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~teamBDRの酒場~
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teamBDR
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男性
職業:
高校生
自己紹介:
このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
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[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!

[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。

[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。 

[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!

[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。

[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
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第7話『それは不思議な出会いなの?』


作者 luke


 上条当麻は六つの簡単なことを聞いた。
『幽波紋(スタンド)』というものがこの世には存在していること。
『スタンド』とは生命のエネルギーがつくりだす、力のある像(ビジョン)だということ。
『スタンド』はさまざまな見た目のものがあり、それに関係した特殊能力を持っていることが多いということ。
『スタンド』は一人につき一体(一種類)だということ。
『スタンド』を操作・使役できる者のことを『スタンド使い』ということ。
『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えないということ。
 そこまでをとりあえず頭に入れて、上条当麻はふと思った。
(なんで俺……さっきの『スタンド』が見えたんだろう?)
 彼は己の右手に目を落とす。
 幻想殺し(イマジンブレイカー)。
 異能の力ならどんなものでも無効化にする能力。上条の右手に宿ったその力は、もしかしたら……。
(もしかしたら、スタンド能力なのかもしれないな……)
 そうなると上条の人生上、彼にとって最も謎なものの一つであった右手の能力(イマジンブレイカー)の正体が判ることになる。魔術でも超能力でもないと言われてきたその右手の能力に、ようやく種類(ジャンル)付けすることができるのだ。まぁ、まだ推測に過ぎないが。
 上条は息をついて、一旦思考を終わらせる。
そして、言う。
「おいお前ら。呑気にナニしてんだ……?」
 彼の視線の先には。
 一斉に紅茶をすするギャング達の姿が。
「なにって」ジョルノはカップから口を離し、上条の方に顔を向ける。
「紅茶を飲んでるんです。見てわからない?」
「いや、そういうことを言ってるんじゃあない」
「じゃあ何だよ?」ミスタも上条の言葉に食いかかった。
「だーかーらー」上条は頭を掻きむしりながら、「さっき敵がいただろ? そして逃げただろ? おわかり?」
「はいわかります。それで?」
「『追わなくて良いのか』って言ってんだよッ‼」
 ぜーぜー、と息をする上条。なんだコイツら? 真面目に会話する気あんのか? と少年は困惑する。
 対してジョルノは冷静に、大丈夫ですよ、と。
「心配はいりません。さっきミスタが撃った弾丸は特殊なペイント弾なんだ。当たると、その個所に黄緑色の塗料がたっぷり付くんですよ」
 金髪の少年はさらに余裕そうに、
「まぁそれはカモフラージュなんですけどね。本当はその弾丸が発信器になっていて、ほら、このとおり」
 上条は彼が取り出した手のひらサイズのレーダーを呆然と眺めた。
 ジョルノがミスタにアイコンタクトを送ると、ミスタは親指を立てて、
「確かにヤツの足に着弾させたぜ。これで万が一ヤツを見失っても、ヤツが歩いたトコには黄緑の足跡がつくし、人ごみの中でも足を見りゃあ一発でわかる。目立つからなぁ」
「……、素朴な疑問を一つ」
「なんだい?」
「靴、脱がれたらどうすんの?」
「それも大丈夫。脱ごうとしても脱げないんですよ。塗料が塗りたてのペンキのようにひっつくからね。まぁ、相手に足を切断する根性があれば話は別ですけど」
「それでもいけるぜジョルノ。そんなことしたら余計目立つし、滴(したた)る血で追跡(マーキング)できる」
「なんかおぞましいな……」
 お昼過ぎ。ギャングの男、ブローノ・ブチャラティに呼び出しを喰らった上条当麻は、ブチャラティの仲間達がいるレストランに連れて来られた。ジョルノの言っていたとおり、ブチャラティの仲間達からは『かなりキツめのジョーク』をかまされたりしたものの、どうにか彼らと上手くやっていけそうな雰囲気だった。
 が。
 その時、事件は起こった。
 上条は少し不安げな表情を浮かべて、改めてジョルノに訊く。
「さっきやって来たヤツって、本当にその『スタンド』で正しいのか? この街は科学の最先端を走ってる街だから、どんな変なものが来たっておかしくない」
「いえ、あれは確かにスタンドでした。スタンドの見た目には特徴があるし、なにより『スタンド使い』でない人には見えない。誰も騒ぎを起こさなかったということは、ほとんど誰も見えていなかったんでしょう」
 ジョルノの言葉は自信に満ち溢れていた。
 彼がここまで言うのだから、先程の怪人の正体はスタンドなのだろう。それを操る『スタンド使い』がどこかにいることも解る。となれば、そのスタンド使いはどこかの組織の者なのか、何を目的にやってきたのか、など様々な疑問が浮かんでくる。もしかしたら、上条『お得意様』の魔術師かもしれない。
 とりあえず、行動を起こさなければわかる事もわからない。上条はそう決心して、ブチャラティに声をかけようとしたした――その時、
 コホン、とブチャラティは一つ大きな咳払いをした。

