんのケーキが並ぶテーブルへ向かった。
「お知り合いだったんですか?」
剛はおどおどしながら霧彦に聞く。
「フッ・・・さすがは僕のライバル。見事だ」
剛は一体何が見事なのかわからなかったが、面倒くさいので聞かないことにした。
 
「天道特製ケーキが焼きあがったぞ~~~」
天道はチリンチリンと鐘を鳴らしながら言う。天道率いる翠屋も御幸家のお菓子パーティーに参加していた。
「兄さん、そこは翠屋特製と言ってくれ。じゃないと宣伝にならない」
「天道特製ケーキが焼きあがったぞ~~~」
天道はひよりの言うことをまったく聞いていない。ひよりは溜息をついた。
「あ、翔太郎さん。今ケーキが焼きあがったみたいですよ」
佐天が翠屋のテーブルの方を指差す。
「おお・・・焼きたてのケーキなんて初めてだぜ」
「僕もだ、翔太郎」
2人は腹を鳴らしながらテーブルに向かう。
「ん? 奴らは・・・」
天道はこちらに向かってくる翔太郎とフィリップを発見し、少し驚いた。ただのしがない探偵であるはずの彼らが何故このような場にいるのか。
「なあ、俺たちにもケーキをくれ」
天道の気持ちなどつゆ知らず、翔太郎はテーブルの上のチーズケーキを指差す。
「なら僕もそれを貰おう」
霧彦も翔太郎の横に並んで同じチーズケーキを指差す。
「真似すんなよ」
「ふ、真似も何もこれは僕の自由・・・ン? 君は・・・」
霧彦は天道を見て何か思い出しそうになる。そして急に慌てた様子で、
「まさか・・・君はカブ」
「言うなッ!!」
天道は霧彦が自分がカブトであることをばらしそうになったので霧彦の顔面に向かって手元にあったイチゴのケーキをぶつけた。
「おぶぅッ!!」
顔面がクリームで真っ白になった霧彦はその場で床に仰向けになって倒れた。
「てめえ! 食べ物を作る仕事をしていながら食べ物を粗末にするなんて・・・許せねえ!!」
自分の秘密を守ることはできた。だがその代償に翔太郎の怒りを買うことになってしまった。
ここ最近、まともな食べ物を食べることができなかった翔太郎は食べ物を粗末にした天道への怒りでいっぱいになっている。
「おばあちゃんが言っていた・・・男がやってはいけないことが2つある。女の子を泣かせることと、食べ物を粗末にすることだ・・・・・・」
天道は翔太郎の目の前に立ち、両手を横に広げる。
「殴れ。そして俺の過ちを戒めてくれ」
「ああ、じゃあ遠慮なくいくぜ」
翔太郎は容赦のない満足パンチを天道の腹部に向かって撃った。
「ぐぼぁあああッ!?」
天道は翔太郎がチームサティスファクションの一員だったことを知らなかった。天道は予想外の威力のパンチにうめき、よろめきながら後ろのテーブルの方に倒れた。ガシャーンという音がしてテーブルの上のケーキが床にぶちまけられる。
「な・・・何だ? やりすぎたか?」
「き・・・貴様・・・・・・」
天道は腹を押さえながら荒い息で立ち上がる。
「お前のせいで・・・ケーキが粗末になってしまったぞ・・・!」
「何言ってんだ! てめえが変な方向に倒れたせいだろ!」
天道と翔太郎の醜い口論が始まった。フィリップたちはあまりの勢いにまったく口出しができない。
「貴様ァ・・・」
「てめえ!」
とうとう2人は殴り合いを始めてしまった。2人とも戦闘慣れした高度な殴り合いだ。
「何事なんだ! 警察・・・誰か警察を呼べ!」
騒ぎを聞きつけた剛がそう叫んだ10分後、会場に数名の警察官が駆けつけた。
「風都署の警部の照井 竜(てるい りゅう)だ。お前たちを逮捕する」
まだ自分と大して年も違わないだろうに、警部ってすごいな~・・・と翔太郎はなんとなく思った。天道と翔太郎は2人とも照井に手錠でつながれた。2人はどうしてこうなったという表情で空虚に上を向いている。
「お兄さん、やめて!」
珀が照井の足にしがみついて叫ぶ。
「このお兄ちゃんは逮捕されるような悪い人じゃないのよ! 私がなくした財布を捜してくれたんだから!!」
「珀ちゃん・・・」
翔太郎は珀が照井に説得を試みるのを見ていて涙が出てきた。
「君・・・珀ちゃんというのか・・・・・・」
照井は珀の目線に合わせてその場にかがむ。
「似ている・・・俺の妹に・・・」
照井はそう呟くと、
「おい、その翔太郎とかいう方を放してやれ」
と言って部下に翔太郎の手錠を外させた。
「あ・・・ありがとう警部さん!」
「礼ならその子に言うんだな」
「おい! ちょっと待て!!」
天道は今の事を見て猛烈に抗議がしたくなった。当然だ、翔太郎と天道のやったことに大差はないのだ。なのにこの待遇の差は何なのか。
「この子のおかげでこの男の潔白は証明された。お前はまだ何を考えているのかわからん。取調べが必要だ」
「それなら俺にも証人がいる。俺の潔白を証明する証人が・・・ひより!」
さっき照井は妹に似ているという理由で珀を信用した。ならひよりが兄さんを助けてくれといえば見逃してもらえるのではないか?
