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~teamBDRの酒場~
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teamBDR
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男性
職業:
高校生
自己紹介:
このブログは退屈な日々を革命すべく集まった6人のブログなんDA。
メンバーの紹介なんDA
[Joker(ジョーカー)]この団を作った人。学園都市の日常・科学サイドを書いてるのはこの人。ボディサイドのガイアメモリをコンプしている。最近、teamBDRが満足同盟となんら変わりない事に気づいたが、狙ってなどいなかった。いや、ホンとにマジで。まあそんな事はどーでもいいから、満足しようぜ!!

[ナレ神(シン)] 貴重な「純粋なツッコミ役」。LUKEとは実況・解説コンビである。最近、兄のオタクライフを書いた記事が大ヒットした。

[ガチャピン]旧かみやん。最近はこっちの名を名乗るほうが多い。通称、魯迅(ろじん)。又は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。もうなんか『お姉ちゃん』しか言わないかわいそうな人。teamBDRの中でもトップクラスにアレな人なんDA。 

[S(サジタリウス)] 変態である。クラスの女子、挙句の果てには学校の先生にまで変態と言われてしまったぞ!この変態軍人めが!!

[Sgt.LUKE(サージェント.ルーク)] おそらくこの団最強の男。その脳内は無限のユーモアにあふれている。もしかしたらアンサイクロペディアを超えているかもしれない。ちなみに食玩のサイクロンメモリを持っている。

[XILE(ザイル)] 割と普通人。EXILEのファン。この団に入ってからまわりに毒されてきた。被害者。だが本人は楽しそうである。
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第27話「Fという名の牙/結成! 満足インフェルニティタイム」

作者 Joker


7月25日、学園都市のすべての学校は夏休みに突入していた。
そんなある日の鳴海探偵事務所。
「なにィ? バンド!?」
翔太郎は素っ頓狂な声を上げた。ギターを持った鬼柳は翔太郎に詰め寄って言う。
「そうだ。8月20日から学園都市では盛夏祭が開かれるってことは知ってるだろ?」
盛夏祭とは8月20日から22日までの3日間、学園都市全域を巻き込んで行われる最大級の祭りだ。この日は学園都市のいたるところであらゆる催しが繰り広げられる。夏休みの楽しみといえば盛夏祭と答える学園都市の住民は多い。
「サティスファクション地区でも盛夏祭は開かれる。だから俺たちチームサティスファクションがバンドをやって祭りを盛り上げようっていうことだ!」
鬼柳は視線をソファに座っている遊星、ジャック、クロウに移す。
「遊星はベース、ジャックはキーボード、クロウはドラムをやってくれる。俺はリードギターとボーカルをやる。お前にはリズムギターを頼む」
「なるほど。そういうことか」
翔太郎は納得した。今鬼柳が言ったパートは昔チームサティスファクションがサテライト地区にいた頃、廃材を集めてバンドの真似事をやっていた時のものとまったく同じだった。鬼柳は今度の盛夏祭で真似事ではなく本物のバンドをやろうと言っているのだ。
「なら俺も参加するしかねえな」
鬼柳は微笑みながら翔太郎に向かって拳を突き出した。翔太郎はその拳に自分の拳をぶつけて笑った。
そんな翔太郎をフィリップは怪訝な目で見ていた。翔太郎がハイパーカブトの攻撃によって死に、そして生き返ったのが昨日の事だ。1度は翔太郎をあの世に送ったほどのダメージ。だが翔太郎はすでに普段の状態とほとんど変わらないところまで回復していた。見ていられないほど酷かった火傷や骨折はもはやそんな怪我を負っていたのかと疑うほどの回復振りだ。
これがシュラウドの言っていたアギトの力だろうか。もしそうならば翔太郎の身に何か劇的な変化が起こっているのだろうか。そうフィリップは考えていた。
その時、事務所の扉をノックする音が響いた。翔太郎は久々の依頼かと思いながら扉を開けた。
「あ、あんたは!!」
扉を開けた翔太郎は戦慄した。