「!」
 全員、彼へと視線を向ける。ブチャラティはそんな一同の顔を大まかに見渡して、
「さっきの不審者。たしかにスタンド使いで、俺達になんらかの因縁を持っていたように思う。放ってはおけん。これからどうするかは……わかるな?」
 全員一斉に頷いた。
「ヤツを追うッ! そして何を目的に俺達のところへ来たのか吐かせるんだッ!」
 ビリッ、とその場の空気に緊張感が漂った。
 ブチャラティは一同の目を順番にしっかりと見据え、
「まずは不審者の追跡。それは俺とミスタと」
彼は視線を現在の位置からずらして、
「上条当麻で行う」
 上条の方へやった。
(え……ちょ、待てよ? なんだって?)
 上条はぱたぱたと手を動かして、
「し、質問!」
「なんだ? できれば後にしろ」
「今言わせていただきたいのです!」
「じゃあ早く言え」
 少年は一つ息を吸って、
「どうして、俺がその追跡班になってるんだよ!」
 一応、このメンバーの中で上条当麻は部外者だ。たまたま今日このレストランに居て、今の状況にはち遭わせたとはいえ、おっかない事に巻き込まれるのはごめんだ。それに、上条は戦闘のプロではない。もし仮に相手が特殊な訓練でも受けた戦闘のプロフェッショナルだとしたら、おそらく歯が立たないだろう。
 と、そんな上条の心情を読み取ったかのようにブチャラティは、
「たしかにお前は部外者で、できれば俺達の世界に関わらせたくはない。だが、今回この現場には上条当麻『お前』がいた。いつもならなんて事のないこのレストランだが、お前がいた今日に限って今の事態が起こった」
 彼は一呼吸おいて、
「つまり上条当麻。お前に関係があってヤツは来たのかもしれないということだ」
 直後、フーゴが訝しげに言う。
「そういえば、ヤツがやって来る直前まで僕たちは『禁書目録』の話をしてましたね。もしかしたらヤツは彼女を狙って襲撃にきたのかも」
「で、でもさ」少年は慌てた様子で、「今回たまたま、偶然かもしれねぇだろ? なにを理由にそんなこと」
「あぁ。たしかに偶然かもしれない」ブチャラティは片方の目を閉じて、
「だが今回はそれを『偶然』と捉えるのは危険だ。なんせ彼女と関係の深い『お前』がいるんだからな」
「…………」
 上条の背筋にひんやりした汗が伝う。もしフーゴの言った事が正しければ、インデックス――彼女が危ない。
「なぁジョルノ」
「どうしたんですナランチャ?」
「その追跡してるやつのさぁ、現在地を照合してくれよ。そのレーダーじゃあヤツの動きはわかっても、現在地まではわからねぇだろ?」
「そうですね。じゃあやってみましょう」
 ジョルノは携帯電話を取り出すと、学園都市の地図を表示した。
彼は無言でレーダーと地図、互いを交互に見あわせて、
静かに、一つ言った。
 
 
「……ドンピシャですね」
 
 
 全員の視線がジョルノへ向いた。
 ジョルノは、いいですか? と目で合図を送って、
「ヤツが今向かっていると思われるのは第7学区の学生寮の一つ。さっきまでの会話の推測が正しければ、ヤツは今そこへ行こうとしていると考えるのが妥当でしょう」
 金髪の少年は顎で指す。
「上条当麻。君の住居にね」
(…………)
 上条は無言で己の右手に視線を落とす。
 そしてそれを、ぎゅう、と握りしめた。
 少年は何も言わず、ブチャラティに拳を突き出した。言葉はいらない。それだけで十分だった。
「よし!」ブチャラティは眉を寄せて、
「追跡はさっきのとおり、俺とミスタと上条当麻でやる。周囲の捜索はジョルノとナランチャ。フーゴとアバッキオは念を入れてここで待機だ」
 勢いよく、店のドアが開け放たれた。
「時間がないッ! 全員確実にやってくれッ!」
 
