学園都市の日常・科学サイド 第14話

第14話｢木山先生｣

 

作者　Joker

承太郎は御坂を連れて自分の車に乗り込んだ。

億泰によると、院長に呼ばれて診察室に入ったとたん、院長の木山春生が黒子を捕まえ、

―｢君たちか・・・私の復讐を邪魔するのは・・・｣―

と言って黒子と一緒に2階の窓から飛び降りて逃走したらしい。

｢奴はそのあと車に乗り込んだんだ!青のランボルギーニ・ガヤルドだったぜ!｣

｢そうか・・・億泰、お前はここ（病院）に残れ。仗助に万が一のことがあるかもしれない。

奴は俺と御坂が追う。｣

そして承太郎と御坂は木山と黒子の乗る車を全速力で追っていた。

承太郎は先ほどからつながったままの携帯電話を耳に当てる。

｢翔太郎、奴は風都方面の高速道路に乗ろうとしている。｣

｢わかりました。俺も今から追います。｣

翔太郎は電話を切った。

｢初春、お前はここで待ってろ。｣

｢翔太郎さん・・・｣

初春が不安げな眼差しで翔太郎を見つめてくる。

｢大丈夫だ。佐天を目覚めさせる方法は必ず聞いてくる。｣

翔太郎はハードボイルダーにまたがると全速力で高速道路に向かった。

 

木山の車の中。

黒子は木山によって睡眠薬を飲まされ眠っている。

｢・・・やはり追ってきたか。｣

木山はサイドミラーを見てつぶやく。

｢これでいい。これで邪魔者は自らの意思で集まってくれる。

まさに“飛んで火に入る夏の虫”といったところか・・・｣

木山は速度を上げる。

そして高速道路に入った。

承太郎の車もあとを追う。

高速道路は平日のためか比較的すいていた。

2台の車によるデッドヒート。追う者と追われる者。邪魔する者はだれもいない。

しかしそこへ1台のバイクが中央分離帯を越えて木山の車の前に飛び出してきた。

翔太郎のハードボイルダーだ。

ハードボイルダーは横に滑りつつブレーキをかける。

木山もそれを見てブレーキをかける。

承太郎もブレーキをかけ、御坂とともに車を降りる。

ちょうど、木山を挟み討つ形になった。

木山が車から降りてきた。

木山は茶髪の長い髪の毛、目の下の濃いクマが特徴的な女だった。

｢・・・君たちが欲しがっている、幻想御手（レベルアッパー）使用者を目覚めさせる方法、

アンチ幻想御手（レベルアッパー）プログラムは、病院の私のパソコンの中にある・・・｣

｢何故それを言う?お前にとって、それを言うことは不利になるはずだ。

そもそもそれは本当なのか?｣

翔太郎が疑問を口にする。

｢ああ、本当だ。ファイル画面を開いたまま置いてある。なんなら仲間に連絡を取ってみろ。｣

承太郎は億泰に電話をかける。

どうやら本当のことらしい。

｢それから、私がお前たちにこのことを伝えた理由を教えてやろう。

もう用がないからだ。幻想御手（レベルアッパー）使用者たちに。｣

｢なに!?｣

｢奴らから発生したAIM拡散力場のネットワーク・・・そこからの情報の採取はすでに終了した。｣

木山は胸ポケットから何かを取り出す。

それは2本のガイアメモリとWドライバーによく似たベルトだった。

｢何故・・・お前がそんなものを・・・｣

翔太郎は動揺する。

｢1つは君が持っているのと同じジョーカーのメモリ。

これはかつて私が所属していた組織から奪ってきたものだ。

そしてもう1つが幻想御手（レベルアッパー）の産物、エスパーメモリだ。

これは私が自作した。

このメモリには幻想御手（レベルアッパー）使用者たち全員の超能力の記憶がつまっている。｣

｢それがお前の・・・幻想御手（レベルアッパー）の目的か・・・!｣

｢確かに、幻想御手（レベルアッパー）の目的はこれだ。

しかし、私の目的は他にある・・・復讐だ。｣

木山はベルトを装着する。

｢これはM（マスター）ドライバー。私がかつて所属していた組織から盗んだ技術で作ったものだ。｣

―エスパー!―　―ジョーカァーッ!―

｢変身・・・!｣

木山はメモリを差し込み、M（マスター）ドライバーをM字に閉じた。

木山から禍々しいオーラが放たれ、木山の右目が充血する。

｢くそッ!承太郎さん、御坂、もう戦うしかねぇ・・・｣

｢いや、もう最初から戦うしかなかった・・・｣

｢仕方ないわ。とっとと倒しちゃいましょう。｣

―ジョーカァーッ!―

｢行くぜ、フィリップ・・・変身!｣

―サイクロン!―　―ジョーカァーッ!―

翔太郎は仮面ライダーWに変身した。

ドキューーーーーン

承太郎はスタープラチナを出す。

ビリビリビリッ バリバリバリッ

御坂は全身から電気を発する。

｢さあ･･･おまえの罪を数えろ!｣

｢さあ･･･てめーの罪を数えろ!｣

｢さあ･･･あんたの罪を数えなさい!｣

3人が口々に言い、木山に向かって走り出した。

 