「・・・何だ、兄さん」
ひよりは暗い様子で床のケーキを掃除している。
「ひより! 兄さんを助けてくれと言ってくれ!!」
「さあ・・・もう僕はそんなことは知らないよ」
散々天道に言う事を聞いてもらえなかったひよりは、もう天道の言う事を聞くつもりはなかった。
「残念だったな」
照井は天道の肩をポンと叩く。そして部下たちに天道を連行するように命令した。
「ありがとう、珀ちゃん。おかげで助かったぜ」
「こっちこそ、翔太郎さんが前に助けてくれたから」
微笑ましい光景に場が和んでいた時、
「こちら霧彦、御幸家から天道総司がパトカーで外に出た。今すぐ追跡を」
霧彦は我に返って誰かとケータイで連絡を取っている。
「てめえ・・・霧彦! 何のつもりだ」
「フフフ・・・僕には彼を始末しなければならない理由がある。また会おう、探偵君」
そう言って霧彦はクリームで汚れた顔のままどこかに去っていった。
「霧彦・・・そんなに顔にケーキをぶつけられたのがショックなのかよ」
「こうしちゃいられない! 早く僕たちもパトカーを追いかけないと!!」
フィリップに急かされて翔太郎は珀に別れを告げる。珀はまた会いに来てねと言って笑顔で見送ってくれた。そういえば色々邪魔が入ったせいで結局何も食べることができなかった。早めに片付けてまた戻ってこようと翔太郎は心に誓って屋敷を後にした。
 
「け・・・警部!!」
「どうした?」
パトカーの後部座席に天道と並んで座っている照井は運転している部下に応じる。
「ぜ・・・前方にかい・・・かっかかかっ怪物が!!」
照井は前に向かって身を乗り出す。前方には青白い色をした不気味な怪人がパトカーを向いて仁王立ちしている。氷を操るフリーズ・ドーパントだ。フリーズ・D(ドーパント)は右腕をパトカーに向ける。
「まずい・・・轢け」
「え!?」
「死にたくなかったらこのまま轢き殺せッ!!」
照井の命令で運転手はアクセルを全力で踏み込む。
「フンッ!」
だがフリーズ・ドーパントが作り出した氷塊がパトカーの前方から激突する。
「うわああああああああッ!!」
制御が利かなくなったパトカーはしばらく滑るように動いた後、ガードレールにぶつかって止まった。
「うっ・・・く・・・」
天道は照井と手錠でつながれたまま、なんとか脱出に成功していた。だが全身を強く打ったせいで思うように動くことができない。少し動くだけでも激痛が走る。
「天道総司・・・ミュージアムの意向により、お前を殺す」
「やはり・・・ミュージアムの刺客か・・・・・・」
天道はカブトゼクターを呼ぶ。ジョウント機能により飛来したカブトゼクターは天道の命令で天道と照井をつなぐ鎖を角で切り裂いた。天道はよろよろとしながらも立ち上がる。
「変身・・・ッ!!」
―Henshin(ヘンシン)―
仮面ライダーカブト・マスクドフォームに変身した天道はフリーズ・Dに殴りかかる。だが弱ったカブトのパンチではまったくダメージを与えることができない。
「なら・・・キャストオ」
「させん」
フリーズ・Dが右手をかざすと、カブトゼクターのゼクターホーンが凍りついてしまった。これではキャストオフすることができない。
カブトはフリーズ・Dに一方的に殴られ続ける。マスクドフォームではフリーズ・Dには勝てない。一体どうすれば・・・・・・
「うッ・・・・・・・・・俺は!?」
照井は目を覚ました。照井は顔面から血を流し、肋骨を何本か折っていた。
「天道は・・・逃げたのか」
照井は血で前が見えないので手錠をつけた腕を振って確認した。そして自分の体がとても冷たくなっていることに気がついた。
「ひどい出血だな・・・俺は死ぬ・・・・・・のか」
照井はそれを認めたくなかった。何故なら自分には必ず達成しなければならない目標があるからだ。