 
 
 ごおんごおん、と風車の回る音がする。学園都市は消費電力のほとんどを風力発電でまかなっているため、街のいたるところに風車が設けられているんだ。わかるだろう? そして、この街には学生が下宿するための『学生寮』がいくつもある。
寮のバリエーションはなかなか豊富であり、おしゃれで豪華なものもあれば、もちろんさびれてこじんまんりとしたものまで多数にある。その寮の質は基本的に生徒の在籍している学校で決まり、たとえば常盤台のような超エリート学校ならば豪邸のような寮に下宿することになる。うらやましいかぎりだ。
そんなバカでかい常盤台の寮に比べて上条当麻の寮は『見劣り』なんて言葉では足りないくらい見劣っている。
一般的なマンション(それも安い方)のように白く塗られ(ところどころ塗装ははげている)あまり調子の良くないエレベーター(冷房はついていないので夏場は蒸し風呂状態)が一つ。これといって特徴も無く、冴えない使用だ。
だが、なんのおもしろみも無いその寮――正確には上条当麻の部屋の前に、かなり風変りな二人の人間が立っている。二人はなにやら、かなりマニアックな話をしているようだ。
一人は真っ白な修道服に身を包んだ小柄な少女。珍しい銀色の髪で、鮮やかな緑色の目が特徴的だ。
もう一人は前者とはうって変わって巨大な男だ。二メートルほどの背丈で、真っ黒な、神父なんかが身につけている服を着ている。だが、彼の肩に届くほどの髪は真っ赤に染め上げれ、右目の下にはバーコードのタトゥーがあり、両の指すべてに指輪がしてある。そして、極め付きにはタバコだ。彼の手元からは煙が上がり、吐く息には白い煙が混じっている。一体なんたるけしからん神父だろうか。
と、白い修道服の少女は顔をしかめながら、
「うぅー。その煙は苦手なんだよ」
「……すまなかったね。今は止しておくよ」
 赤毛(ガラの悪い神父)、意外に素直。彼は手に持っていたタバコをささっと携帯用の灰皿にしまった。
「で、話を戻すが――」赤毛の神父は外の景色に目をちらつかせながら、「『法の書』が盗まれた。これはどうやら本当らしい。僕もはじめは嘘だと思っていたんだが、ローマ正教の動きのいきさつを見ているかぎり嘘だと思えなくてね。で、君に万が一なにかあるといけないからご同行願いたいってわけだ」
「……ふぅん」
 法の書。それは、二〇世紀最高にして最低な魔術師、『アレイスター・クロウリー』が記した書物で、なんでも『天使』を地上に召喚させる方法が書いてあるとか。現在はローマ正教という、世界一規模の大きい宗教派の管理下にある。
オカルトの世界とはなんとも不可思議である。『天使』というのは神話や聖書における神の使いで、その力は人間など軽くひねり、この世の法則といったものまで変革させることができるのだという。なんというチートぶりであろうか。
 しかし、その正体は謎に包まれている。いや、包まれすぎている。なんといっても、誰もその姿を見たものはいないのだから。それは絵本に出てくるようなルックスで煌々しいオーラを放っているのかもしれない。もしくは、どこにでもいそうな人間の姿をしていて、もしかしたら何食わぬ表情で人間の日常に紛れ込んでいるのかもしれない。とにかく、真相は不明だ。
「でもさぁ、『法の書』が単品であっても何の価値も無いと思うんだけど? たしかに、あれは天使の術式を使うことができると言われる代物だけど、なんせ内容の解読ができないんだよ」
「それはこっちも重々承知さ。なんだったか……、たしか、文字とは言い難い記号のようなモノで書かれているんだったかな?」
 たしかに、と赤毛はそこで一拍置いて、
「それじゃあ『法の書』は何の意味も為さない。読めない本など、子供の落書きと大差ないからね」
「じゃあ……なんでそんなものを?」
「きまってるじゃあないか」
 赤毛は怪訝そうな表情を浮かべた白い少女に、まるで説き聞かせるかのようなトーンで言う。
 
