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このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
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[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。

[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。 

[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!

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第6話 『微笑みの超電磁砲』


作者 Luke


 時刻は午後二時。学園都市は特にいつもと変わらない風景である。
 ゴオンゴオン、と街中に設置された巨大な風車が回っている。これは風力発電によって絶えず電気を作っているのだ。風力発電による電気生産量は通常ならあまり期待できないが、数が多いと話が違う。そう。学園都市中にはびっしりと風車が設置されている。
 そんな穏やかな午後の街中、緩やかに回る風車とは対照的に、街のとある裏路地はピリピリとした緊張感が張り詰めていた。
 びゅう、と一つ大きな風が吹いた。
 その裏路地には高校生くらいの男三人と、その男達より少し幼いくらいの女の子が一人何やら話している。女の子は裏路地の行き止まりを背にするように立っており、男三人は彼女を囲むような形で立っていた。
 男の一人が少女にむかって言う。
「おいアンタ、いい加減意地張ってないで助けを呼んだらどうなんだよ? まぁもっとも、この場所じゃ誰も気が付かねぇか」
 学園都市の裏路地は暗い。この街の建物は比較的背が高いため、日の光をシャットアウトしてしまうのだ。よって表通りの人々は裏路地の出来事にあまり気が付かない。また、日光が入らないため、現在のような午後の時間帯でもひんやりしている。
「さっきから言ってやってるだろ? 俺達とお茶してくれるだけで良いんだよ。素直について来てくれたらナニもしないって。よぉ、『常盤台』のお嬢様」
 男が口にした『常盤台』というのは、常盤台中学校の事だ。
 常盤台中学校。
超能力開発を教育カリキュラムに組み込んだ学園都市において、超能力開発トップクラスの実績を誇る女子校である。具体的な実績を挙げると、約二三〇万人の人口を擁する学園都市でわずか七人しかいない『超能力者(レベル5)』を二人も輩出し、その他にも『強能力者(レベル3)』以上の優秀な人材を数多く育て上げてきた。というより、レベル3以上の者でなければたとえ王族であっても籍を置く事が許されない。つまり、『エリートの為のさらなるエリート校』なのだ。故に幼いころから英才教育を施されてきた、いわば『お嬢様』が数多く在籍しているため、世界有数のお嬢様学校と化している。『世界有数のお嬢様学校』の名に恥じぬ広大な敷地をはじめとし、専用スクールバスの運行はもちろんのこと、様々な設備の完備などその徹底した教育ぶりは他の学校の追随を許さない。
「……」
 少女の肩まである茶色い髪が、裏路地を吹き抜ける風によって靡(なび)く。
 彼女が着用している制服は、ベージュ色のブレザーに紺色系チェック柄のプリーツスカート。満員電車の中であってもひときわ目立つ常盤台中学校の制服である。
俗に『お嬢様学校』といわれる学校の生徒は、比較的強引なナンパの被害に遭いやすい。だから彼女達は一般人が寄り付かないような界隈で放課後や休日を過ごす事が多いのだが、どうやらこの少女はそんな事を何も気していないらしい。現に、今も腕を組んだまま恐れ一つ見せない表情で立っている。
そんな彼女に、男の一人は少し苛立った様子で、
「なぁ、俺達と一緒に遊んでくれよ。こんなに必死に頼んでんだぜ? それとも、マジで痛い目に遭いたいのか? あのなぁ、俺たちだって男だ。やたら滅多に女の子に手を上げたいとは思わない。だからよぉ、早いことオッケーしてくれよ」
「……、」
 しかし、少女は黙ったままである。
 と、少女は大きく息を吐いた。はー、とたっぷり五秒もかけながら。彼女は軽く首を鳴らし、男達を見据えて、
「ったく、しつこいのよアンタたちは。こっちは一回拒否反応示してんだからさっさとどっかへ行きなさいよ」
ゴゴゴゴゴゴ、と。裏路地特有の涼しげな風が、激しく音を立てる。
彼女の台詞に、男達の眼の色が変わった。
「ヘッヘッヘッヘッヘ。ついてねぇなぁアンタ」男の一人は獰猛に笑って、「俺たちは三人とも『異能力者(レベル2)』なんだぜ。いくらアンタが常盤台のお嬢様だからといって、束になられちゃあ敵いっこないよなぁ?」
 学園都市とは超能力開発をカリキュラムに組み込んだ街である。だが、実際全体の六割程は、脳ミソがブッ飛ぶくらいヘヴィな事をしたってなんの能力も無い、いわば『無能力者(レベル0)』ばかりなのだ。彼らはそんな中でのレベル2。はっきりいって上出来のほうだろう。
 そして一概に『超能力』といっても、真に『超』の烙印を押してもらえる者――レベル5は学園都市内にたったの七人しかいない。少女が籍を置く常盤台中学校には、そのトンデモすごい奴が二人もいるのだが、あとは大体レベル3(これでも十分すごい)。『大能力者(レベル4)』だって決して多くいるわけではない。
 続けて、三人の一人は腕を回しながら、
「どうやらアンタ、痛い目見たいようだな。ちょいと手荒くするが、なに、大人しくしとけば問題ない。俺達だって『鬼』じゃあないからな」
「おいおい、『三対一』じゃあ話にならねぇよ」
 言って、彼らは愉快気に笑った――――瞬間。
 ブチリ、と。
 少女のこめかみ辺りから、なにやらオモシロイ音がした。
 常盤台中学校の生徒とはいっても、その大半は先述のとおりレベル3である。彼ら三人はレベル2。能力の内容にもよるが、『三対一』では普通、先者のほうに軍配が上がる。基本はどこの世界だって『多勢に無勢』なのだ。
 仮にも、後者に軍隊とまともに戦えるような能力があれば話は別だが。
「あー、もう!」
少女はイライラした様子で言う。
「しつこいっつってんでしょうがッ!」
 刹那。
 少女の前髪から青白い光が散った。
 バチン、と。その光は槍のように、一直線に三人の内の二人に命中した。
 一瞬の出来事である。まさに光の速さで放たれた青白い光を避けられるはずがない。直撃を喰らった男二人の意識は飛び、そのまま地面へと倒れた。

