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teamBDR
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男性
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高校生
自己紹介:
このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
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[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!

[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。

[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。 

[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!

[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。

[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
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第3話「Mは手を出すな/リーゼントと風紀委員と転校生」
 
作者 Joker

「あ~あ、ひっさしぶりの学校か~。行きたくね~な~」
東方仗助は憂鬱だった。誰だって月曜日は憂鬱である。しかも彼は祖父の葬式などのおかげで、入学した週以来の登校なのだ。クラスメイトたちはもう打ち溶け合っているのだろうか? そこに自分が入る余地はあるのか? 考えるだけで気が滅入ってきた。
「まだあのクラスで馴染めんのって康一ぐらいなんだよな~」
康一とは仗助の数少ない友人、広瀬康一(ひろせ こういち)のことである。見た目はかなり小さく(おそらく身長150センチ台)、気も弱めという典型的ないじめられっ子タイプで、仗助とは真逆な印象だが、なかなかに勇敢な性格のようで実際にいじめられているということなどなく、むしろ誰もが怖がって近寄らない仗助に積極的にコミュニケーションを取ってくるようないいやつだった。仗助は彼が自分の席の後ろ(このことについて康一は、「黒板が見えないよ、先生のいじめだよ」と言っていた)ということもあって、仲良くなったのだった。
「馬鹿でかい俺がいなくって、康一はさぞ黒板が見やすかったろうな~」
さっきから仗助は独り言をブツブツつぶやきながら覚めない眠気とともに歩いていた。そんな状態で曲がり角を曲がろうとした時、
「どきやがれェ~~~ッ!!」
「え?」
 
ガシャアアアンッ
 
突然向こう側から走ってきた男にぶつかられ、突き飛ばされた。相手の方も地面に転がっている。
「痛ってぇええ・・・いったい何なんすか?」
「何なんすかはてめえだこらァッ!! 邪魔になるところにボケェっと突っ立てんじゃあねえよ!!」
ぶつかってきた男は仗助と同じぶどうヶ丘高校の制服を着ていた。名札の学校名が赤色に塗られていることから、どうやら仗助と同じ1年生らしい。そしてこの男、見た目からしてものすごいワルであった。仗助に匹敵するほどの高身長に、派手にコーディネイトされた制服、刈り上げられた頭は、遠目に見てもワルのオーラが漂ってくるくらいのものだった。まあ仗助も人のことをとやかく言える格好はしていないのだが。
「もしもこのせいで遅刻したらどうすんだよッ あァ!?」
周りの人間たちが遠巻きにこの様子を見守っている。傍から見れば不良同士のけんかだろう。無理もない。
「別に始業時間まではまだまだ余裕があんじゃあねーか。そんなに急ぐこともないっすよ」
見た目は不良でも仗助の性格はかなり温厚なほうだ。できるならけんかなどしたくないし、話し合いでなんとかしたい。だが男は更に突っかかってくる。
「てめーッ! 俺は今日転校してきた身なんだよッ 手続きとかも山ほどあるし、遅れちまったらやべぇんだよォッ!!」
男は仗助の胸倉をつかんできた。仗助は男の顔を見る。実に暑苦しい顔だが、若干涙目のような気もする。これはマジでやばいと思っているのだろう。
「じゃあよぉ、こんなところで油売ってる暇ねえっしょ。俺なんかにかまわず早く学校いかねーと」
仗助が冷静にそう言い放ったら、男はハッとした様子で、
「おお! そうだった・・・!! 俺の使命は早く学校に行くことだったぜッ こうしちゃいられねえ! じゃあなッ! あばよォ!!」
そう言って男はドタバタと走り去っていった。仗助はズボンの裾を払いながら立ち上がる。
「はぁ~、何だったんすか? 今の単純バカは・・・」
仗助は気づいていなかった。このときすでに、新たな運命が動き出そうとしていたことを・・・
 