 
「現れたからだよ。あの『法の書』を解読できる者が」
 
 
 ズギュウウウンッ!
 衝撃。白い彼女のその顔は驚きと不安を隠せない。まるで、望んでもいない相手にファーストキスを奪われたかのような、そんな表情だった。
 意外。まさに意外。
 白い少女はおそるおそる問う。
「それで……、その『解読者』はどこに?」
「『法の書』とともに盗まれたよ。誘拐――いや、この場合は奪取というべきかな」
 人をさらうことを一般的に誘拐と言うことが多いが、正確には誘拐とは言葉や物でおびき寄せることを指す。対して、強引にさらうのが奪取だ。両方を合わせて奪拐(だっかい)とも言ったりする。
「奪取した相手はわかっているの?」
「まだわからない。なんせ、盗まれた側のローマ正教でさえまだ正確に特定できていないみたいだからね。僕達『イギリス清教』の人間が知る由(よし)もない」
 赤毛は苦い物でも噛んだかのような表情を浮かべた。不安なのだ。一見余裕そうな彼でも。『法の書』とは魔術業界の中じゃあトップクラスの危険物。だが、誰もその力を使えないから良かった。
 しかし、もうそうはいかない。誰かが手に入れようとするだろう、その圧倒的な力を。
「……これからどうするつもり?」白い少女は言う。
「そうだね。とりあえずはローマ正教の人間とコンタクトを取るつもりだ。もちろん、アポはとってあるよ。今から合流場所に向かう」
「で、私も一緒に来いと?」
「そうしてもらいたいな。さっきも言ったが、君に何かあると困る。今だって早くしてほしいくらいだよ。今さっきの会話を、誰かに聞かれていたら厄介だからね」
 と、赤毛が言った直後。
 コツン、と。
彼の背後から、地面を鳴らす靴の音がした。
(…………!)
 
 
「くそ~。どこいったんだよあいつら!」
 ……沈黙。彼の言葉に対する返事はない。
上条当麻は一人ぼっちであった。
「ったく! 一緒に行動するって言っておきながら、ほって行くヤツがあるか!」
 少年は一枚のメモ用紙にむかって怒号を飛ばす。
 それはほんの三分くらい前の出来事であった。
 
 
「なぁ……、ちょっといいか?」
 上条当麻の声に、彼よりも二歩ほど先にいるブローノ・ブチャラティとグイード・ミスタは振り返る。
 現在三人は上条の家(オンボロな寮)にむかっているところだ。彼らが今居る位置から上条の家はもうしばらく行ったところに建っている。三人のいる通りにはベンチが一定の間隔で並んでいて、すぐそばには公園がある。
「どうした?」ブチャラティは上条に問う。
続けてミスタも「なんだよ? 時間があんまり無いってさっき言ったろ?」
「あぁ悪い。でもさぁ、どうしても済ませたい用事ができちまったんだ」
「どうしても済ませたい用事? それは本当か?」
 ブチャラティは軽く眉間にしわを寄せた。
「まぁ、な。あ、でも大した用事でもないかも」
「どっちだよ」ミスタはすかさず突っ込む。
「とりあえずだ」ブチャラティは腕に巻きつけた時計を見て「こんな話に時間を割いていることがタイムロスだ。用件があるなら早く言え」
「あぁ……、わかった」
 コホン、と上条は一つ喉を鳴らして、
「実はさぁ、さっきから腹が痛くてさ。その、……トイレ行っていい?」
 ビュウ、と。見計らったかのようなタイミングで少し強めの風が吹いた。
 ミスタは少し言いにくそうに、
「その、それはよぉ……どれくらいで済む?」
「五分もあれば十分」
「いや駄目だ」ブチャラティははっきりした口調で「三分で済ませ。三分で!」
「お、おぉ。サンキュな」
 上条は軽く礼をすると、すぐそばにある公園へ駆けて行った。どうやら彼は公園のトイレで用を足すつもりらしい。
 そんな少年の後ろ姿を、二人は黙って見ていた。
 ビュウ。もう一度、すこし強めの風が吹いた。
「…………」
「…………」
 二人は無言のまま、互いに顔を見あわせた。
 そして、頷(うなず)く。二人同時に。
 ブチャラティは身につけている派手な柄のスーツの内ポケットからペンとメモ帳を取り出した。束から一枚だけちぎって、さらさらと何かを書いていく。
 書き終わると、その場にあった掌(てのひら)サイズの石を文鎮代わりにして紙を固定した。これで風に飛ばされる心配もない。
 ブチャラティはペンとメモ帳をポケットへ戻し、無言でミスタの顔を見る。ミスタも彼の視線に黙って頷いた。
 二人は上条の寮へと駆けだした。
 