「あ、あんたは・・・スーパーのおばちゃん!!」
扉を開けた先にいたのは鳴海探偵事務所の近所にあるスーパーマーケット、ウインドマートの店長のおばちゃんだった。
「久しぶりだねえ、翔ちゃん」
おばちゃんはニィッと笑った。翔太郎はガタガタと震えだす。
翔太郎はかつて風都中のスーパーの試食品を食い荒らす日々を送っていた。その中でも特に被害をこうむっていたのがウインドマートだった。あの頃の翔太郎の日課は朝起きて白飯を茶碗によそったらウインドマートに向かい、試食品の前であぐらをかいて飯を食うというものだった。そして翔太郎が鳴海荘吉に捕まったのもウインドマートだった。
今では翔太郎も反省しているのだが、おばちゃんはたびたびあの頃の事を持ち出しては翔太郎にスーパーの清掃活動などの雑用を命じにくる。それもただ働きでだ。あの頃のことを持ち出されるとどうしても断れない。翔太郎はいつもおばちゃんの言う事を渋々聞いているのだった。
「で、今日はいったいどのようなご用件でしょうか?」
翔太郎は変に強張った口調で言った。
「それがねえ、最近うちのスーパーで毎日のように万引きをしていく子がいるんだよ」
「万引き?」
「そう、中学生くらいの女の子なんだけどさあ、棚にあるお菓子を片っ端から服のポケットに詰めて走って逃げていっちゃうんだよ。私らも追いかけるんだけどね、これがまあ速くてどうやっても追いつけないんだわ」
おばちゃんは溜息をついてお手上げだと肩をすくめた。
「つまり、俺にその万引き女子中学生を捕まえて欲しいってわけだな?」
翔太郎の問いにおばちゃんはうなずいた。
「よし! なら俺たちも協力するぜ!」
鬼柳たちチームサティスファクションのメンバーは立ち上がった。
「俺たちチームサティスファクションが協力すれば、越えられない困難などないはずだ」
「遊星・・・!」
「フン、中学生が万引きとは・・・世も末だな。本来払うべきコストを踏み倒すという行為がどれだけの罪か、わからせてやる必要がある」
「ニート同然のお前が言うなよジャック」
クロウはジャックにツッコミを入れた。
「お前ら・・・!! よし、チームサティスファクション! 行こうぜ!!」
翔太郎を先頭にチームサティスファクションの5人は飛び出していった。


ウインドマートの駐車場に5人の影が並び立つ。
チームサティスファクションの5人は真っ黒いサングラスをかけて戦に臨もうとしていた。
「いいか、絶対に目立つな。ばれないように普通の客を装うんだ・・・じゃあ行くぜ。デュエッ!!」
鬼柳の掛け声で5人は一斉に散った。そしてそれぞれ別の入口からスーパー内に突入する。
「お菓子売り場の一番西側の棚・・・」
翔太郎は作戦を思い出しながら自身の配置についた。怪しまれないようにその周辺をうろちょろと歩く。基本的に視線はお菓子の方。だが意識は常に周りに向ける。
しばらくすると中学生らしき赤毛のポニーテールの少女が翔太郎の近くにやってきた。少女は真顔で堂々と服のポケットにお菓子を詰めていく。間違いなくこいつだと翔太郎は思った。
だがこの時点ではまだ万引きは成立していない。この状態で店を出ようとすればアウトなのだ。
少女はレジの方向へと進んでいく。そして翔太郎の背後を少女が通過する。その時、
「あんたらさー、怪しすぎでしょ」
少女はそう呟くとダッシュで駆け抜けていった。翔太郎はサングラスを投げ捨てて後を追いかける。
少女はレジを突っ切って出口の方へ真っ直ぐに向かう。それを翔太郎と東側の棚を張っていたクロウが猛ダッシュで追いかける。
「ここから先はいかせん!!」
少女が向かっている出口ではジャックが仁王立ちで待ち伏せていた。スラリとした高身長のジャックの威圧感は半端ではない。ここで少女が減速すれば翔太郎とクロウが追いついて捕まえられる。
だが少女は減速するどころかさらにスピードを上げる。そしてジャックの上をすり抜けるようにジャンプで飛び越えて、まったく減速することなく出口から出ていった。
「なにィ!?」
「あの高身長のジャックを飛び越えただと!?」
「それもあんな華麗に・・・!」
ジャック、翔太郎、クロウは驚きを隠せない。だがすぐに気を取り直して3人は少女を本気のダッシュで追いかける。しかしどれだけスピードを上げても少女の背中はどんどん離れていく。
決してサティスファクションの3人のスピードが遅いわけではない。むしろ3人の走るスピードは横を走っている自転車よりも遥かに速かった。
だが少女はどんどんスピードを上げ、やがて3人の視界から消えてしまった。
翔太郎たちは万引き少女を取り逃がした。