「ちぃ~す、康一ぃ」
仗助は自分の席に着くと、振り返って康一に話しかけた。
「仗助君久しぶり。なんだか大変だったそうじゃないか」
「ああ。まあアンジェロのこともなんとかなってよかったよかった。もうこれからはいつもの平和な日常っすよ」
温泉に入った老人のようにフ~ッと大きく息をつきながら仗助はそう豪語した。そんな仗助を見て康一は暗い事件の渦中にあった仗助がいつものように明るく振舞っているのを見て安心した。
「そういえば仗助君、今日うちのクラスに転校生が来るらしいよ」
「転校生ィ~? 入学式の2週間後に転校生とは・・・(そういえば朝ぶつかってきた奴・・・あいつが転校生か?)」
「珍しいよね~ どんな人かな?」
「おいおい康一ィ。小学生じゃあねえんだからよぉ、そんなにワクワクするこたないぜ? もしかしたらトンでもねえやつかもしれねえぜ?」
仗助は康一の机に右手で頬杖をつき、左の人差し指で机をコンコン突きながらそう言う。
「とんでもないやつってどんなやつさ?」
「ん~っとだなぁ・・・たとえば最近流行りのアニメオタクだよ。俺ああいう萌えだなんだ見かけでものを判断してるやつが大っ嫌いでよぉ~。あとガチホモだな。最近多いらしいぜぇ。男同士の絡みを妄想して喜ぶやつ!」
「うわぁ~~~、それはドン引きだよ」
2人がそんな話をしている間に、朝のショートホームルームの時間を告げるチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。仗助は体をしぶしぶ前に向ける。
「今日、うちのクラスに転校生が入ってくることになった。億泰君、入ってきなさい」
仗助たちの担任の男性教師がドアの向こうに向かって名前を呼ぶ。するとドアが足で払うように開けられ、両手をポケットに突っ込んだ感じの悪そうな男が入ってきた。
「(あ! やっぱり朝のあいつか・・・)」
転校生は仗助の予想通り、朝方に仗助とぶつかったあの不良風の少年であった。仗助はもう1つの予想であるアニオタ、ガチホモが当たらないことを願って転校生に注目する。
「虹村 億泰(にじむら おくやす)。まあせいぜい仲良くしてくれや」
転校生はそう言うと、先生に自分の席の場所を尋ねた。どうやら彼の席は仗助の右隣に来るらしい。転校生の億泰はふてぶてしく仗助の隣の席に座り、ポケットから取り出したガムをかみ始めた。
「彼は最近この街に転校してきたばかりで、この街のことをよく知らない。みな親切に努めるように」
先生はこれで転校生の話題を打ち切ると、次の話題に移った。
「さて、東方仗助君。確か君は風紀委員(ジャッジメント)の入隊志願書を出していたな?」
「え!? あ、はいそうっす」
いきなり話を振られて仗助はあわてて返した。風紀委員(ジャッジメント)とは学園都市の学生から有志を募って結成された対超能力犯罪組織である。警察では対処しにくい超能力犯罪を専門に、選抜された優秀な学生隊員たちが事件を解決している。同じく超能力犯罪を取り締まる組織に警備員(アンチスキル)も存在するが、そちらは学園都市の大人たちによって構成された風紀委員(ジャッジメント)の上位組織である。このように学園都市では街の外ではありえないような犯罪が多発するため、犯罪の種別ごとに組織が組まれ対策されているのだ。
「この間の適正試験の結果だ。おめでとう、見事合格だ」
クラス中が拍手の渦に包まれる。仗助は誇らしい気分になりながら書類の束を受け取った。風紀委員(ジャッジメント)はこの街を守る最前線の防衛ライン。そんな仕事に就くことが仗助のかねてからの夢であったのだ。
「おめでとう、仗助君」
後ろから康一も賛辞の言葉を送ってくれた。おそらくこんなに気分のいい朝は今までになかっただろうなと仗助は思った。
「それから億泰君。君も適正試験を受けていたそうだね。おめでとう、君も合格だ。うちのクラスから2人も風紀委員(ジャッジメント)が選出されるなんて、先生は誇らしいよ」
この時、さっきまでよかった仗助の気分に何か小さなヒビのようなものが入った気がした。そんな仗助をよそに、クラス中は再び拍手の渦に包まれ、億泰はガムを膨らましながら先生から書類の束を受け取った。億泰は再びふてぶてしく席に着くと仗助を見て言った。
「まあよろしく」
億泰の口で膨らんでいたガムがパァンと弾けた。
 