 
「約束どおり三分で済ましてきただろうが。待てやそれくらい!」
 なにもない空にむかって少年は叫ぶ。おそらく気を落ち着けたいのだろう。適応規制というやつだ。
 周りには誰もいない。大人はもちろんのこと、公園だというのに子供も一人もいない。上条の周囲の空間は上条だけの空間になっていた。
 はぁぁ、とため息をつく。ため息をついて、少年はメモ用紙に書かれた文字を見た。
『defecation outside』
英語だ。なるほど、彼らはおそらく上条にはイタリア語はわかるまいと思ってご親切に英語で書いてくれたのだろう。だが、上条には英語もわからない。サッパリだ。そう、彼の英語力は歯に詰まったクラッカーのカスほどもない。
「どういう意味……?」
 仕方ないので上条は携帯電話の翻訳ソフトを使って意味を理解することにした。ぱちぱちぱち、と慣れないアルファベットをぎこちなく打ち込んでいく。
「よし!」
 入力し終え、日本語訳が表示された。と、画面には――
 
 
『defecation outside』→『野糞』
 
 
「……………………」
 ビュウ、と風が吹いた。同時に上条はものすごい速度で携帯電話を折りたたんだ。
「あいつらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼」
 
 
 コツコツ、と。靴の鳴る音が近づいてくる。
 赤毛の神父は身を構えながら、ゆっくりと振り向く。彼の視線の先には二人の男がいた。一人はおかっぱのような髪型で派手なスーツを着ており、もう一人は頭全体包み込むような帽子をかぶり、ヘソを出したラフな格好な男だった。
(…………)
 両者とも肌が白く、彫りが深くて鼻が高い。コーカソイドの特徴だ。なるほど、見るからにして二人の顔つきは日本人ではない。おそらくは欧州の出身だろう。
 訝しげに眉をひそめて、赤毛の男は問う。
「なにかな、君たちは?」
 神父の言葉に二人の男は足を止めた。
「なにって」帽子の男が答える。「俺たちはちょっと――そう、そこの白い修道服の女の子に用事があってきたんだがよぉ」
 彼は赤毛の隣に立つ少女を顎で示した。と、おかっぱの男も間髪入れずに、
「悪いが俺たちは急いでいる。事情は移動しながらで説明する。とりあえず、今は俺達と来てほしい」
「断る」
 ピシャッ、と赤毛は二人に言い放った。彼は続けて、
「自己紹介もしないでいきなりこの子をナンパするなんて良い度胸じゃあないか。悪いが、この子は僕が責任を持って守ることになっているんでね。そう易々と引き渡せないんだな」
「……そうか」
 おかっぱの男の声は深い息を吐くようだった。
「ならよぉ」帽子の男は軽い口調で「護衛のアンタを倒せば、その子連れて行かせてもらえるわけ?」
「よせ」と。おかっぱの男は帽子の男に一喝して、「俺達の目的は奪取じゃあない。最も安全で紳士的な方法を取るつもりだ。物騒な事はするんじゃあないぞ」
 へーい、と帽子の男は不敵な笑みを浮かべて返答した。
 おかっぱはコホン、と喉を鳴らす。
「話を戻す。すまないが、本当にその子を引き渡してほしい。おそらく、彼女には危険が迫っている。そしてそれが引き金で事が重大になる可能性が大いにある。先の危険は未然に防いでおきたい」
 彼の表情は真剣そのものだった。
 そんなおかっぱを見て、ふぅんと赤毛はとりあえず納得する。
「君の気持は大体伝わったよ。でもさぁ――」赤毛はタバコを取り出し、火を付けて、「君みたいなケンカっ早いヤツの願いは呑めないね」
「なに?」おかっぱは眉を寄せて、「そうか? ケンカが好きなのは俺じゃあなくて、むしろお前だと思うんだが」
「そうかい?」
「あぁ」
 同時に両者、くすっと笑った。そして瞬間、
 
