学園都市の日常・科学サイド 第12話

第12話「さらばNよ／闇とお別れ」

 

作者　Joker

｢目を覚ませ!佐天!｣

Wに変身した翔太郎は叫ぶ。

｢私は最初から正気ですよ。｣

バード･ドーパントと化した佐天の強烈なキックがWの腹部にヒットする。

｢うグッ!｣

｢しょ･･･うたろう、どうやらこのドーパント、佐天さんらしいが･･･いったいどういうことなんだい?｣

｢俺だってまだ理解できてねえよ･･･だが、今の佐天はガイアメモリの闇に飲み込まれている･･･｣

｢雑談は後にしてくださいッ!仮面ライダァー!!｣

 

バード･ドーパントは空を飛ぶことによる三次元的な動きとすばやさでWを翻弄する。

｢ぐああアアアアアああッ!｣

｢翔太郎、こういう相手にはこれだ。｣

―ルナァッ!―　―トリガー!―

トリガーメモリの力でトリガーマグナムという銃が出現する。

バキョン バキョン バキョン!

ルナの力で曲がる銃弾がバード･ドーパントに命中する。

｢くあああああああああッ･･････くっ!｣

バード･ドーパントは川に逃げ込んだ。

｢なに!鳥が水の中に逃げ込むだと!｣

｢翔太郎、勘違いしているようだが、鳥が水中に潜るのは不可能ではない･･････

鳥類は人と同様に1つの肺で呼吸するわけだが、

その他に鳥類には“気嚢（きのう）”と呼ばれる空気をためた袋が胸と腹に5～6か所ある。

この“気嚢（きのう）”を持っているために鳥類は人間では昏睡におちてしまう高度6000～7000メートルでの飛行が可能であるし、

たとえ首を絞められてもこの体内酸素ボンベのおかげで数分は生きていられる。

つまり圧倒的に人よりは長く潜っていられるんだ。｣

｢語っとる場合かーッ　水中ならドレイクの方が有利だ。変身解除するぞ。｣

Wは翔太郎の姿に戻った。そしてすぐさまドレイクグリップを握る。

―Henshin（ヘンシン）―

ドレイク･マスクドフォームは川に飛び込んだ。

｢待てぇッ!佐天!｣

バシュン バシュン!

バード･ドーパントに向けてドレイクは銃撃する。

しかし川の中は最近続いた豪雨のせいで荒れており、うまく照準が定まらない。

そうしている間にバード･ドーパントは逃げてしまった。

ドレイクは川から出た。

｢クソォォおおおおおオオオオッ!さてえええええええええええんッ!｣

ドレイクの変身を解除したずぶ濡れの翔太郎は叫んだ。

 

｢冴子、どういうことなんだ･･･子供にガイアメモリを渡すのは禁則事項のはずだ。｣

園咲の屋敷の廊下で霧彦は妻の冴子に問う。

｢･･･そんなに許せないの?｣

｢あたりまえだ!我々の目的は、人類にすばらしい進化の未来を与えることだろう?

なのにお前がやっているのは･･･人類を破滅させる行為だ･･･!｣

｢･･･いいわ。霧彦さん、ついてらっしゃい。｣

霧彦は冴子にいざなわれ、屋敷の地下に連れてこられた。

｢ここは･･･!?｣

その地下室は神殿のような不気味な場所だった。

｢君がここに来るのは･･･初めてだね。｣

｢お義父（とう）さん･･･!｣

現れたのは琉兵衛だった。

｢わたしたちはここで“地球の記憶”を手に入れ、それでガイアメモリを作っている。

しかし、ガイアメモリの力にはまだまだ未知数なところが多い。

そこで我々は実験しているのだよ。｣

｢実験･･･?｣

｢そうだ。この街にガイアメモリを流通させているのは、他でもない実験のためなんだよ。

ガイアメモリを使っている者のデータは常にここに送られてくる。｣

琉兵衛はパソコンのようなものを指して言う。

｢特に今わたしが注目しているのはこの子だ。

“佐天涙子” 霧彦君、君も知っているだろう?

彼女はガイアメモリとかなり同調している。

このまま順調にいけば、最強クラスの怪物（モンスター）になれるだろう。｣

｢ちょっと待ってください･･････じゃあこういうことですか･･･?

“あなたはガイアメモリの実験のためにまだ幼い子供を利用し、子供にはガイアメモリを売らないというのは建て前だった”･･････｣

｢それがどうかしたかね?