「左翔太郎、22歳。仮面ライダーダブルの左側。風都に生まれ、風都に育ったと豪語するほどの風都好き。学歴は中卒。高校はデュエリストアカデミア・ノース校を受験したが落ち、それまでに超能力も身につけていなかったため性悪な能力者たちによる迫害に遭い街をさ迷い歩いていたところ、当時サテライト地区(※現在のネオ童実野(ドミノ)地区)で活動していたデュエルギャング集団、通称チームサティスファクションに勧誘され、リーダの鬼柳 京介(きりゅう きょうすけ)が逮捕されるまでのおよそ1年の間そこで活動を行っていた。その後は風都地区に戻りまた荒れ果てた生活に戻っていたが、探偵業を営んでいた鳴海荘吉に拾われ彼の弟子として働くことになる。そして彼が結果的に死ぬことになった依頼においてダブルの変身能力を得、事務所も引き継ぐことになった。そして現在に至る・・・か。これが左翔太郎にまつわる情報のすべてだね?」
「そうよ。あなたに頼まれて部下に集めさせたけど、役に立ったかしら?」
ここは風都地区にある大富豪・園崎家の屋敷。そして学園都市を裏で支配するミュージアムの総本山であるが、その事実を知る者はミュージアムの者の他にはいない。
「ありがとう。これでダブルの中身について半分はわかった」
そう言ったのはミュージアムの売人、園崎霧彦。
「そう、よかったわ」
クールに振舞っているこの女性は園崎 冴子(そのざき さえこ)。ミュージアムの幹部であり、霧彦の嫁、そしてミュージアムの首領の娘という3つの顔を持つ女だ。
「さて、残り半分。フィリップの方の情報もお願いできるかな」
霧彦はにこやか~に嫁に頼み込んだ。だが、
「それは無理よ。あなたにも踏み込んでいい領域と、踏み込んだら死が待っている領域があるわ。フィリップに関しては余計な詮索はやめてもらえるかしら?」
普段からクールな冴子だが、このときは更に絶対零度並みのクールさを放っていた。
「ああ・・・わかったよ」
さすがの霧彦の笑顔も凍りつく。
「それから、アレを持っているターゲットが見つかったわ。あなた、探してきてくれる?」
冴子は霧彦ではなく窓の外を見てそう言った。霧彦はソファから立ち上がって、
「よし、全力で探してくるよ。そして敬意とともに君へアレを渡そう。必ずね」
そう言って霧彦は街へ繰り出していった。顔にいつもの微笑を携えて。
 

放課後、仗助と億泰はいっしょにジャッジメント・杜王支部に向かっていた。
「おい、仗助。歩くのが速えーよ。この俺を置いてく気か」
仗助はそう言われペースを落とす。学校からジャッジメント・杜王支部までは徒歩でだいたい15分程度の距離だ。そして歩き始めて5分が経ったが、さっきからまったくと言っていいほど億泰との間に会話がない。仗助もなんとか会話をしようと話題を考えてはいるのだが、まったく思いつく気配がない。そもそもこの虹村億泰という男はまるで自分の身の回りのすべてを敵視しているような・・・そんな感じなのだ。まったく康一とは正反対。もっとフレンドリーでもいいだろう? と仗助は思う。まあだが仗助はどうにか頭を振り絞って、なんとか1つの質問を思いつくことができた。