「え……あ……?」
 残された一人は驚きのあまり言葉を出せずにいる。おそらく、何が起こったのか頭の中で整理できていないのだろう。
普通、『三対一』では三のほうが勝つ。理由はいろいろとあるが、最もシンプルな事を言えば『数が多い』からだ。
 しかし、今回のケースではその理論は適用されない。
 少女の名は御坂美琴(みさか みこと)。
 人口約二三〇万人の学園都市における、たった七人のレベル5の一人であり、その七人の中の第三位。能力は『電撃使い(エレクトロマスター)』。故に付いた通り名が――
『超電磁砲(レールガン)』。
 少女――御坂美琴のこの二つ名にはもう一つ由来がある。それは美琴が能力を用いて、名前の通り『超電磁砲(レールガン)』を放つ事ができることにある。もっとも、今彼女の目の前にいるレベル2の男になど使ったりしないが。
「くそ!」
 残された一人の男は迷うことなく美琴めがけて突っ込んだ。彼はあまりにも簡単に仲間が倒されたため、ヤケクソになっているのだ。だが相手はレベル5。それも七人のうちの第三位。つまりそれは『総人口約二三〇万人の第三位』ということでもある。正直勝ち目はない。
 御坂美琴はわずかに目を細める。バチン、という火花の音が響いて、
 