万引き少女を捕まえられなかった一行は鳴海探偵事務所に戻ってきた。
「クソッ!」
翔太郎は吐き捨てるように言って椅子に腰を落とした。
「あいつの運動能力・・・普通じゃなかったぜ」
「普通に走って追いかけるのでは無理そうだな」
クロウとジャックはそう言って考え込んでいる。確かにあの少女を走って捕まえることは自分たちでは不可能だろう。何か別の策が必要になる。
「外にトラップを仕掛けておくってのはどうだ? 網とか落とし穴とか」
クロウは思いついたように口を開く。だがその意見はすぐさまジャックによって否定された。
「無理だな。他の客に迷惑がかかる」
「じゃあお前も何か意見出せよ」
クロウは少しキレ気味に言った。
「思いついていたら言っている。もう少し冷静に考えろ」
クロウはクソッと言って右拳で机を叩いた。
スーパーのおばちゃんはあの少女は毎日万引きに来ていると言っていたが、このままでは明日も同じ結果に終わるだろう。
鬼柳は溜息をつく。何もアイデアが浮かばない。だが顔を上げた瞬間、鬼柳の脳内に電流が走った。
「これだ・・・こいつでいけるぜ!」
鬼柳は叫んで立ち上がった。何事かと思って全員鬼柳の方へ振り向く。鬼柳は自分が持ってきていたギターを持ち上げて言った。
「バンドだ! こいつでやるしかねえ!」

次の日、万引き少女は再びウインドマートに現れた。だが今日は翔太郎たちは張り込みはしていない。
「なーんだ。あいつらもうあきらめたんだ」
少女はそう呟きながら今日もお菓子をポケットに詰めていく。
その様子を翔太郎たちは警備室のモニターで見ていた。モニターには監視カメラから送られてくる映像が映し出されている。
「そろそろ出てくるな」
「よし、行くぞ」
そう言って翔太郎たちは警備室から出た。
万引き少女は余裕そうに歩きながらスーパーを出た。今日は誰も追ってこなくてすごく楽だったなーなどと思いながら歩いていると駐車場に馬鹿でかい大型車両が止まっているのが見えた。
それは普段鳴海探偵事務所に隠されているダブル専用大型ビークル、リボルギャリーだった。
そんなことは知らない普通のスーパーを利用しに来ていた客たちはリボルギャリーに怪しさを感じて周囲に集まっていた。結構な人数が集まって人だかりができている。
その時、リボルギャリーは正面から急に真っ二つに開き始めた。中からステージのようなものが現れる。そしてその上にはチームサティスファクションの5人がそれぞれ楽器を構えて立っていた。
「いくぜ! チームサティスファクションッ!! 突撃初ライブだ!!」
鬼柳がそう叫んだ次の瞬間、鬼柳はギターを掻き鳴らし、正面のマイクに向かって歌い始めた。