「なあ、あのよぉ・・・」
「何だよ!?」
億泰はギロッとこっちをにらみつけてきた。だがここでひるんでいては何も解決しないまま終わってしまう。仗助は意を決して質問した。
「お前ってよぉ・・・まさかアニオタとかガチホモじゃあ・・・ねえよなぁ?」
まだ春真っ盛りなのに・・・氷河期でも訪れたのかと思った。こっちを見る億泰の目もなんだか若干白く見える気がする。仕方がねえじゃねえか。たとえドン引かれようとも、キチガイだと思われようとも、とにかく口を開かせなければならなかったのだ。
「なんだよ・・・お前の目には俺はそういうのに見えんのかよ?」
とりあえず口を開かせるという目的は果たせた。仗助は更にこれを会話に発展させようと目論む。
「いや、最近そういうの多いからよぉ~。これから一緒に仕事すんのにアニオタとかガチホモだったら・・・ほら、心配だな~~~ってよぉ」
「ああ、まあわかるぜ。お前の気持ちはよォ。ガチホモなんてよお、何がいいのかわけがわかんねえよな。俺小せえ頃便秘気味で毎日のように座薬入れられててよ、それがトラウマ気味で尻に入れるとか・・・うわッ! 考えるだけで怖気が・・・なァ!!」
なんだかすごく乗ってきてくれた。この調子ならいい言葉のキャッチボールになりそうだ。
「ほんとなあ。考えるだけで気持ち悪りーよな! ガチホモとかアニオタとかッ」
「・・・ちなみによぉ、お前アニオタのどの辺が悪りーと思ってるよ?」
今度は億泰の方が仗助に質問をしてきた。まさに理想の展開だ。仗助は喜んで質問の答えを返す。
「そりゃあ、萌えだのなんだのそんなくだらねえ外見だけの価値観でものを見ているってとこだな。見た目に騙されてちゃんとそのものの本質を追求しようとしない。その姿勢がむかつくんだよ」
なんだかものすごく自分の意見をすっきりコンパクトに伝えられた気がする。そんなすがすがしい気分で仗助は億泰を見た。今の意見どう思うよ? と・・・だがなぜか億泰はうつむいて両肩を震わせていた。億泰? と仗助が声をかけたとき、
「てめえに何がわかるッ!!」
突然、胸倉をつかまれた。何故だろう? 仗助は何故こうなったのか、まったく心当たりがない。
「お・・・落ち着けよ。億泰」
「どうせてめえは女の愛情をたっぷり受けて育った類の人間だろうが・・・俺の気持ちがわかってたまるかよッ!!」
億泰はそう言って仗助を突き飛ばし、さっさと歩いていってしまった。仗助は唖然としているしかなかった。億泰は女の愛情がどうだか言っていたが、あまりにも情報が少なすぎてどうしてこんなことになったのか推理のしようがない。とりあえずわかったことは、億泰がアニオタかもしれない・・・ということだった。
 