 
 ゴン、と。
鈍い音と共に、男は気絶した。
 
 
 へ? と彼女は間の抜けた声を出した。普通、電撃を喰らわせても、なにか硬い物で殴ったような鈍い音などしない。というか、彼女はまだ電撃を放っていない。
 これは一体どういうこと? と美琴は首を傾げる。ついさっきまで照っていた太陽が陰ってしまったため、裏路地の様子が暗くてよく見えない。
 バチッ、と指に小さな青白い光を灯す。と、そこには――
 一人の少年が立っていた。
「まったく。三人がかりで女の子一人相手に何やってんだか」
 呆れたようにその少年は、すっかりのびてしまっている男三人にそんなことを言っていた。
 少年はちょうど美琴と同じくらいの年齢だと思われる。まだ少し幼げな顔立ちが、そのことを物語っていた。
(……、ん?)
 美琴はまだ顔の良く見えない少年に視線を向けて、訝しげに眉をよせた。
(アイツ、なんっかどっかで見たことあんのよね……)
 ちょっとモヤモヤする。
 美琴自身、視線の先にいる少年を知っているのかどうかわからない。会って喋った事もあるのかどうかわからない。だが見覚えはあった。
 少し遠い、記憶の中で。
(ほんと誰だっけ……アイツ? どっかの研究施設ででも会ったかしら?)
わからないからこそ、今の空模様のような心に出来た曇りが晴れない。
 と、彼は美琴の視線に気付いたのか、美琴の方へと歩み寄って来た。
 歩きながら少年は言う。
「あんた大丈夫? 残ってた一人は俺が軽めに殴っといたけど、二人はあんたが倒したんだろ? すげぇな」
 少年の声も聞き覚えのあるものだった。しかし、まだいまいち美琴の中の欠けたパズルのピースはかみ合わない。
 コツコツ、と。歩みよる音がだんだん近づいてくる。
「…………」
 美琴は何も言わない。あえて。
 少年が美琴のほぼ目の前のあたりまで来た途端、
 ぱぁ、と。隠れていたお天道様が、再び姿を現した。
「「…………、」」
 路地裏に眩しい光が入り込み、互いの姿が露わになる。が、美琴は急に目に入りこんだ陽の光のせいで思わず目を閉じてしまった。
 数秒の間。そして。
「あれ? お前もしかして美琴か?」
 へ? と予想外のセリフに美琴はゆっくり目を開けた。
 たしかに会ったことはある気がした。だが記憶上、自分の名前を、それも呼び捨てで呼ばれるような親しい間柄ではなかったはずだ。
「ん……?」
 開いた視界の中に、少年の顔が映った。
「……、まさかアンタ――」
 そこで。
 かちり、と。己の中の欠けていたパズルのピースがかみ合った。
 美琴は心底驚いた声で、少年の名を口にした。
 
 
「浦飯幽助(うらめし ゆうすけ)?」

 

 時刻は午後二時過ぎ。学園都市は特にいつもと変わらない風景である。
 暖かな日差しが街を照らし、柔らかいそよ風が包み込むように吹いている。気持ちの良い、春の昼下がりだ。
「んー、良い天気」
 人々が行き交う街の中、路地裏から出た御坂美琴は表通りのベンチに座りながら、大きく伸びをした。彼女にとっても快適な午後のようだ。
 美琴が座るベンチには彼女自身と、もう一人そこへ腰を下ろす者がいた。一般的なスラックスの学生服を着た少年だ。
 ちらっ、と美琴は横目で隣の少年の顔を見る。
(浦飯幽助かぁ……。随分とまた懐かしいヤツに出会ったわね)
 浦飯幽助(うらめし ゆうすけ)。
 年齢は美琴と同じ一四歳。身長は彼女より少し高く、上条当麻よりは少し低いといったところだ。黒髪で、剃り込みが入ったオールバックの髪型が特徴的である。
 彼は雲一つない空を仰ぎながら、
「それにしても久しぶりだなー。二年ぶりくらいか?」
 対して美琴も空を見上げて、
「そうね。大体そんなもんかしら。なんせ、小学校以来だもんね」
おぉ、と幽助は少し驚いたような声を上げた。
「もう二年も経つのかぁ。いやー、時の流れって早いもんだな」
「そう? 私には十分長かったわよ、二年」
「そりゃあお前は『常盤台中学校』なんて大層な学校に行ってるからだろうよ。お前だけだぜ、俺達の小学校から常盤台になんて行ったヤツ。なんでもスゲェんだろ? そっちの生活は」
「ははは」美琴は幽助の質問に少し呆れたようなトーンで、「たしかにすごいっちゃあすごいけど、規則とかがムチャクチャ厳しくてね。はー、私ものびのびしたいわー!」
 言って彼女は再び大きく伸びをした。
 ごおんごおん、と絶えず風車が回っている。
(……、二年前か)
 美琴は少し昔のことを思い出していた。二年ほど前――幽助たちと共に過ごした小学校時代のことを。
 御坂美琴は学園都市にわずか七人しかいない『超能力者(レベル5)』の一人で、その中でも第三位に君臨する実力者だ。だが、生まれもって現在のような力を持っていたわけではない。一般人とはかけ離れた英才教育を施されてきたわけでもない。彼女は元々『低能力者(レベル1)』で、通っていた学校も極めて平凡。幽助も含むほとんどの友達にしたって『無能力者(レベル0)』ばかりであった。
 そんな中で美琴は努力した。数々のカリキュラムをこなしてこなしてこなし続け、そして学園都市二三〇万人の第三位まで登りつめたのだ。
 だが。
 そこに辿り着くまでに、一体どれだけ『人間』を捨ててきたのか……。
 美琴は改めて幽助の顔を見る。今度は横目でではない。しっかりと彼の方へ顔を向けてだ。
「……」
「な、なんだよいきなり?」
「アンタ、かなり童顔だったのね」
「え?」
「だって、私の記憶が正しければ二年前と全然顔変わってないじゃない」
「悪かったな」
 幽助は少し気にしたようだったが、すぐに笑って受け流した。やはりその笑顔も二年前と変わらないものであり、人を和ませるような優しい表情だった。
 そう。変わらないからこそ、美琴は少し複雑な気持ちになった。『超能力者(レベル5)』になるために多くのモノを失った彼女にとって、変わらない幽助の微笑みは羨ましくもあり憎らしくもあった。
 ぴゅう、と速いのか遅いのか、いまいちはっきりしない風が吹いた。
「なぁ美琴」
 幽助は一瞬、真剣な顔をして、
「お前、変わったな」
 少女はなんと言えば良いのか分からなかった。
 その質問は、まるで心の奥底の最も弱い部分をえぐられるような感覚だったからだ。
「わからない……わよ」
 とりあえず、美琴は曖昧な答えを口に出した。いや、これしか出せなかった。本当に、自分でもわからないのだから。
 と、幽助は美琴の表情がひどく暗くなっていることに気が付いた。もしかして、訊いちゃあいけない事に触れちまったかな、と彼は頭を掻きながら、小さく笑って、
「……、そうか」
 これ以上は余計な詮索はしない。この場での幽助の優しさだった。
「だったら大丈夫だな」
 そして、少年はもう一度微笑んだ。
今度は、とびっきりの笑顔で。
「ぷっ」
「あん?」
 いきなり吹き出した美琴。幽助は眉を寄せると、
「アーーハッハッハッハッハッ!」
 少女は足をバタつかせながら、表通りであるにもかかわらず、恥じる様子もなく大笑いした。さっきは暗い顔してると思ったら今度はいきなりなんなんだ、とややのけ反る幽助に、彼女は涙目で、
「なにその笑顔? 小学生クオリティって言うのかしら? ホント顔変わってないじゃない!」
「うるせー、仕方ねぇだろ……ってコラッ! 頭を撫でるんじゃあねぇッ! 『よしよし』じゃあねぇッ!」
 ぎゃーぎゃーとわめき、じゃれ合う男女二名。彼らは通行人の目なんて気にせず、二人揃って向かい合わせに大笑いしている。
その光景はまるで、宮崎アニメのワンシーンみたいに見えた。
 