鬼柳の熱い歌声に黄色い歓声が上がる。辺りはまるでコンサートホールのように盛り上がり始めた。翔太郎たちもそれぞれの楽器で熱い演奏を見せる。リボルギャリーのステージの周りにどんどん人が集まっていく。
「しまった! これじゃ逃げられないじゃねえか」
万引き少女はいつの間にか人ごみによって退路が完全に絶たれていることに気がついた。鬼柳は歌いながら万引き少女の方を見てうまくいったと思った。
スーパーからおばちゃんを始め数人の店員が少女の背後の出入り口から飛び出してきた。
「あいつらずいぶん派手にやってくれたね。でもこれでやっとあんたを捕まえられるよ」
おばちゃんは黒い笑みを浮かべながら万引き少女に歩み寄っていく。万引き少女は悔しげな顔で歯軋りをしている。
「くっ・・・なめンじゃねえ!」
万引き少女はおばちゃんたちの方に突っ込んだ。少女の予想外の行動におばちゃんは腰を抜かしてしまった。少女は再びスーパーの中に入っていった。
「まずいぞ! あの女、他の出入り口からまた逃げる気だ!」
ジャックは早く追いかけるべきだと急き立てる。だが翔太郎は冷静に演奏を続けながら言った。
「大丈夫だ。こういう時のために強力な助っ人を用意しておいた」

「お前の未来はすでに見えている」
―Clock Up(クロックアップ)―
万引き少女は北側の出入り口から外に向かって飛び出した。人気はまったくない。少女は勝利を確信した。が、その時少女は誰かに腕をつかまれた。
―Clock Over(クロックオーバー)―
少女の腕をつかんだのはハイパーカブトだった。翔太郎が言った助っ人とは天道総司のことだった。
「まったく、ハイパーゼクターの力をまさかこんなところで使うことになるとはな」
「くそォ! 放せよオイ!」
少女はじたばたと暴れる。だがハイパーカブトの力を振りほどくことは不可能だった。
「おばあちゃんが言っていた。人のものを盗む奴は、もっと大事なものを無くす。とにかくお前には一緒に来てもらうぞ」
天道は変身を解除した。少女はうつむいておとなしく天道に従って歩く。
「・・・もう大事なものなんてないんだよ・・・・・・」
少女はボソリとそう呟いた。