「ようこそ。ジャッジメント・杜王支部へ」
結局、仗助は億泰に少し遅れてジャッジメント・杜王支部についた。そこで2人を待っていたのはジャッジメント・杜王支部の大隊長を名乗る高校1年生、固法 美偉(このり みい)による入隊説明であった。
「あなたたちが今日から入隊する仗助君と億泰君ね」
そう言って彼女はジャッジメントの隊員である証の腕章と、隊員全員に支給されるという携帯電話を2人に渡した。腕章は常にクリップで腕に巻いておかなければならないものらしい。それよりも仗助が注目したのはこの携帯電話だ。ジャッジメント特製の物らしく、携帯電話としては異質な細長い棒のようなデザインをしていた。その側面の引っ張り出せるようになっている部分を引き出すと薄い膜状になったタッチ入力可能なスクリーンが出てきて、学園都市のあらゆる情報データベースにアクセスできるようになっているらしい。まるで昔見た怪獣映画に出てくる防衛隊のハイテクアイテムのようだ。ちなみに料金は隊員同士、および勤務時間中のみ無料だそうだ。
「早速だけど、あなたたち2人には遊撃部隊フォックスに入ってもらうわ」
固法大隊長は更に2人の配属先を告げた。遊撃部隊とはジャッジメントの中でも前線に立って戦う部隊で、犯人確保のための格闘能力に優れている者たちが送られるところである。犯人確保には欠かせない部隊であり、ジャッジメントの中では実質最も重要な部隊なのだ。特に杜王地区の遊撃部隊フォックスは、風都地区のレイヴン、ネオ童実野地区のウルフと合わせて三大最強遊撃部隊と呼ばれている。そんな誉れ高い部隊に組み込まれた仗助の気持ちは爆発しそうなほどに高揚していた。
「2人ともレベル0+αでの入隊だったわね。活躍期待してるわ」
「え!? 2人ともレベル0+α?」
その言葉が仗助の心に衝撃として訪れた。スタンド能力は一般に広く知れ渡っている常識ではない。だがレベル4以上の超能力者ならスタンドを見ることができる。だから学園都市の中でも上位能力者たちや上層部の者たちにのみスタンド能力の存在は常識として知れ渡っているのだ。そしてスタンド能力者をジャッジメントに組み入れようという動きもあり、その者たちに与えられる評価がレベル0+αなのだ。
「でも悔しいわね。私はレベル3だからスタンドを見ることはできないのよ。本当に残念だわ」
彼女は笑顔でそう話した。これで確定した。億泰は自分と同じ、スタンド能力者だ。仗助はハッとして億泰の方を見る。すると億泰も仗助と同じ表情で仗助の方を見ていた。
「・・・大隊長。俺今後のことを億泰と話してきます」
「ああ、ならあそこの部屋を使って。あなたたちフォックス第3隊の部屋はそこよ」
「ありがとうございます」
仗助は一礼して億泰を引っ張り部屋に入った。部屋にはデスクトップパソコンが1台ずつ乗った業務用机が3つと、仮眠用と思われる3階建てベッドがあった。どうやら3人で1つのチームのようだ。とすると、もう1人他にメンバーがいるはずだが今はそんなことはどうでもいい。仗助と億泰は向かい合って立つ。緊迫した空気が漂う中、仗助は口を開いた。
「お前はいったい・・・何者なんすか?」
億泰は黙っている。が、仗助は構わず質問を続ける。
「じゃあ味方なんすか? それとも・・・」
「そいつぁこっちも聞きてえぜ」
億泰がやっと口を開いた。
「こっちだってこんなところでスタンド使いに出会うなんて思ってもみなかったんだからよぉ・・・とりあえず俺はここには生活費を稼ぎにきただけだぜ」
ジャッジメントは一応月給制である。命をかけて戦ったりもするのだから対価はあって当然だ。仕事の成果に応じて特別収入もある。かなり恵まれた職であるといえるだろう。
「そうか・・・そういえば、俺は生まれつきスタンドの才能があったたちなんだけどよお、お前はどうなんだよ?」
仗助はアンジェロの“スタンドは貰った”という言葉を思い出していた。もしかしたらこの億泰もスタンドは貰ったたちかもしれない。仗助は慎重にその答えを待つ。
「俺は・・・・・・すまねえ。説明がしづらい。だから・・・今は話せねえ・・・・・・」
2人を沈黙が包み込む。気がつけば2人ともいすに座り、お互い別の方向を見ていた。何かモヤモヤとした黒い雲のようなものが頭の中にかかっている。そんな感じがしていた。これからどうしようか? そう仗助が考えていた時、
「あら? 隊長を放っておいて、2人で何を話していましたの?」
仗助の背後で声がした。何事かと思いあわてて振り向くと、そこには明るい茶髪のツインテールの少女が立っていた。仗助は驚きのあまりいすの車輪を転がし少女との距離をとった。改めて少女を見てみる。身長は150センチ前半くらい。仗助から見たらかなり小柄だ。そして有名なお嬢様学校である私立常盤台中学校の制服に包まれた体は華奢で幼かった。仗助はいきなり現れたこの少女はいったい何者かと考える。もしかしてこの部屋に住み着いた座敷童子(ざしきわらし)の類だろうか? だが座敷童子といえば和服を着ているイメージがある。この少女が着ているのは制服だ。そう言えばこの少女、自分のことを隊長と言っていたような・・・
「私は常盤台中学校1年、白井 黒子(しらい くろこ)。この第3隊の隊長ですの」
少女はそう名乗った。だがわけがわからないのは、
「どうしていきなり俺の背後に?」
そのトリックとは、
「ズバリ、こういうことですの」
黒子は懐からりんごを取り出し、それを右手に持った。その後、一瞬にしてりんごが消えたかと思うと、今度は仗助の右手にそのりんごが現れた。
「これが私の能力。空間移動能力(テレポート)レベル4ですわ」
なるほど。それでさっき部屋の外から自分の背後にテレポートしてきたのか。と、仗助は納得しながら右手のりんごをかじった。
 