 
 五分くらい経った。
 浦飯幽助と御坂美琴。二人はぐったりとベンチの背もたれに首を預け、また雲一つない空を仰ぐ。妙に、午後の青空が彼らの目に染みた。
 はぁ……はぁ……、と二人とも息を切らせて言う。
「ちょっと、はしゃぎ過ぎたかしら」
「だな。俺もさすがに疲れた」
「まぁねぇ。あれだけ騒いだら大概の人は疲れるわよ」こきっ、と美琴は首を鳴らして、「ノド渇いたわね。なんか飲みに行こっか。私、おごるわよ」
「おお! マジか」
「大マジよ。せっかくだから私イチオシの店に行くわよ」
 美琴はベンチから腰を上げて、『早く』と幽助にも立つよう促した。ワンテンポ遅れて幽助もベンチから腰を浮かせて、
 
 
「お姉さま?」
 
 
 突然、聞き馴染みのない声がした。
 聞こえた声は女の子の声だった。幽助は声の方――自分からして右の方向へ目をやる。
 が、その前に、
「……、おい美琴よ。一体なにしてんだ?」
 両手で顔を押さえて立ちつくす、御坂美琴が目に留まった。
 美琴は無言のまま、まるでホバーで滑ってるんじゃあないかと思わせるような器用な移動の仕方で幽助の傍に寄る。
「アイツ、私の知り合いなのよ」
「は?」幽助は美琴の耳もとへ顔を近づけて、「『アイツ』って、今『お姉さま』って言った奴のことか?」
「そう。学校の後輩」
 後輩ね……、と幽助は声を漏らす。彼は美琴とは長い付き合いだが、中学に行ってからの彼女の事はよく知らない。せっかくの機会だし、彼女の後輩を知っておくことにした。どんな人物なのか興味もある。
 幽助は顔を押さえる――というか隠している隣の少女から視線を外して、
 