 
 宙に炎と消火器が舞った。
 
 
 ボゴォンッ、と。激突した両方の攻撃は、炎が消火器を焼き、焼かれた消火器が霧を吹きあげ炎を鎮める。
 一瞬の光景に白い少女は「ひっ」と短い悲鳴を上げ、帽子の男は口笛を鳴らした。当事者の二人は忌々しげに顔を歪める。
「ナイスキックだよ。腹立たしいがね。君、母国は?」
「イタリアだよ。」
「どうりで」
「今度ピッツァでもごちそうしようか?」
「それは嬉しいねぇ。うまいのをよろしく頼む」
 二人の会話は非常に楽しげだ。だが、彼らはまったく笑っちゃあいない。両者とも深々と眉間にしわが寄っている。
 一体、さっき何が起こったのか?
 炎と消火器。ぶつかったのはこの二つだ。炎が消火器の外部を焼いたことで消火器は破損し、中身が飛び出て火を消した。と、まぁこれは互いが激突したことで起こった現象であり結果だ。
 となると、この二つのもの――炎と消火器はどこから出てきたのか?
 
 まず炎だ。二物が炸裂した直前の会話。そのとき赤毛はタバコに火を付けていた。そして直後、二つは激突。炎は赤毛のほうから噴き出ていた。よって、これは赤毛の攻撃と捉えて間違いないだろう。だが、タバコごときで消火器を傷めるほどの火が出せるのか? 無理だ。タバコの火は微弱なもの。消火器にダメージを与える程のものにはならない。
 ではどうやって弱々しいタバコの火を火炎に変化させたのか? その方法はある意味、彼の特権だ。
 赤毛の男は魔術を扱う専門家。すなわち魔術師なのだ。彼の神父のような服装といい、二人の男が来るまでの白い装束の少女との会話といい、それに結びつく要素が存在している。さらに、彼は唱えていた。タバコを取り出す際のほんのわずかな時間に、魔術的な意味を含む特殊な言葉を。それによって彼の持つタバコはいわば簡易火炎放射器に変化したのだ。
 では消火器はどうか? なにしろ双方の激突は一瞬のものだった。もちろんおかっぱ頭の男は消火器を手に持って構えたそぶりは無い。というより、さっきの会話からして彼は己の足元の消火器を思い切り蹴飛ばしたのだ。本当に良いキックである。
 しかしながら疑問が残る。重たい消火器を蹴り飛ばしたのは彼の超人的キック力が為し得たものだとしても、そう簡単に消火器は破裂しない。なんせ火災用に作られた物なのだ。すぐに壊れるようでは役に立ったもんじゃあない。ということは、彼も消火器の中身が噴き出しやすいように何かをしたのだろう。
 とりあえず、先程起こったことにだいたいの説明はついた。そして、現時点で確実にわかったことが一つある。
 睨みあう両者が一瞬も見せる事のない不安や焦りといった表情――そう、彼らはまだ手の内を明かしていないのだ。
 つまり、今の派手な一瞬はほんの余興・前座にすぎない。

「――ちゅーわけや」
 と、いつのまにか帽子の男の隣にいた一人の少年が流暢に説明した。高校生くらいのその少年はなかなかの長身で肌がやや黒く、キャップ型の帽子をかぶっていた。
 少年は大阪弁――それも使い慣れた滑らかな口調で、
「ざっとこんなもんやな。どうや、わかったか兄ちゃん?」
「あんたすげぇな。よく今のが一瞬でわかったもんだ」
「こんなもんくらい朝飯前やで……っと、あ、そろそろマズイか?」
 少年の携帯電話から着信音が鳴る。彼は慌てて、
「ほな、俺はここらで。また会うたら、そん時はよろしくな」
 手を振りながら、彼は去って行った。帽子の男は呆然とそれを見送る……と。
「……ん?」
 己がその場にいる全員から視線を浴びていることに、帽子の男は気付いた。
 彼は戸惑う様子も何もなく。
「誰だアイツ?」
 ………………………………。
 知らないヤツかよ! と全員がそう思った。


TO BE CONTINUED


次回予告
おかっぱの男「俺は基本的にスポーツではディフェンス時、チェスでは後攻のほうが好きだ。あと、セックスでは『受け』のほうが好きだな」
赤毛の神父「わかった。オーケーだよ。僕は『攻め』だね? 良い声で鳴かせてやるッ‼」
白い少女「(どうなっちゃうんだろう……? これから二人は)」
謎の高校生「お前ら何やってんだッ‼」
次回の学園都市の日常・魔術サイドは第8話。お楽しみに!
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