天道は少女をスーパーの警備室に連れてきた。チームサティスファクションのメンバーもライブを終えて集まっている。少女への事情聴取はチームサティスファクションに天道を含めた6人で行うことになった。
「じゃあまずは名前を聞かせてもらおうか」
翔太郎は机を挟んで少女の正面の椅子に座って聞いた。翔太郎はまるで刑事ドラマのようだと思ってテンションが上がった。
「杏子・・・佐倉 杏子(さくら きょうこ)」
「見たところ中学生か。何でこんなことしたんだ?」
翔太郎は机の上の杏子が盗もうとしたお菓子を見て聞いた。
「そりゃお腹が空いたからに決まってるじゃんかよ」
「だからって盗みはどうかと思うぜ。これからお前の家族や学校に連絡を入れなきゃならねえ。きっとショックを受けると思うぜ」
「別に、勝手にすれば。そもそもあたしに家族はいないし、学校にも通ってないし」
杏子は誰もいない壁の方を見てそう言った。翔太郎は一瞬言葉を失った。他の面々もそうだ。次に口を開いたのは遊星だった。
「どういう事なんだ? 君は普段どうしているんだ?」
「最近はこの辺の公園で野宿さ。もうずっとそうやってあちこちの公園を野宿して回ってる」
その発言を聞いて翔太郎は驚愕して思わず叫んだ。
「なんだと!? おいやめろ! この辺の公園で野宿するのは絶対にやめろ!」
「何でだよ? あたしがどこで野宿しようがあたしの勝手だろ」
「いいか、この辺の公園はどこも有名なハッテン場なんだよ! いくら連中が男にしか興味がないからってそんなとこにいんのは危険」
「女子中学生に向かって何言ってんだ!!」
興奮する翔太郎をクロウは拳骨で殴った。
「は、ハッテン・・・?」
杏子は言葉の意味がわからずキョトンとしている。遊星は話の流れを元に戻すべく再び話し始めた。
「そんな事はどうでもいい。君自身の事についてもっと詳しく話して欲しい」
杏子は再び元の反抗的な態度に戻って話し始めた。
「フン、あたしの家族なら2年前に皆死んだよ。学校は中一の途中から行かなくなった」
「なるほど。家族を亡くした君は経済的に困窮し、そして非行に走るようになった。そういうことか」
「ああそうだよ」
杏子はふてぶてしくうなずいた。そしてそれきり何も喋らなくなってしまった。
翔太郎が何か聞いても、
「嫌だね。警察でも何でも呼ぶといいよ。速攻で脱走してやるからさ」
と言ってまた黙ってしまう。この少女なら警察でもかなり手を焼くかもしれない。もしかしたら本当に脱走してしまう可能性もある。
これからどうするか皆悩んでいると、スーパーのおばちゃんが様子を見に警備室に入ってきた。
「どうだい? 順調かい?」
翔太郎は首を横に振る。
「容疑自体は認めてるんだがな・・・」
「じゃあさっさと警察に突き出したらいいじゃないか」
「いや・・・まあ普通はそうだけどよ」
翔太郎は杏子に視線を向けた。目も口も硬く閉じられていて頑として態度を崩そうとしない。
「なあおばちゃん・・・この子を俺たちに預けてくれねえか?」
翔太郎がそう言うとおばちゃんは目を丸くした。
「何言ってんだい! この子のせいでうちがどれだけの被害をこうむったか・・・」
「俺はこの街で誰にも泣いて欲しかねえんだ」
翔太郎がそう言った直後、机に何かが叩きつけられる音がした。見るとジャックが100枚ほどのデュエルモンスターズカードの束を机に乗せていた。
「ジャック・アトラスの特製サイン入りレアカードだ。これで被害は帳消しだろう」
「え!? 本当にいいのかい? なら喜んでその子はあんたらに預けるよ!」
おばちゃんはカードを受け取って部屋を出ていった。
「すまねえ、ジャック」
「謝ることはない。俺たちもお前と同じ気持ちだ」
翔太郎は仲間たちを見回す。
天道も、遊星も、クロウも、ジャックも、鬼柳も、皆同じように微笑んでいた。
皆翔太郎の言葉に同じ気持ちを感じていた。

翔太郎たちは杏子を連れてスーパーから鳴海探偵事務所までの間を歩いていた。遊星はサテライトにいた頃に使っていた拘束用ロープを使って自分の腕と杏子の腕をつないでいた。
「あたしをどこに連れていくつもりなんだい?」
杏子に聞かれ翔太郎が答える。
「俺の事務所だ。絶対にお前に自分の事を話してもらうからな」
「ハン、どうして他人のためにそこまでできるかねえ」
杏子はあきれたようにそう言った。翔太郎は何も言わずに黙っている。
その時だった。翔太郎たちの前に黒服の男たちが現れて道をふさいだ。