 
 いきなり、視界の中に己の顔を覗き込む、ドアップな少女の顔が現れた。
 
 
「おわッ!」
 突然の事態。幽助は驚きのあまり飛び上がってしまった。まぁ無理もない。鼻息が余裕でかかるほどの近さなのだ。どすん、と彼はそのまま、お尻からベンチに着陸した。
 それは美琴より少し背の低い少女だった。長い栗色の髪をツインテールにしており、美琴と同じ常盤台中学の制服を着用している。どうやら後輩というのは本当のようだ。
「なにぃ? 一体どうしたのよ?」
 幽助の叫び声を聞き美琴は顔から手を離す。と、
 彼女の視界にも、ドアップなツインテールの少女の顔が。
「うひゃぁッ!」
 思わず飛び上がり、そしてお尻からベンチに着陸する。幽助の時と全く同じ光景だった。
 二人のヒップドロップに、ベンチは軋んだ悲鳴を上げた。
「く、く、黒子⁉」美琴は本当に、本当に驚いた様子で、「いきなりびっくりするじゃない! それと、なんでここにいんのよ⁉」
おそらく心臓がバクバクしているであろう美琴とは対照的に、黒子と呼ばれたツインテールの少女は落ち着いた態度で、
「仕事ですの仕事」
「仕事? 仕事って――」
「それよりもお姉さま」美琴がなにか続きを言う前に、キリッと彼女は割り込んで、「お姉さまには、この黒子という存在がいるにもかかわらずまた浮気を……。その隣の殿方にしろ、類人猿にしろ、お姉さまは本当に気が多いのですのね」
 余談だが、彼女の言う『類人猿』というのは上条当麻のことだ。
 美琴は隣の少年、浦飯幽助を見る。そしてすぐ気付いた。自分に、変な視線が向けられている事に。
(まずっ……。こりゃ完全に誤解されかけてるわね……)
 彼女は確信した。
 このままだと、『数年ぶりに再会したは良いものの、おかしくなっていたヤツ』にされかねない。
 美琴は後ろ手に幽助を指しながら一歩前に出て、
「ちょっと、コイツをあんなヤツと一緒にしないでよ」
 余談だが、彼女の言う『あんなヤツ』というのは上条当麻のことだ。
「ふむ。ではその殿方とは一体どうゆう関係で?」
「昔の友達よ。小学校の時の」
「昔の……友達?」
 ツインテールの少女は少し驚いたような顔をしていたが、すぐに幽助にむかって軽く会釈した。コホン、と一つ咳払いして、
「いきなり驚かせて申し訳ありませんの。私(わたくし)、お姉さまの後輩でルームメイトの白井黒子(しらいくろこ)と申しますの」
 以後お見知りおきを、と白井はもう一度軽く会釈した。幽助も彼女に会釈しておく。
「俺は浦飯幽助。さっき聞いたと思うけど、美琴のダチだ。よろしくな」
「……、美琴?」
 幽助の言葉に白井は大きく目を見開いた。バカ……、と美琴もため息交じりに言う。何故だろう? 彼は首を傾げながら、
「なにがバカなんだよ?」
「アンタねぇ、せっかく私が誤解されないように名前で呼ぶの避けてたっていうのに。見なさいよ、黒子の顔を!」
 
 美琴に言われて幽助は白井を見た。白井は顔を赤くして、両手で頬を押さえている。
 彼女は興奮気味に、
「まぁ! お二人はもう『そんな関係』になっておられたのですのね! でもお姉さま。黒子はお姉さまのことを諦めませんの」
「「違うッ!」」二人の声がハモった。
「「そんな関係じゃあないッ‼」」
 白井はニヤニヤしているが、一旦彼女の反応を無視して幽助は息をついた。本気で誤解されているんだろうか?
「そういや黒子」美琴はベンチのひじ掛けにほおづえをつきながら、「仕事って言ってたけど、今日は何の仕事?」
「ケンカの収拾ですの。今帰りですけど、帰るまでが勤務ですのよ」
 彼女の右腕に付けられた緑色の腕章が、真昼の日差しで光った。
 そこには風紀委員(ジャッジメント)のマークがプリントされてある。
 風紀委員(ジャッジメント)は超能力を持った学生達で構成された治安維持組織だ。誰でも志願可能で能力のレベルも問われない。だが所属するには、九枚の契約書にサインし、一三種類の適正試験に合格し、四ヶ月間に亘(わた)る研修が必要となる。もちろん幽助はこんな面倒くさいことをしてまで風紀委員になるつもりはない。
「おい美琴、お前能力持ってるんだよな? 風紀委員になるつもりねぇの?」
「おことわり」
「なんで?」
「いろいろと面倒くさそうだから。(風紀委員に)入った後もね」
 どうやら美琴も風紀委員になるつもりはないようである。
 ぴりりりり。
「おっと」
いきなり電子音が鳴った。白井はポケットから手にすっぽり収まるサイズで、体温計みたいな形の物を取り出す。彼女の携帯電話である。ちなみに、これは最先端の端末だ。
「もしもし、白井ですの」
『白井さん、仕事は終わったんでしょう? 早く報告書を書きに戻ってきなさい』距離が近いせいか、幽助と美琴にも電話の向こう側からの声が聞きとれた。
「す、すみませんの。至急戻りますので」
 ぴっ。白井は電話を切って、
「では、私(わたくし)は報告書を書きに帰りますので。お二人とも御機嫌よう」
 シュン、と。
 いきなりその場から姿を消した。
 