「俺は・・・あいつを・・・・・・あいつを!!」
自分の胸の内で燃え盛るこの憎悪をあいつにぶつけるまでは死んでも死にきれない。
「ならば、私と契約しなさい」
突然、照井は誰かに話しかけられた。血で前は見えないが、どうやら女が自分の目の前に立っているらしい。
「誰だ・・・お前は」
「私はあなたに力を届けにきた。あなたの目的を達成することのできる力を・・・復讐したいんでしょう? 氷の男に・・・」
女は勝手に照井の過去を語りだした。
5年前、照井が20歳の時、彼は念願だった風都署に入署した。彼の父親は風都署の警部であり、照井もその後を追ったのだ。彼の母と妹はそれを祝福し、照井は命をかけて職務をまっとうすることを誓った。
ある日、高校生だった照井の妹が学校の帰りに行方不明となった。照井は兄として、警察官として懸命の捜索を続けたが、1週間経っても何の手がかりもつかめなかった。
それでもあきらめまいと照井は希望を捨てなかった。
しかしその希望は絶望となってはね返ってきた。夜遅くまで居残って帰ってきた照井の目に映ったのは氷漬けになった我が家だった。慌てて自宅に駆け込む照井。だがそこで待っていたのは凍りついた両親の姿だった。
「おい父さん! 一体何があったんだ!?」
照井は必死になって父に話しかける。父にはまだ意識が少しだけ残っていた。
「男が・・・知らない男が突然内に入ってきて・・・・・・これを渡してきたんだ・・・」
父の凍りついた右腕の先に黒いエナメルのかばんが吊り下がっている。
「この氷もそいつが!?」
父の首が下に向いた、と思った瞬間、父の体は砕けてバラバラになった。その衝撃で母の体と他の凍りついた家具も砕け散った。2人とも凍りついていたせいか血はまったく出なかった。
照井は今すぐにでも発狂したかったが、父の持っていたエナメルのかばんの中身が気になり、恐る恐る開けることにした。
中にいたのはバラバラに切り刻まれた妹の死体だった。
ここでついに照井は叫んだ。そして泣いた。憎しみと哀しみと怒りと絶望。それだけが照井の中に残り、照井はこんなことをした男に必ず復讐すると誓った。
 
「私はその男の正体を知っている」
「なんだと・・・!?」
目の前にいる女は照井が5年間追い続けて何も手がかりがつかめなかった犯人の正体を知っていると言った。
「その男はこの街を裏から操る組織、ミュージアムの幹部。今戦っているあの怪人もミュージアムの者」
照井の耳に激しく殴りあうような音が入ってくる。ミュージアム、照井も噂には聞いたことがあった。だが詳しく追求しようとすると必ずどこかで誰かが待ったをかけてきた。
「あの男に復讐したいならこれを使って戦いなさい」
女はベルトのようなものを取り出した。
「ただしこれは悪魔の力。あなたにそれ相応の力がなければ破滅への道をたどることになる」
「破滅・・・? 別にかまわん。このままでは俺は何もできずに死ぬだろう・・・なら、悪魔の力を借りてでも生き延びて、俺は復讐を達成する!」
それを聞いた女は照井の腰にベルトを巻くと、照井の手に赤いガイアメモリを握らせた。
「それを挿し込んで横のグリップを回しなさい」
そう言って女はどこか遠くへ消えて行った。
照井はベルトを触る。左右から短いバイクのハンドルのようなものが伸びている。
照井は渡されたメモリをベルトに挿し込み、右のグリップを回した。
―アクセル!―
ベルトから音声が響き、照井の体を赤い鎧が包んでいく。さらにアクセルのメモリに内包された“加速”の記憶が照井の細胞を活発化させ傷を瞬時に回復させる。
やがて照井は無傷の状態まで回復し立ち上がった。照井は仮面ライダーアクセルへの変身を遂げたのである。
「うわあああ!!」
カブトはフリーズ・Dの猛攻に耐え切れず吹っ飛んだ。