「お前たちは!!」
天道は身構える。この男たちはスマートブレインの者たちだ。
「天道総司!? 何故貴様が・・・」
黒服たちは多少の動揺を見せる。
「知り合いか?」
翔太郎は天道に聞いた。
「ああ、ちょっとした因縁がある。とりあえず敵であると思っていい」
「まあいい。私たちの目的はその少女、佐倉杏子だ」
黒服の男は杏子を指差した。杏子は黒服たちを見て鼻で笑う。
「あんたたちまだ懲りてなかったんだ。あんだけコテンパンにしてやったのに・・・いいかげんうぜぇ」
杏子は怒っていた。
「君もわかっているはずだ。我々スマートブレインは来る者を拒まず、拒む者に強制する事をしない。だが裏切りだけは許さない。君は我々の元に戻ってくるか、我々に処刑されるか、選択しなければならない」
黒服たちは諭すように言った。
「気に入らない・・・あたしは自分のためだけに生きるって決めたんだ。あんたらに従う気も、あんたらに殺られる気もないね!」
杏子の怒りは最高点に達しようとしていた。黒服たちはあくまで杏子を説得しようとする。
「頼むから戻ってきてくれ。君の友人だった巴マミも死んでしまった。我々には君のような強い仲間が必要だ」
「マミが死んだ・・・? ・・・・・・そう、けど関係ないね」
一瞬の動揺の後、杏子の表情に再び怒りが戻る。そして杏子の顔に怪しげな紋様が浮かんだ。
「そうか・・・君がその気なら仕方ない」
黒服たちはスーツをはだけさせて腰に巻いたスマートバックルをあらわにする。
「変身」
黒服たちはスマートバックルで一斉にライオトルーパーに変身した。
「変身!!」
杏子が叫ぶとその姿は灰色の異形の怪人、サラマンダーオルフェノクへと変わった。
「な、何だあ!? どうなってんだオイ!!」
目の前で起こっている事が理解できずクロウは叫んだ。翔太郎たちも事態を理解できていない。
サラマンダーオルフェノクは遊星と自分をつないでいるロープを引きちぎろうとするがまったくほつれさえもしない。
「クソッ! どんだけ硬いロープなんだよ! ・・・仕方ない。気をつけろよあんた!」
サラマンダーオルフェノクは遊星にそう言うとライオトルーパーたちに向かって突っ込んでいった。
「ちょッ! オイ!」
遊星はサラマンダーオルフェノクに引きずられるように前に進む。
「このままじゃ遊星が危ねえ! おい皆、下がってろ」
翔太郎はダブルドライバーを装着して鬼柳たちに叫んだ。

「俺も行く」
天道はカブトゼクターを呼び寄せて掴んだ。
「あいつらは手ごわい。1人1人がカブト・ライダーフォーム並みの力を持っている」
「そうか。けどハイパーフォームは使い過ぎるなよ。シュラウドが精神崩壊の危険性があるって言ってたぜ」
「万引き犯を捕まえるのにハイパーフォームを使わせたお前が言うか」
天道は苦笑する。
「今のお前はあの時とは違う。見ていてすげー安心できるぜ」
翔太郎のその言葉を聞いて天道も安心したのか真顔に戻る。そしてカブトゼクターを構えて叫んだ。
「変身!」
―Henshin(ヘンシン) Cast Off(キャストオフ) Change Beetle(チェンジビートル)―
天道はカブト・ライダーフォームに変身した。さらにカブトはハイパーゼクターを呼び寄せる。
―Hyper Cast Off(ハイパーキャストオフ) Change Hyper Beetle(チェンジハイパービートル)―
カブトはハイパーフォームへと変わった。カブトはライオトルーパーたちに向かって走り出した。
「フィリップ、行くぜ」

「ああ、行くよ翔太郎」
鳴海探偵事務所でフィリップはダブルドライバーにサイクロンメモリを挿し込んだ。サイクロンメモリが翔太郎のダブルドライバーに転送される。だがこの時、フィリップは違和感を感じた。
「何故だ? 何故僕の意識は残ったままなんだ?」