 
「…………」
 幽助は無表情のまま一瞬固まった。そして、ゆーっくり隣の少女の方を向いて、
「あいつ、空間移動者(テレポーター)なの?」
「ええそうよ。大能力(レベル4)のね」
 空間移動(テレポート)。学園都市が開発・所有する超能力の一つで、名前の通り触れた物体や自分自身を移転(テレポート)させる能力だ。汎用性が高く、便利な能力であるが、移転させる能力故に複雑な演算を処理する能力が必須となる。また、扱える者も学園都市内で五〇人程度と少なく、貴重な能力とされている。白井黒子もその五〇人の中の一人なのだ。
「すげぇなー。俺、空間移動なんて初めて見たぜ」
「まぁ使える人が少ないからね。それよりも、早く何か飲みにいきましょ」美琴はベンチから立ち上がった。
「了解」幽助も腰を上げる。と、
「幽助?」
 また、突然声がした。
「……、ん?」
しかし今度は聞き馴染みのある声。幽助は聞いた瞬間、その声の主が誰なのかすぐに分かった。
 少年は声のした方向である左方に目を向けて、
 「おう、蔵馬(くらま)か。なにしてんだ?」
「特別何かしているわけではありませんよ。強いて言えば散歩ってとこですかね」
(ん?)
 美琴は聞き馴染みの無い声と、それと言葉を交わす幽助の声を聞いて振り向く。
 そこには、すっかり見慣れた浦飯幽助と身長一七〇センチ半ば程の人の姿が。『蔵馬』と呼ばれたソイツはくせの強い長髪で学生服を着用し、端麗な容姿をしていた。
「ちょっとちょっと」美琴は幽助に歩み寄って、「その人誰? もしかしてアンタの彼女?」
「…………」
 直後、蔵馬は彼女の言葉にちょっと食い気味でズンズンと迫る。前髪で目が隠れていたため美琴からは蔵馬の表情がわからなかったが、幽助が苦笑いしながら『どうどうどう』とヤツをなだめている。何か、マズイことでもしたのかしら? と少女は心の中で呟く。
 あー、と幽助は頭を掻きながら、
「こいつは蔵馬(くらま)っていうんだ。詳しいことは今から本人が言ってくれるだろうよ。あと、性別は男な」
 ばしっ、と彼は蔵馬の背中を軽く叩いた。
「蔵馬です、よろしく。ちなみに『蔵馬』っていうのはあだ名で、本名は南野秀一(みなみのしゅういち)。高校生だから歳は君より少し上だね。あと、性別は男だから」
 蔵馬は自分の本名を南野秀一と名乗った。が、それは正解であって間違いでもある。
(そういや、こいつの人間での名前は南野秀一だったなぁ。すっかり忘れてたぜ)
 二人のやりとりを見ながら、幽助はぼんやりと考えていた。
 彼は、本当は人間ではない。
 彼は、本当は『妖怪』だ。
 世界には、ここ学園都市がある『人間界』から空間・次元の単位で隔絶された『魔界』と呼ばれる世界が存在しており、そこには魔界の住人である『妖怪』が息づいている。妖怪の見た目は人間に近いものからとことん怪物チックなものまで実に多種多様。さらに、彼らは戦闘能力を含む危険度によってS~E級までランク付けされているのだ。
 そんな中蔵馬は『鬼も恐れる』、『泣く子も黙る』と言わんばかりのS級妖怪であり、その強さと残虐さは名前と共に魔界全土に知れ渡っているほどである。彼は狐の妖怪で、妖怪の時の姿は腰にまで届くほどの長い銀髪に、見たものを凍てつかせるような冷たく鋭い目が特徴である。
 だが、ここ人間界では『人間・南野秀一』として生活している。周囲の人間は彼の正体が妖怪だという事を一切知らないし、彼自身がそれをばらす事も無い。知っているのはごく一部の者達(幽助もその中の一人)のみである。彼は人間の姿でも妖怪時の能力を使用することはできるが、争いを好まない性格もあり危険な場面に遭遇しない限り使うことはない。蔵馬いわく『ポリシー』なのだと言う。
 そんな蔵馬の挨拶に対し、彼の裏事情を何も知らない御坂美琴は少しばかり緊張した様子で、
「御坂美琴です。幽助とは小学校の時の親友で、さっきたまたま会ったから話してたんです」
「……御坂?」美琴の言葉に、蔵馬は目をぱちくりさせた。
 彼はそのまま続けて、
「御坂美琴って……君、『常盤台の超電磁砲(レールガン)』なのかい?」
「ええ……。まぁ一応そんな二つ名がありますけど……」美琴は申し訳なさそうに言った。が、少し誇らしげもあった。
 と、そんな時。
「おいおい、一体その『トキワダイのレールガン』ってのはなんだ? 常盤台中学の何かか?」
 彼らの会話の内容をまったく理解していない幽助が話の輪に入ってきた。ボケをかましている様子はない。たぶん――いや、コイツはマジにわかっていないだろう。
 蔵馬はそんな彼にとことん呆れ顔で、
「幽助……、君は一体……」
「なんだよ? 何か変なことでも言ったか?」
「…………」その反応に、ハァ……、と蔵馬は大きなため息を吐(つ)いて、「あのねぇ、彼女――御坂さんは学園都市約二三〇万人の能力者の中の第三位で、『超電磁砲(レールガン)』と言われるほどのすごい能力者なんだ。君、彼女の親友なんだろう? なのに何故知らないんだい?」
「……、学園都市の能力者の三位?」幽助は固まって眉を寄せた。
「そう。三位」
 直後。
「ええーーーーッ⁉」
 浦飯幽助の仰天した声が、周囲に響いた。
「いや、むしろこっちが驚きたいですよ」蔵馬はやや顔を引きつらせた。
「つーか美琴!」
「なによ?」
「お前そんなすげぇヤツだったのかよ! だったらどうしてもっと早く言ってくれなかったんだ!」
「……ごめん、私も知ってると思ってた」美琴の肩ががっくりと落ち込んだ。「あと、南野さん」
「何かな? あと、別に敬語じゃなくてかまわないし、呼び方も蔵馬で良い。そっちのほうが喋りやすいからね」
「じゃ、じゃあ蔵馬」
少女はややためらい気味にだが言う。
「さっきは私のこと、わざわざ説明してくれてありがと。それにしても、幽助が何も知らなかったことが意外だったわ」
「ええまったく。幽助も親友の事ぐらい知っておいてくれ」
「へーい」
 幽助の声は少しふてくされていた。
 と、その時。
「(……、ちょっといいかな?)」
 蔵馬の表情がさっきとはうって変わった真面目になった。はっ……、と幽助の顔つきも変わる。
 蔵馬は幽助だけに聞こえるようにして、
「幽助、最近この街に『怪人』が現れるようになったことを知っているかな?」
「怪人? 妖怪じゃあなくて?」
「いや、それは俺にもわからないんだ」彼は一度目を閉じて、「要は『気をつけて』と言いたいだけですよ。友人が怪我をするのは嫌ですからね」
「わかった。サンキュな」
 にっ、と幽助はニヒルな笑みをうかべた。
 その表情はとても頼もしくて、勇気を与えてくれるものだった。
 まるで英雄(ヒーロー)。
(相変わらずおもしろい奴だ)