3人は時刻が午後7時を回ったところで帰路についた。相変わらず億泰はガムをかみながら、仗助は支部で買った缶コーヒーを飲みながら無言を貫いている。困っているのは黒子だった。黒子が住んでいるのは常盤台中学校の杜王寮だ。さっきわかったことだが、仗助と億泰の家は寮から半径100メートル以内にあるらしい。近所にもほどがある。まあつまりはこの3人、帰る方向がまったく一緒なのだ。寮まではまだあと20分ほどかかる。今のうちにこのチームの気まずい空気を改善しなければならない。黒子はそもそも何故こんなに雰囲気が悪いのかわからないが、とりあえず何か話題を出すことにした。
「(この年頃の殿方が喜びそうな話題といえば・・・)2人とも?」
「なんすか隊長?」
仗助が無関心そうに反応する。億泰も同様だ。
「黒子でいいですわ。それよりも、あなた方2人はだいたいどのくらいするんですの?」
「何を?」
「何って、マスターベーションに決まっているじゃあないですの」
 
ブッフォォォォッ バッチイイインッ
 
仗助は飲んでいたコーヒーを思い切り噴き出し、億泰は膨らましていたガムを思い切り自分の顔面にぶちまけた。
「なっ・・・ななな何を言い出すんすかァーーーッ!!」
仗助は先ほどの無言とは打って変わり平静を保てなくなっている。
「そ・・・そうだぜ! あんたみたいな年頃の女の子がそんな話題を振るなんてよぉ!! どうかしてるぜ!!」
億泰も声を張り上げる。だが黒子はケロッとした表情で、
「いいじゃないですの。私は別に恥ずかしいこととも思いませんし。さあ盛り上がるんですの!」
こ・・・この人危ねぇ・・・・・・仗助と億泰は同時にそう思った。見た目によらず豪快で大胆というか、まるでこれでは祭りでよくある酔っ払ってやたら構ってくるおっさんだ。
「億泰、あなたは毎回何をおかずにしているんですの?」
「ちょッ・・・まさかあんたこの話題を帰るまで続ける気かよ!?」
億泰は戸惑っている当然だろう。
「当たり前じゃあないですの。さあ何ですの?」
「そ・・・その前にあんたは何なんだ!? 何をおかずにしてんだ!? あんたが言わなかったら俺も言わねえ!!」
億泰がなにか脅迫じみたことを言った。普通の女の子ならここで恥じらいを持つだろう。だが黒子は、
「私は毎晩、お姉さまをおかずにして・・・」
黒子がうっとりした様子でそう語り始めた。
「お姉さまは私の同居人(ルームメイト)で、学園都市の超能力者ランク第3位の実力者、御坂 美琴(みさか みこと)ですの。お姉さまの凛々しいお姿を見ていたらいてもたってもいられなくって・・・昨日もお姉さまの飲み物に媚薬を入れて夜のコミュニケーションに臨もうと思ったのに・・・お姉さまったら直前に気づいてしまわれて!! でもそんなお姉さまの鋭いところも黒子は大好きですわ!!」
仗助はなんだかもういろいろと突っ込みたいが、やっているうちに疲れそうなので止めた。とりあえず気づいたのは、自分の知り合いにアニオタ(かもしれない奴)とガチホモ(この場合ガチレズか?)が増えたということだった。それもたまに会う程度の奴ならともかく、よりにもよって仕事の同僚である。仗助は先が思いやられてため息をつかずにはいられなかった。
 
しかし、この時仗助が気づいていないことが1つあった。自分たちを先ほどから監視している影、園崎霧彦である。
「見つけましたよ。アレを持っている者・・・しかし、東方仗助の知り合いだったとは・・・・・・いや、これは使えるぞ」
そうつぶやいて霧彦はもうしばらく監視を続けることにした。
 
ちなみに結局3人のエロ談義は帰るまでずっと続き、仗助と億泰は黒子に引きずり出される感じでアレやコレやしゃべらされた。最後に仗助と億泰は黒子に今日話した内容を3人だけの秘密にするように念を押して帰った。
 
「ただいま・・・兄貴」
億泰はさっきの会話を思い出し、ゲンナリしながら唯一の家族である兄に帰宅を告げた。億泰に両親はいない。母親は億泰を生んですぐ死んだそうで、父親は億泰が12歳の頃に病気で死んだ。それ以来、億泰は兄と2人で親戚に食い荒らされながらもわずかに残った親の財産で生きてきたのであった。
「おお、億泰。戻ったか・・・」
兄の声が扉越しに聞こえてくる。今日も相変わらず家の中か・・・億泰はため息混じりに考える。億泰の兄、虹村 京兆(にじむら けいちょう)はハッキリ言って引きこもりだ。毎日毎日、自室に引きこもって何をしているのかは知らないがどうせろくなことではあるまい。億泰も唯一の家族だから自分が働いてなんとか養ってやっているが、兄ももう18歳だ。いい加減働いてほしい。だが億泰はそれを口に出すことはせず、
「じゃあ兄貴、後で扉の前に飯置いとくぜ」
と言って、キッチンに向かおうとした。だが、
「待て。億泰」
珍しく兄が会話を求めてきた。億泰は扉越しに耳を澄ます。
「バッド・カンパニーでお前の周りをずっと監視していたが・・・お前の新しい友人、東方仗助。奴もスタンド使いだな?」
バッド・カンパニーとは兄のスタンドの名前だ。億泰と同じく、京兆もスタンドを持っているのだ。スタンドの五感は本体と連動している。バッド・カンパニーは遠距離操作型でかなり遠くまで動かせるので、京兆はこれを使って外の様子を見ているのだ。
「ああ、びっくりしたぜ・・・だけどそれがどうかしたのかよ?」
「奴を明日うちに連れて来い。それからおまえの同僚の白井黒子とかいう奴もだ。俺が特製の手料理で歓迎してやる」
兄貴の奴、いつの間に料理なんか覚えたんだ? 億泰はそう思いながらああと言ってとりあえず了承した。兄の真意も知らないで・・・
「フフフ・・・東方仗助・・・・・・そしてその友人、広瀬康一か・・・こいつを利用するか」
京兆はそうつぶやいてほくそ笑んだ。
 