翔太郎は転送されてきたサイクロンメモリと自分のジョーカーメモリを挿し込んでダブルドライバーを左右に開く。
いつもならこれで変身完了だ。だが今回は何故か何も起こらなかった。
翔太郎は不思議に思ってダブルドライバーを閉じ、そしてもう一度開いた。だがいつものようにメモリ音声が鳴る事もなく、翔太郎の体を緑と黒の鎧が包む事もなかった。
「どういうことだ・・・おいフィリップ!」
翔太郎はダブルドライバーで意識が繋がっているフィリップに話しかける。
『わからない・・・いや、もしかしたら・・・・・・』
フィリップはこれもアギトの力だろうかと考え出した。そう考えるとシュラウドが自分にファングメモリを渡したわけもわかり始めた。
「何かわかるのか?」
『い、いや。正確な事は何も・・・』
とっさの事だったので翔太郎に聞かれてフィリップはそう答えた。
「じゃあいい。生身でも俺は戦うぜ!」
翔太郎はダブルドライバーを外し、左腕にデュエルディスクを装着した。
「なら俺たちもいくぜ!」
鬼柳、ジャック、クロウもデュエルディスクを装着して翔太郎に並ぶ。
「デュエッ!!」
4人は叫んでライオトルーパーたちに突っ込んでいく。
「うらァッ!」
サラマンダーオルフェノクは槍型の武器でライオトルーパーたちを薙ぎ払う。
「くっ!」
遊星は彼女の動きに振り回されながらベルトにつけたデッキケースからカードを1枚ドローする。ドローカードは《デブリ・ドラゴン》。そしてそのカードをサラマンダーオルフェノクの背後から迫っていたライオトルーパーに向かって手裏剣のように投げた。
「ぐうッ!!」
《デブリ・ドラゴン》のカードはライオトルーパーの装甲に深々と突き刺さった。ライオトルーパーはショックで卒倒した。
「ナイスアシスト」
サラマンダーオルフェノクは機嫌良さげに遊星にそう言った。
しばらく戦っている内に戦いの場は最初の位置から少し進んだ先の大きな橋の上に移っていた。
ハイパーカブトは並行世界からザビーゼクターを取り寄せ左腕に装着した。ハイパーカブトの左腕を巨大な槍型のタキオン粒子が包む。
ハイパーカブトはその左腕でライオトルーパーを川に向かって突き飛ばした。突き出す際の衝撃波だけでも何人ものライオトルーパーたちが川に吹き飛ばされ落ちていく。
「うおおおッ!!」
チームサティスファクションの面々もカードを投げたり、相手の攻撃をデュエルディスクで防いだり、拘束用ロープで縛って川に投げたり、蹴り飛ばして川に落としたりしていた。
「あいつら・・・本当に人間か?」
無双するサティスファクションの連中を見てハイパーカブトは呟いた。
そうしている内に残りのライオトルーパーは1体となった。
「う・・・うおおおおおおおおッ!!」
雄叫びを上げながらライオトルーパーはサラマンダーオルフェノクに突っ込んでいった。そしてコンバットナイフ型の武器アクセレイガンでサラマンダーオルフェノクを切りつけようとする。
「ハッ! そんな攻撃に当たるわけが・・・」
だがライオトルーパーが狙ったのはサラマンダーオルフェノクではなく、遊星だった。
「なにッ!?」
サラマンダーオルフェノクは驚きの声を上げた。アクセレイガンが遊星の心臓に向かって伸びる。
「死ねえッ!!」
「・・・チッ!!」
アクセレイガンは遊星の胸を貫かなかった。代わりにサラマンダーオルフェノクの左腕を貫いた。
「なっ・・・」
遊星は唖然としている。
「うっ・・・くっ・・・!」
サラマンダーオルフェノクは苦痛のあまりうめき声を上げる。
「やはり庇ったか。君ならそうすると思ったよ」
「言いたいことはそれだけか?」
得意気になっているライオトルーパーの背後にハイパーカブトは立った。ライオトルーパーがこちらに振り向いた瞬間、ハイパーカブトはタキオンの槍でライオトルーパーを薙ぎ払った。
「があああッ!!」
ライオトルーパーは橋から落ちることなく地面を転がる。
―Maximum Rider Power(マキシマムライダーパワー)―
「ハイパースティング」
―Rider Sting(ライダースティング)―
ハイパーカブトのアーマーが展開し、必殺技を放つ体勢に入った。ハイパーカブトの背中から蝶の羽のようなタキオン粒子が噴出し、左腕の槍型のタキオン粒子がハイパーカブトの全身を包むほどに巨大になる。
そして背中からタキオン粒子を噴出し最高速まで加速したハイパーカブトはタキオンの巨大な槍となってライオトルーパーに突撃した。
「ぐわあああああああああああああああああッ!!」
どんなに硬くぶ厚い鋼鉄でもぶち抜くハイパーライダースティングをハイパーカブトはあえて直撃させずかすらせる程度に当てた。ライオトルーパーは衝撃を受けて遥か彼方まで吹っ飛んでいった。距離と勢いからしておそらく海に落ちるだろうと天道は思った。
ハイパーカブトは橋の上に降りて変身を解除した。サラマンダーオルフェノクはすでに元の杏子の姿に戻っていた。彼女を心配して皆集まっている。
「大丈夫か?」
遊星は杏子の左腕を見る。杏子は右手で傷口を押さえているが指の間からとめどなく血が溢れ出し、パーカーを真っ赤に染め上げていく。
「翔太郎、そのネクタイをくれ」
遊星に言われて翔太郎はつけていたネクタイを外して渡した。遊星はそのネクタイで杏子の傷口を縛って圧迫止血した。
「余計なことしやがって・・・」
「残念だったな。俺はくそ真面目な男なんだ」
毒づいた杏子に対して遊星はそう言った。
とりあえず応急処置はしたがちゃんとした治療を受けさせなければならないだろう。遊星たちはこのまま杏子を病院に連れて行くことにした。