 蔵馬は元来た道と反対方向へ歩を進めながら、
「さて、じゃあ俺はそろそろ行きますんで。幽助と御坂さん、御機嫌よう」
 二人に背を向けながら、手を振って去って行った。すると、幽助は一歩前へ出て、
「蔵馬!」
「なにかな?」
 長髪の少年は二人の方へ顔を向ける。
「お前も気をつけろよ」ぐっ、と拳を前へ突き出した。
「ええ。承知してますよ」ぐっ、と。同じく蔵馬も幽助に向かって拳を突き出した。そして、また去っていく。
 去っていく蔵馬の背中を見ながら美琴は一人首を傾げる。
「ねぇ、今の何?」
「男の友情」
「……、男って変な生き物ね」
 さあっ、と穏やかな風が流れた。時刻はちょうど午後三時である。幽助は澄みきった青空を見上げて、
「そういや、何か飲みに行くんだったな。さ、早く行こうぜ」
 ぱしっ、と。
 美琴の手を握って、てくてくと歩き出した。
 当然、それに戸惑う美琴。
「ちょ、ちょっと」
「なーにうろたえてんだよ。なんか、かなりノド渇いちまったからな。今から行く店ってどこ?」
「……」
 いくら幼馴染の親友でも緊張する。
 特に、こんな年齢になれば。
 てくてくと足を運ぶ幽助の手に引っ張られて、美琴も一緒に動く。幽助の手は彼女が思っていた以上に温かく、柔らかい手だった。
(ま、悪くないか)
 彼女は少し足を速めて幽助の横に並んだ。はたから見れば二人はカップルである。
「で、場所どこだよ?」
「えっと、この道を真っ直ぐ進んで、それから――」
 