「“明日、兄貴が歓迎するからうちに来いだってよ。 By億泰”・・・か。そういえば明日って学園都市創立記念日だから休みか~」
仗助は今日貰った携帯電話を早速いじっていたら、億泰からのメールが届いている事に気づいた。学園都市創立記念日とは、呼んで字のごとく学園都市ができた日を祝っての祝日である。ジャッジメントの仕事があるだろうが、それ以外に別に用事はない。宛先の欄を見てみると黒子にも送られている事がわかった。
「まああいつには聞きたい事が山ほどあるし、せっかくの誘いだ。行くか」
仗助は了承のメールを送った。
 
次の日、ジャッジメントの仕事は午後3時に終わった。第3隊の3人はそのまま一緒に億泰の家に向かうことにした。
「億泰、今日は聞かせてもらうぜ。お前がスタンドを手に入れた経緯を」
「ああ。家だったら俺も説明がしやすい」
シリアスな様子の大男2人を見上げて黒子は、自分は完全に蚊帳の外ですのね。これならお姉さまとデートの方がよかったかもしれませんわ・・・と思ったが、そのお姉さまも今日は大事な用事があると言って出かけていった事を思い出して、なんだか残念な気持ちになった。
そんな思考を繰り返しているうちに、一向は虹村宅に着いた。虹村宅はかなり老朽化が進んでいる3階建ての洋館のような家だった。億泰が2人を連れて家に入る。
「ただいま」
「お帰り。そしていらっしゃい」
玄関には正装に身を包んだ男が待ち構えていた。
「俺の兄貴、虹村京兆だ。兄貴も俺と同じようにスタンドが使える」
億泰は2人にそう説明すると、じっと兄を見つめた。億泰自身も京兆を見るのは久しぶりだ。杜王に引っ越してきたのは兄がどうしても用事があると言ったからだが、その際も兄は姿を見せなかったし、渋々兄の言う事を了承した億泰が持っている金をすべてつぎ込んでこの家を買い、その後家具を運ぶ時になっても兄は出てこなかった。第一、兄は用事があると言っていたが引っ越してきてから兄が家を出た様子は一切ない。何のために引っ越したんだろう? そして兄貴、いい加減働いてくれと思い、億泰は見つめる視線をにらむ視線に変えた。だが京兆は意に介さず、リビングに3人を案内した。
 
「さあ、食べてくれたまえ」
億泰宅のリビングは学校の教室ぐらい広かった。洋館のような見た目の家だったが、もしかすると昔は金持ちが住んでいたのだろうか? だがそれよりも仗助が驚いたのは、机の上に乗った超巨大ケーキだった。仗助たち4人が囲んでいる円形の机はかなりでかい。だがそれを感じさせぬほどのこのケーキの巨大さ。まるで塔のように高く、机上を侵略しつくすほどに巨大なこのケーキを、億泰の兄はどうやって食べろというのだろうか? そう思っているのは黒子と億泰も同じなようだった。
「う~ん、私の手作りケーキなのだが・・・お気に召さなかったか」
そういうわけではない。せめてあんたが切り分けてくれたら俺たちは喜んで食うんだ。と、仗助は心の中で突っ込みをいれた。
「ではショーをお見せしよう。最高の舞台を整えておいたのだよ」
そう言って京兆は懐から何かのリモコンを取り出し、いくつもあるボタンの内から1つスイッチを押した。すると、部屋の奥の床の一角が左右に開き始めた。3人はえ!? という顔をする。
「億泰! お前の家はどうなってんだよ!? サンダーバードじゃあるまいし、何でリモコンで床が開くなんてよォ!!」
「し、知らねえよ!! 俺だって今初めて自分の家にこんな機能があった事を知ったんだぜ!?」
億泰も焦っているようだ。どうやらこの機能は京兆が勝手に造ったものらしい。やがて床が完全に開ききり、今度はその穴からなにやら十字架のようなものがせり出してきた。そしてそれに磔にされているのは・・・
「康一ッ!!」
何故こんなところに康一がいるのか? これは京兆が仕組んだ事なのか? まったくわけがわからない。
「じょ・・・仗助君・・・僕、外を出歩いてたらいきなりこの人に捕まって・・・」
康一はあごを振って京兆を示す。
「あ、兄貴・・・こいつはいったいどういうことなんだよ・・・?」
億泰は京兆に問いかけるが、京兆はまったく反応を示さないまま、
「さあ、最高のショーをご覧に入れよう」
と言って、懐から弓道に使う矢のような物を取り出し康一に近づいてゆく。
「お・・・おい兄貴!」
「まさか・・・それを!!」
「やっ・・・止めろおおおッ!!」
3人に緊張が走る。止めなければ・・・仗助が動こうとした時、
 