我々の目的は“ガイアメモリの秘密を解き明かし、究極の人類を作り出すこと”だ。

そして、強者のみが生き残る世界が完成する。弱者など必要ないのだ。｣

｢お義父（とう）さん･･･!!｣

｢霧彦君･･･今ならまだ、答え次第で家族のままでいさせてあげよう。｣

｢許さない･･･あなたは今!私の心を裏切ったッ!｣

―ナスカ!―

霧彦はナスカ･ドーパントに変身した。

｢残念だよ、霧彦君。家族が1人減るのは･･･冴子!｣

―タブー!―

冴子はタブー･ドーパントに変身した。

｢冴子･･･!｣

｢さようなら、あなた･･･｣

タブー･ドーパントはナスカ･ドーパントにエネルギー光球を発射した。

｢ぐああああああああああああああああああああああッ!･･････っくぅッ!｣

爆煙の中、ナスカの姿が消えた。

｢ほう･･･“ナスカ レベル2 高速移動”で逃げたか･･･なら、ミックに追わせるとしよう。｣

琉兵衛は飼い猫のミックを抱くと、ガイアドライバーを装着させ、メモリをさした。

―スミロドン!―

ミックはスミロドン･ドーパントに変身すると霧彦を追って出て行った。

 

｢ハア･･･ハア･･･ハア･･･｣

佐天は川から上がって街を歩いていた。

｢佐天さん!｣

佐天は急に後ろから声をかけられた。

｢初春･･･｣

声の主は初春だった。

｢どうしたんですか、佐天さん!こんなにビショビショになって･･･

それにどうして最近姿を見せてくれなかったんですか!?｣

｢初春･･･｣

｢よう、そこの髪の長いねーちゃん。

そんなに服濡らしてどうしたの?やってきたの?なら今度は俺たちと遊ぼーぜ～｣

声をかけてきたのは数人の不良グループだった。

｢･･･初春、あんたちょっと下がってなさい。この馬鹿ども私が片付けるから。｣

｢え!?｣

｢おいおいねーちゃん･･･馬鹿どもとは言ってくれるじゃんかよお･･･｣

ビシュ ビシュンッ!

佐天の手から鳥の羽のようなエネルギーが不良の顔面めがけて飛ばされた。

｢うぎゃあああああああああああああッ!｣

不良の顔に羽が何本も突き刺さり血まみれになった。

｢佐天さん･･･いったいこれは!?｣

｢メモリの力が進化して、変身していないときでも力の一部を使えるようになったみたいねえ･･･｣

｢おっ･･･おい!大丈夫か!?｣

不良の仲間たちが倒れた仲間にかけよる。

｢あんたたちも始末しなくちゃいけないわね･･･｣

―バード!―

佐天はバード･ドーパントに変身した。その姿は前よりも禍々しいものとなっていた。

｢佐天･･･さん!?｣

初春は驚愕で目の前でなにが起こっているのかわからなくなった。

バード･ドーパントは背中の翼を広げ宙に浮いた。そして不良たちめがけて強烈な火球を吐いた。

｢うわああああああああああああああああああああああああああああッ!!｣

ボジュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

不良たちがいた場所が爆発で炎に包まれる。

初春はもはや何も言えなかった。

 

｢ン!あの炎は･･･佐天!!｣

翔太郎は不良たちを処刑した直後のバード･ドーパントを発見した。

｢翔太郎さん･･･まだ邪魔をするんですか?｣

｢あたりまえだ･･･お前がやっていることは･･･罪だ。｣

｢いいじゃないですか。お互いこの街を守る者でしょう?