 
 ガアアアンッ‼
 
 
 突然。
乾いた炸裂音が辺り一帯に響いた。
「「‼」」
 その音は、まるで拳銃を発砲したような音。二人はとっさに構えをとる。
「ねぇ、今の音ってあの店から⁉」
 幽助は美琴が指さした場所を見る。そこには洒落たイタリアンのレストランが。レストランのガラスの一枚は粉々になって、破片が周囲に飛び散っていた。
 そして。
「おい、あれ……!」幽助は少し焦った様子で言う。彼の視線の先には、
 
 
 店から一人、男が走って出てきた。
 それはまるで逃げるかのように。
 
 
「おい美琴。あいつどう思う?」少年は隣の少女に横目でサインを送った。
「なーんか怪しいわね。被害者かもしれないけど、追ってみる価値はあるかもよ」
「よし。じゃあ行くか!」
 そうと決まれば二人の行動は早かった。まるで、思考がまるまる重なったかのように。
 ダッ、と。
 二人は走る男めがけて駆けだした。

 TO BE CONTINUED 

次回予告
ブチャラティ「ヤツを追うッ! そして何を目的に俺達のところへ来たのか吐かせるんだッ!」
赤毛の男「現れたからだよ。あの『法の書』を解読できる者が」
上条「……、素朴な疑問を一つ」
ジョルノ「……ドンピシャですね」
次回の学園都市の日常・魔術サイドは第7話。お楽しみに!
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変更
by luke 2012/06/19(Tue)16:35:23 Edit
変更変更ゥッ!

出典
※BGM1『アバン』(アニメ ボボボーボ・ボーボボより)
※OPおよび挿入歌『flying』(GARNET CROW)
※BGM2『初春飾利』(アニメ とある科学の超電磁砲より)
※BGM3『僕のパパは時代おくれ?』(アニメ チャージマン研!より)
※BGM4『オープン・ザ・スカイ』(特撮 仮面ライダーOOOより)
※EDおよび挿入歌 『Tactics』(THE YELLOW MONKEY)
※BGM4 『名探偵コナン メインテーマ(次回予告ver.)』(アニメ 名探偵コナンより)
先生お疲れ様でーす
by ガチャピン 2010/12/29(Wed)00:31:00 Edit
今回の話も面白かったです
更新が遅くても気にしません
けど、お体にはお気をつけくださーい
ヘッヘッヘッヘッヘ
by Joker 2010/12/28(Tue)20:26:08 Edit
おつかれ。会話だけで10ページ以上ってこういうことね。
そういえばジャッジメントってそういう設定だったな。とあるの設定って面倒くさいからテキトーにやってたよ。だから科学サイドでは2回目以降は風紀委員とも打ってないし。反省かな?
さてそっちが6話を投稿したことだし、こっちも7話を書き上げよう。
あとがき
by Sgt.LUKE 2010/12/28(Tue)19:39:25 Edit
更新が遅い。
はい、遅くなってしまいました。申し訳ありません。なんでも最近はいろいろしてたもんで早く投稿できませんでした。(最近始まった科学サイドの完全版にもう話数追いつかれている。がんばろ……)

さて、今回から話に使用したBGMおよび挿入歌の曲名と出典を載せようとおもいます。『これなんの曲?』などと思った方は参考にしていただけるとうれしいです(もし曲名や出典が間違っていた場合、指摘してくださると尚うれしいです)。

※BGM1 『初春飾利』(アニメ とある科学の超電磁砲(レールガン)より)
※挿入歌およびED 『Higher Ground』(Red Hot Chili Peppers)
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