グッシャアアアアアッ
「あぅッ・・・・・・!!」
 

康一の心臓の辺りに京兆が矢を突き刺した。
「こ・・・康一ィッ!!」
仗助の叫びが部屋にこだまし、ケーキの上の方が少し揺れた。
「フン」
京兆は白目を剥いて意識を失っている康一の胸から矢を抜き取った。矢は完全に心臓を貫いていた。矢が抜かれれば康一の胸からは大量の血が・・・出なかった。
「え!?」
仗助たち3人は完全にあっけにとられていた。確かに矢は康一の胸に深々と突き刺さっていたのだ。なのにどうして・・・どうして康一の胸には一切の傷がないのか!?
「もしかして最高のショーって・・・手品でしたの?」
黒子がそうつぶやいた。だが仗助はそれは違うと思った。今の行為にはもっと禍々しい狂気のようなものが込められていた気がするのだ。そんなことを考えていると、京兆は康一を十字架からはずして地面に降ろした。すると康一も気づいたようで目を覚ました。
「じょ・・・仗助君・・・・・・僕はいったい・・・!?」
そんな康一の様子を見て京兆はニヤリと笑い、
「ハッピィヴァースディッ!!」
と叫んだ。仗助は今何が起こって、これから何が起ころうとしているのか、まったく見当がつかなかった。
 
同じ頃、園崎霧彦はある場所を訪ねていた。
「やはり風都は良い・・・この何もかも洗い流してくれるような心地よい風が吹くこの街にいると、最高に気分が良い・・・」
風都を故郷に持ち、誰よりも風都を愛していると豪語する彼はそう言って風都のとある場所のドアをノックした。しばらくしてドアが開き、若い男が顔をのぞかせた。
「はいはい、どちら様で?」
霧彦はニヤリと笑って言う。
「待っていましたよ、この時を・・・仮面ライダーダブル、左翔太郎」
霧彦が訪ねたのは鳴海探偵事務所だった。
 
次回予告
仗助「どうなってるんすか・・・康一は胸に矢を刺されながらも生き延び、億泰の兄貴は狂っていた・・・・・・黒子、億泰、ここは協力して戦うしかないらしいっすよ」
翔太郎「そして俺は、ついにこの街を裏から支配する者たちの片鱗に触れる。
次回、学園都市の日常・科学サイド『Mは手を出すな/兄貴と矢と敵の名前』
これで決まりだ!」
 
フィリップ「今日の最強ヒーローは『白井黒子』
学園都市が誇るレベル4の空間移動能力者(テレポーター)だ。戦闘では鉄矢をダーツのようにテレポートで相手に向けて飛ばすなど、テレポートを利用したトリッキーな戦い方を得意としているらしい。また風紀委員(ジャッジメント)には小学5年生から入っていて、その高い実力からジャッジメント内でも畏怖される存在だそうだ」
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使用BGM
by Joker 2012/02/04(Sat)19:20:23 Edit
※BGM1『ルンルン風都』(仮面ライダーWより)
※BGM2『初春飾利』(とある科学の超電磁砲より)
※BGM3『裏』(遊戯王5D'sより)
※BGM4『遊星たちの日常』(遊戯王5D'sより)
※BGM5『風紀委員(ジャッジメント)の活動』(とある科学の超電磁砲より)
※BGM6『オタオタ探偵』(仮面ライダーWより)
※BGM7『思惑』(遊戯王5D'sより)
※BGM8『ミステリーワールド』(仮面ライダーWより)
※BGM9『パニックワールド』(仮面ライダーWより)
※重要なお知らせ
by Joker 2010/10/21(Thu)21:24:04 Edit
Jokerのパソコンがぶっ壊れたため(現在PSPで書き込み中)、おそらく3か月は科学サイドの更新ができません。当分の休載をご了承お願いします。
なンだ今回…
by Sgt.LUKE HP 2010/10/17(Sun)03:27:07 Edit
おつかれ。えーと、Sやら下ネタやら宇梶さんやら、なんだ今回のテンション。コミカル以外のなんでもないwww
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