「死ね。天道総司・・・仮面ライダーカブト」
フリーズ・Dがカブトに引導を渡そうとしたその時、
フリーズ・Dは突然、後ろから鋭利な刃物で切りつけられた。
「グふぁアアア!!」
フリーズ・Dは振り向く。そこには青く目を光らせ、巨大な刀を持った赤い戦士がいた。
「新たな・・・仮面ライダー・・・!?」
天道はもう立ち上がれそうになかった。
「何だ・・・貴様は!?」
「俺に質問するな・・・貴様はミュージアムの者らしいが・・・?」
「貴様・・・質問するなと言っておきながら、自分は質問したい放題か!? ふざけるな・・・確かに俺はミュージアムの者。貴様も処刑してくれる!」
フリーズ・Dは氷の剣を作り出し、アクセルに向かって振り下ろした。
アクセルは右のグリップを回す。するとアクセルの体は高熱に包まれ、氷の剣は当たる前に溶けて消えてしまった。
「なに!?」
「らあッ!!」
アクセルはその手に持った大剣、エンジンブレードを滅茶苦茶に振り回してフリーズ・Dを切り刻む。
「ぐふぁあああッ!!」
カブトの時とは一転、フリーズ・Dは一方的にアクセルの攻撃を受け続けている。
「とどめだ」
―アクセル! マキシマムドライブ!!―
アクセルは必殺技の体勢に入る。
「はあ・・・はあ・・・」
フラフラになったフリーズ・Dの正面でアクセルは飛び上がる。
「ラアアアッ!!」
タイヤで轢いたようなエネルギーの跡を残しながら、アクセルは炎を纏った後ろ回し蹴りをフリーズ・Dに決めた。アクセルの必殺技、アクセルグランツァーである。
「グフォああああッ!!」
断末魔の悲鳴を上げて、フリーズ・Dはメモリブレイクされた。砕かれたメモリの横にスーツ姿の男が横たわって気絶している。
『翔太郎! ここだ』
アクセルが男を担ごうとした時、仮面ライダーダブルがバイクに乗って現れた。
「お前は・・・?」
アクセルは男を担ぐのをやめ、ダブルの方を見たまま棒立ちになった。
「コードネーム・ダブル・・・か」
カブトが呟く。
「仮面ライダーが・・・2人!?」
翔太郎は驚きを隠せない。今、ここに3人の仮面ライダーが集結したのだ。
 
次回予告
フィリップ「あのベルトは・・・まさか!」
照井「俺の名は仮面ライダーアクセル。誰にも俺の復讐は止めさせはしない」
翔太郎「だからって・・・お前は自分のためにしか戦わねえのかよ!!」
照井「ああ。それの何が悪い。他人のためだけに戦う・・・そんなことがいつまでも続けられると思っているのか? 俺は俺の復讐のためだけに戦う。
次回、学園都市の日常・科学サイド『振り切るA/誰のために』
これで決まりだ!」
 
翔太郎「今日の最強ヒーローは『仮面ライダーアクセル』
アクセルドライバーにアクセルのメモリを挿し込むことで変身する仮面ライダーだ。高い攻撃力と速い機動力、そして何発攻撃をくらっても加速の記憶で瞬時に回復してしまう治癒能力を持っている。必殺技は炎の後ろ回し蹴りを叩きこむアクセルグランツァーだ」
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by Joker 2012/02/06(Mon)21:25:59 Edit
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※BGM8『鬼柳京介(ハーモニカver.)』(遊戯王5D'sより)
※BGM9『疾走のアクセル』(仮面ライダーWより)
作者あとがき
by Joker 2011/04/19(Tue)05:43:37 Edit
2日オーバー。次回も日曜を目標にがんばる。
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