『気をつけろ翔太郎。奴は見た目こそ変化していないが、エネルギーを効率よく内側に溜めている。

しかもジョーカーメモリで身体能力を向上させている。防御能力もドーパント並みだ。』

｢それを聞いて安心したぜ、フィリップ!これで遠慮なく攻撃を打ち込める!｣

Wは左の拳で木山に殴りかかる。

が、木山はこれをテレポートでかわし、さらに御坂をつかんでWのパンチの延長上にテレポートさせた。

｢ップふぅッ･･･｣

｢御坂ぁッ!｣

Wの拳が御坂に命中した。

｢幻想御手（レベルアッパー）使用者347人のうち･･･レベル4は184人、レベル5は163人･･･

そのうち、空間移動能力者（テレポーター）はレベル4が6人、レベル5が13人･･･

極めるには十分な数だ。｣

｢･･･くッ、ごたごた言ってんじゃあないわよッ!｣

ビシュゥーーーーーーーーーーーーームッ

御坂はレールガンを発射した。

しかしその時、

｢時間停止（タイムストップ）･･･｣

木山が時間を停止させた。

｢使用者の中には時間停止能力者（タイムストッパー）もいた･･･

さて･･･この中で動けるのは、君だけか･･･｣

｢スタープラチナ･ザ･ワールド･･･｣

静止した時の中で承太郎が動き出した。

｢オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!｣

木山に急接近してラッシュを叩き込む承太郎。

しかし木山は再びテレポートして、今度はWを盾にした。

静止した時の中でスタープラチナのラッシュを何発かくらってしまったW。

｢なにぃッ!｣

｢私が一度に使える能力は1つだけではない。

いくつもの能力を複合して使うことが出来る。まさに多重能力者（マルチスキル）だ。｣

そして木山は指先から空丸（エアーガン）を何発か承太郎に向けて撃った。

｢聞くところによると･･･君が時間を止めていられるのはたったの2秒ほどらしいな。

ちなみに私は11秒だ。｣

承太郎の時が動き出した。

『｢がはッああああああああああああああああッ!｣』

｢うごあああああああああああああああああッ!｣

オラオラのラッシュによって吹っ飛ぶWと、空丸（エアーガン）をくらって吹っ飛ぶ承太郎。

倒れこむ3人。

まさに絶体絶命。

だが、

｢おかしい･･･何故奴は止めをさしてこない。｣

｢｢え･･･?｣｣

｢奴は時を11秒止められると言っていた。なら、俺や翔太郎が吹っ飛ぶ前の段階、そこで止めをさしにきていたはずだ･･･｣

承太郎は木山の姿を探す。

木山は10メートルほど先にいた。

そして木山は戦っていた。

赤く、大きなカブトムシのような角を持つ、謎の仮面ライダーと。

｢くぅッ･･･｣

木山は血を流している。

おそらくあの仮面ライダーに負わされた傷だろう。

―Maximum Rider Power（マキシマムライダーパワー）―

｢ハイパーキック･･･｣

―Rider Kick（ライダーキック）―

謎のライダーは木山に強力な飛び蹴りをくらわせた。

｢あぁぁぁああああああああああああアアアアアッ!｣

木山が吹っ飛ぶ。

｢あとはお前たちに任せる･･･｣

謎のライダーは姿を消した。

｢なんだったの･･･あいつは?｣

｢わからない･･･だが、どっかで聞いたことがある声だったような･･･｣

翔太郎は少し考え込んだが、

｢ま、こっちを解決するのが先か。｣

3人はボロボロの木山の方を向く。

｢木山!いい加減あきらめてメモリを捨てろッ!｣

｢フフフ･･･ここで、はいそうですねと･･･あきらめられるか･･･｣

木山は高速道路に手をつく。

｢この･･･高速道路全体を･･･量子変速（シンクロトロン）で爆破してやる･･･｣

｢そんなことはさせるかよォッ!｣

―ヒート!―　―メタルゥッ!―

Wはメタルシャフト（鉄棒）を持ってかけ出した。

｢阻止はさせんッ!｣

木山の周りにブルーアンド･ホワイト･ドラゴンが5体ほど現れた。

｢なッ･･･!｣

｢くらえッ!エヴォリューション・レザルト・バーストエクストリームッ!グォレンダァッ!!｣

滅びの爆裂疾風弾（バーストエクストリーム）が5発一斉に発射される。

｢御坂ッ!｣

｢―――ッ!いいんですか!?承太郎さん･･･わかりました!｣

｢いくぜ御坂ッ!オラァッ!!｣

承太郎が自分の車をスタープラチナで打ち上げる。

そして御坂はそれをレールガンで木山に打ち込んだ。

ドッシュゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