翔太郎さんだってガイアメモリの力で戦ってるんです。いっしょでしょう?｣

｢違う･･･!お前はただ、その力で闇雲に人を傷つけているだけだ･･･!｣

｢うるさいですねえ～、消えてくださいよ。｣

羽が翔太郎に向けて飛ばされる。

翔太郎は後方にステップを取ってそれをかわした。

｢フィリップ、変身だ･･･｣

｢オーケー、翔太郎。｣

―サイクロン!―　―ジョーカァーッ!―

｢変身!｣W｢変身･･･!｣

翔太郎は仮面ライダーWに変身した。

ジャギンッ

バード･ドーパントは両手の爪を伸ばして接近して来た。

｢うおおおおおおおおおおおおおおッ!｣

Wとバード･ドーパントの激しい接近戦が繰り広げられている。

｢佐天さん･･････｣

初春はへたれこんで放心状態でその戦いを見ていた。

｢ハアッ!｣

空中に飛び上がったバード･ドーパントの火球がWを襲う。

｢ぐあああああああああああああああああッ!｣

吹き飛ばされるW。

｢くそっ!遠距離攻撃か･･･｣

―サイクロン!―　―トリガー!―

Wはバード･ドーパントに風圧の弾丸を撃ち込む。

しかしバード･ドーパントのすばやい動きに全弾かわされてしまった。

｢くっ･･･どうすれば･･････｣

｢私が･･･手伝おう･･･探偵･･･｣

｢霧･･･彦!?｣

現れたのは血まみれで右目を押さえる霧彦だった。

｢お前･･･!?｣

｢フフフ･･･飼い猫に･･･手を噛まれたといった･･･ところかな･･･

右目をつぶされてしまったが･･･大丈夫だ。私はまだ･･･戦える。｣

｢無茶言うなッ!誰が見たって重傷だッ!早く病院に行けッ!｣

｢その子が･･･そうなってしまったのには、私にも責任がある･･･

組織にいながら･･･悪事を止められなかった･･･私にも･･･｣

｢だから今償おうってのか!?やめろッ!死ぬぞッ!!｣

―ナスカ!―

｢変･･･身･･･!｣

霧彦はナスカ･ドーパントに変身した。

そして背中のオーラの翼を広げ高速移動で空中のバード･ドーパントをつかんだ。

｢ちょっと!放して下さいよッ!!｣

｢今だ!撃てッ、仮面ライダーW!!｣

―ルナァッ!―　―トリガー!―

｢来い･･･ドレイクゼクター･･･｣

飛来したドレイクゼクターはトリガーマグナムに合体した。

―トリガー!マキシマムドライブ!―

｢｢トリガードレイクバースト!｣｣

カチッ

Wが引き金を引いたと同時に大量の光弾が超高速で発射されバード･ドーパントに命中した。

この間わずか0.00001秒以下。

｢さすがだ･･･翔太郎･･･｣

｢霧彦ぉッ!｣

｢お前は･･･彼女を受け止めてやれ･･････｣

ナスカ･ドーパントは落下しながら佐天を指差した。

｢･･･ああ。｣

Wは落下してきた佐天を受け止めた。

バードのメモリは砕け散っている。

ナスカ･ドーパントのほうも危なげながらなんとか着地した。

Wとナスカ･ドーパントはお互い変身解除した。

｢霧彦･･･｣

霧彦は立ち上がると翔太郎に何かを投げた。

パシイッ

｢!･･･これは･･･｣

｢風都くんキーホルダー･･･限定版だ。渡すと約束していただろう･･･

翔太郎･･･これからもこの風都を･･･学園都市を･･･守ってくれよ･･･｣

霧彦はよろけながらその場を去って行く。

｢･･･ああ、約束だ。必ず守りきってやる。

･･･だから死ぬなよ!霧彦ぉおおおおおおおおおおおオオオオッ!｣

翔太郎は遠くへ行ってしまった霧彦に声が届くように、必死に叫んだ。

 

霧彦は街の路地裏でしゃがみこんでいた。

｢もう･･･限界か。私の命は･･･｣

霧彦の顔は真っ青で、息も弱々しい。

霧彦は左手の薬指の結婚指輪を見つめる。

｢愛していたよ･･･冴子･･･｣

まさに息絶えようとしていた。その時、

｢あなた･･･大丈夫ですか?｣

一人の少年が霧彦のそばに寄って来た。

｢待っててください。右目もつぶれているようですね。大丈夫です。僕の能力で治します。｣

｢君は･･･いったい･･･｣

｢僕はジョルノ･ジョバーナです。大丈夫です。あなたの敵ではありません。｣

その時、霧彦の新しい物語が始まろうとしていた。

 

｢“こうして、佐天のバード･メモリによる暴走は止まった。

俺はこの事件を通して、一生忘れることのできない友を得た。

その友と俺が再び会うことができるかはわからない。

しかし、もしあいつとまた会えた時、あいつに恥ずかしくないように、必ず約束は守っていく。”｣

翔太郎はタイプライターの上に置いた風都くんキーホルダー限定版を見つめる。

｢大切なもの･･･たくされちゃったね。｣

フィリップが翔太郎に言った。

｢ああ、そうだな･･･｣

その時、勢いよく扉が開いて初春が中に入ってきた。

｢どうした!?初春･･･｣

｢たっ･･･大変なんです!佐天さんがまた行方不明に･･･!｣

｢なんだって!?｣

 

｢･･････もう一度、もう一度力が欲しい･･･

もう一度･･･新しい力が･･････｣

佐天は人知れずどこかでパソコンをやっていた。

｢･････････あった。｣

―You Got LEVEL UPPER.　Come on NEXT LEVEL.―

｢幻想御手（レベルアッパー）･･････｣

 

TO BE CONTINUED