鳴海探偵事務所でフィリップは右手にファングメモリを持って立ち尽くしていた。
「これを使って僕が変身して・・・戦えるのか?」
フィリップは自問自答を繰り返す。自分の存在のせいで父と母が街を巻き込んで争っている。だが自分が死ねば全てが解決するのか? 少なくともその結果を翔太郎は喜ばないだろう。なら自分はどうするべきなのか? 今のまま翔太郎の相棒として戦っていればいいのか?
「わからない・・・僕は、何のために戦えばいいんだ・・・・・・」
フィリップの未来は黒く閉ざされていた。ただ過去の楽しかった頃の家族の記憶が脳裏に浮かんだ。

次回予告
杏子父「ある者は誰も泣かせないために。またある者は誰かの輝きを消させないために。この街で戦っていくためには理由が必要だ。なら、自分の戦う理由はなんだ。自分のためか、他人のためか。過去の家族を取り戻すため、フィリップは白い牙を剥く。
次回、学園都市の日常・科学サイド『Fという名の牙/利己』
自分のためにだけ戦え」


鬼柳「《サティスファクションボンバー》・・・《満足 Project》・・・」
翔太郎「何悩んでんだ鬼柳?」
鬼柳「やっぱりバンド名はチームサティスファクションから変えようと思ってな」
翔太郎「何でだよ? つーかどのみちサティスファクションとか満足とか入ってんじゃねえか」
鬼柳「そうだ! 《満足インフェルニティタイム》!! こいつで『まんぞく!』するしかねえ!!」
翔太郎「俺たちじゃどうがんばってもティータイムじゃなくて塩スープタイムだぞ」
次回もお楽しみに!
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投稿ペースが通常の三倍
by luke 2012/06/24(Sun)15:34:16 Edit
グラサンで一気にスーパーに乗り込んだ翔太郎たちは確実なバカやろうw
それにしても、遊戯王カードでライダーの装甲貫くとかマジ人間技じゃあなあいやろう(笑)。ヒソカとかじゃあるまいし。
使用BGM
by Joker 2012/06/24(Sun)04:23:32 Edit
#1「鬼柳京介」 遊戯王5D's
#2「オタオタ探偵」 仮面ライダーW
#3「遊星のテーマ」 遊戯王5D's
#4「女々しくて」 ゴールデンボンバー
#5「恐怖! 精神病院」 チャージマン研!
#6「オルフェノク出現」 仮面ライダー555
#7「LORD OF THE SPEED」 仮面ライダーカブト
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