｢うわああああああああああああああああああああああああッ!!｣

エヴォリューション・レザルト・バーストエクストリームを打ち消し、

ブルーアンド・ホワイト・ドラゴンを全滅させ、

レールガンは木山に命中した。

『今だ翔太郎!メモリブレイクだッ!』

―メタルゥッ!　マキシマムドライブッ!―

『｢メタルブランディングッ!!｣』

ドッグォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

木山のM（マスター）ドライバーからエスパーとジョーカーのメモリが排出され、粉々に砕けた。

承太郎と御坂は木山の車に向かい、黒子を救出した。

翔太郎は変身を解除し、満身創痍で倒れている木山に向かって問いかけた。

｢なあ、あんたが言ってた復讐って・・・結局なんだったんだ?それが知りてぇ・・・｣

｢フフフ・・・知りたいか?いいだろう。教えてやる。お前たちが追っているガイアメモリの組織とも関係あるからなぁ・・・

あれは3年前のことだった・・・

その時、私は研究の傍ら小学校の教師をしていた。

孤児の子供たちが通う小学校だった。

みんな人懐っこくて・・・いい子たちばかりだった・・・だがある日、

私が勤めていた研究所の所長が、私の教え子たちを超能力の研究に使わせて欲しいと言ってきた。

私の教え子たちは幼いながらもレベルの高い超能力者が多かった。

だから私は疑いもしなかった。普通の超能力実験をするんだと思っていた。

だが･･･それは違った･･･!

所長がやった実験は、超能力をガイアメモリに移しかえる実験だったんだッ!

実験は成功し、超能力をガイアメモリに移すことができたと所長は喜んでいた。

だが、かわりに私の教え子たちは死んだ。

所長は、“実験自体は成功した。あとはモルモットがどうなろうが関係ない。”と言っていた。

奇遇にも、その日は私の誕生日だった。

所長のその言葉を聞いたあと、学校の教室に戻った私は見た。

パーティー用に飾り付けされた教室を･･･

黒板には“木山先生　誕生日おめでとう”の文字･･･

生徒たちは実験から帰ったら私の誕生日を祝うつもりでいたのだッ!

だが、生徒たちはこの教室に帰ることができなかった･･･

私が勤めていた研究所はガイアメモリ流通組織の下請けだった。

私は復讐を誓った。

私の教え子たちの命を奪った組織を根こそぎ滅ぼしてやると･･･｣

｢だからって･･･こんな方法で･･･｣

｢ふふふ･･･力を持ったものを滅ぼせるのは、それ以上の力を持ったもののみだ。

他人にどうののしられようが知ったことか。私にはこれしかなかった。

そして、私の復讐は君たちによって阻止された･･･｣

｢木山･･･｣

｢君たちが奴らを滅ぼしてくれることを願おう･･･

どうやら･･･私も奴らの手の上で踊らされていた･･･モルモットらしいからな･･･｣

｢―――?どういうことだ･･･｣

その時、木山のM（マスター）ドライバーから強烈な光が発せられた。

｢―――ッ!なんなんだ!?いったい･･･｣

｢翔太郎ッ!これは･･･!?｣

｢わからねぇ･･･いったい何が起こるんだ･･･!?｣

｢―――――ッ!!見てッ!2人ともッ!!｣

M（マスター）ドライバーから毒々しい瘴気を発する肉の塊のようなものが出てきて木山の身体を包んでいく。

｢木山ァーーーーーーッ!!｣

｢近づくな翔太郎ッ　直感だがこれはやばいッ!｣

やがて肉の塊は木山を吸収して、3メートルほどの胎児のような姿をした怪物になった。

｢キュルォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!｣

怪物は産声を上げる。

｢なんだよ･･･これ･･･｣

3人とも絶句する。

｢ピッシャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!｣

怪物が3人を捕食しようと触手を伸ばしてきた。

その時、

ドッグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

突然銀色の拳が空から降ってきて、怪物をつぶした。

3人は何が起こったのかわからず、空を見上げた。

そこには金色の月を背にして銀色の巨人が立っていた。

｢ウルトラマン･･･｣

翔太郎は口にする。

翔太郎はこの巨人を前にも見たことがあった。

10年前の学園都市、新宿地区で･･･

 

TO BE CONTINUED